ウロボロスの蛇による両極観点

ウロボロスの蛇」というものがあります。

これはマルセイユタロットにおいても、よく登場する象徴で、尾っぽをかんだ蛇の姿で一般的に表現されます。(マルセイユタロットでは直接的にはそのようには描かれておらず、言われないとわからない工夫がされています)

この象徴は実に示唆に富むもので、まさに宇宙のあり方や認識を私たちに教えてくれます。

ただ、「尾っぽをかんだ蛇」という奇妙な形が、深遠なる意味を表すということはなかなかわかりづらいと思います。

図だけ見ると、自分の尾をかんでしまうバカな(笑)動物だと笑ってしまう人もいるかもしれません。「ウロボロスの蛇」の本当の意味ではありませんが、皮肉としてそう見ることもあります。

すなわち、自分が頑張って(良かれと思って)やっていることが、実は自分に負担をかけてしまっているという図式です。これは滑稽です。

とはいえ、それははこの図のうがった見方で、本来はミクロとマクロが呼応する関係、また永遠や循環性を象徴するものです。

限りない極小の世界は宇宙的な極大の世界とつながっており、どちらに進んでも結局は同じものであるという徴(しるし)でもあります。

さて、以前ブログで「昇天と堕天」
ということで、上へ向上し解放する気持ちの良さと、堕落のように下へ下がっていく快楽の共通するテーマについてふれました。

「ウロボロスの蛇」がこの世界や宇宙の一種の構造モデルだとすると、この図形から、私たちは向上しているようで下降し、反対に下降してるようで向上しているのかもしれないことがわかります。

円という図形でとらえると、この円周上の任意のポイントというのは、そのまま円周の一地点でしかなく、位置的には上も下もないことになります。(ただし円自体が回転すれば別です)

「円卓」には順列がなく、上座下座という概念が発生しにくいので、平等に集うのに向いていると言われています。(アーサー王の伝説とも関係します)

私たちは円環を縦にして上下思考で観察するから、輪であっても上と下という概念や感覚が発生します。

しかし円を横にしてみれば、ただの地点・ポイントの違いにすぎず、さらに言えば同じ円周上にあることで、俯瞰すればすべて同質だということもできます。

またたとえ「輪」を縦にしたとしても、ずっと回転している限り、下のものは上になり、上ものは下になって、それらは循環して永遠に位置は固定されません。

ということは、堕落の道に見えてもそれはいつかは上昇(向上)に転じ、上に上ろうとしていても、結局いつの間にか、下降(堕落)していることにもなるかもしれないのです。早く上昇しようとすればするほど自分で円の回転を速めることにもなり、下降のリスクも増加します。(同じ輪の中にいる場合)

それでは向上することに意味がないのではないかと思うかもしれません。

また、それならば快楽と堕落を求めたほうが苦しくはないので、むしろそちらを選んだほうがよいのではないかという悪魔的な考えにも至ります。

この回答は難しいのですが、ひとつにはマルセイユタロットの「運命の輪」の象徴が示唆を与えてくれます。

「運命の輪」を見ると、輪から抜け出たスフィンクスの存在があり、同じ円の中で回っている限りは、上昇も下降もなく、そのように錯覚しているだけだとなります。

つまり、幻想(幻想の輪)の中では真の覚醒はないと言ってももいいのです。

良識ある行動も、悪意ある行動も、はたまた向上の道も堕落の道も、同じ円(レベルの中)にいる限りは、実は同質の両極的違いにいるだけで、さほど意味を持たないと極論することもできます。(気がつかなければ、囚われているのと同じ)

もうひとつの回答の示唆は、やはり「ウロボロスの蛇」の象徴です。

幸運・不運、順調・不振、大局・小局、個人と世界など、一見まったく違う状態や範囲に見えても、そしてどんな局面においても、そこにはすべて同じ原理が働いているという共通点・共通ルール・法則を見つけ出すことが重要だと考えられます。

尾っぽは最終的に頭になり、またその逆に、頭は尾っぽとつながっているのです。頭と尾では、見た目や大きさが明らかに違うものですが、一匹の同じ蛇の体であり、ただ見た目の表現や役割の違いでしかないととらえられるわけです。

すると、地獄にも仏がおり、救い(悟り)の要素はどこにでも遍在していると見ることが可能になってきます。

極めて堕落的な生活・欲望に準じた生き方をしてても、何かの瞬間や境目で真の向上へ導かれることもあると想像できます。

ただ尾から頭、頭から尾に至るには、正反対のもののつながりであるだけに、どこまで進んでも、一見なかなか目指す目標にたどり着かないような恐怖感・焦燥感にも駆られると想像できます。

それ相当の覚悟と極め方がどちらの方向(頭の方向・尻尾の方向)においても必要だろうと、「ウロボロスの蛇」を見ていて思います。

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