自分の欲求と相手の欲求の調整
人間はつい独りよがりになりがちです。
これはむしろ生物・人として見てみると当たり前のことで、自分のことをまずは考えないと、昔ならば命を落としてしまうこともあったでしょう。
肉体をもって生命を維持するためには、独りよがりともとれる意志と行動を取らないと、かつては危険でもあったのです。
ですが、自分を守るためには、周囲との協力関係も必要であり、たとえば一人で狩りをするよりも、何人かと共同で策を練ってしたほうが獲物を捕る確率は高まります。すなわち、それは食料の確保につながり、自分の生命の維持に役立ちます。
こうやって考えますと、人が自分中心であること、そして人と協力関係にあることも、原始的には生きるための本能的なものとして備わっていたと言えます。
それが現代でもやはり人間には残っているのでしょう。ゆえに今も人は自分中心に、「ああしてほしい」「こうしてほしい」と自らの願望・欲求の期待をし、人がそれをしてくれる(満たしてくれる・叶えてくれる)ことを求めます。
ところが、相手も人ですから自分中心なところがあります。よって、結果的には「ああしてくれない」「こうしてくれない」という状況が一人の人間から見た場合には生じがちになるのです。
一人の人間の欲求は、その相手の人間の欲求と一致しているとは限らないため、逆の相手から見れば、向こうの欲求は自分の欲求を満たしてくれるものではないので、当然ながらほとんど相手の欲求通りには行動しないことになります。
ということは、基本、自分の人に対しての欲求や願望が、ストレートにあるいはスムースに思った通りに叶うことはほとんどないと思ったほうがいいのです。
でも実際には叶うこともあります。それはどんな場合だったかを思い起こしてみるとよいでしょう。
たいていそういう時は、相手との信頼関係や愛情関係があるはずです。つまり平たくいえば、相手のことを思い遣っている、気遣っている、気にしているという状態です。
それは焦点を通常状態の「自分中心」からずらして、「自分と相手」、あるいは「相手中心」にさえなっている様相です。
グラフで表現すれば、自分と相手を両極に置き、その間を白と黒のグラデーションで色をつけていけばわかりやすいかもしれません。ということは、「自分7・相手3」とか、「相手10・自分0」とかという思い方もあるということです。
相手に焦点がシフトするのは、相手への感情の入り方や利害関係(結局それは自分中心に戻りますが)によってのことが多く、一時的にせよ、自分=相手という心理になります。恋愛関係の二人などは典型的といえるでしょう。
これはつきつめれば利己的な自分中心なものとも考えられますが(相手のことを思いつつも、自分のためがその基礎にある)、ともかくも自分だけのことから相手という人間の立場・心理を思い遣ることができます。
実はこの瞬間(相手を思い遣る瞬間)こそ、マルセイユタロットでいえば「恋人」カードのキューピッドと関係する非常に重要な「時」なのです。
話は戻りますが、自分の欲求を相手に通したい場合は、自分の欲求が相手の欲求にも叶うようにすることが重要になってきます。まったく一致することは難しいのですが、これがあまりピントはずれではなく、うまく双方をすりあわせられるような欲求の通し方がよいわけです。
たとえば、自分が旅行に行きたいと思っていて、相手は何かおいしいものを食べたいと思っていたら、「旅先でおいしいものが食べられるよ」と名物や旅行先の店・ホテルのレストランなどのグルメ写真を見せて、旅の提案をすればいいのです。
ただ、相手との信頼関係や愛情関係が濃密な場合は、「自分の欲求=相手が喜んでくれること」になっていますので、相手の欲求が満たされることは何でもよいとなります。
ここで注意しなくてはならないのは、特に恋愛関係などでは、「自分=相手」への思い方が一時的な幻想状態であることがあり、「相手に気に入ってもらいたい」「恋を失いたくない」という思いなどから、過剰に相手の欲求を受け入れようとしていることがあります。つまり自分の本当の欲求を抑え込み、相手の欲求の奴隷になっている状況です。
それでもその状態を分析すれば、結局は「自分が相手とつながっていたい」という「欲求」の現れなので、自分の欲求に忠実になっているとは言えますが、欲求というものは実は「なになにしてほしい」という追加型だけではなく、停止・削除型である「しくたない」「やりたくない」というマイナスの欲求もあるので、相手の欲求の奴隷になっていては、これらの自分の欲求を無視することになりがちです。
そうなると、とても自分を苦しめることになります。
自分の様々な欲求と相手のこれまた様々な欲求とをうまくコントロールして、自分と相手の欲求の叶えあいが五分五分でできれば、結構バランスのとれた叶え愛(笑)になっていくでしょう。
このことはマルセイユタロットカードの「月」にも関係することなのです。
最後に大きな秘密を言いますが、文中で自分と相手との関係をグラフ表現しましたが、これの両端をつなげて「円」にしてしまうと、いろいろと面白いことに気がつくことでしょう。
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