「吊るし」の別観点

マルセイユタロットの中に「吊るし」というカードがあります。

一般的タロット名では、「吊され人」とか「吊された男」と呼称されているカードです。

その一般名のために、意味としては「犠牲」であったり、「苦しい状態」であったりすることを象徴しているように見えがちですが、マルセイユタロットの「吊るし」の絵柄は、それほどではないように感じられます。

むしろその状況を楽しんでいるかのようにさえ、見ることができます。

このように、タロットは絵柄やカードの名前から受ける印象でまったく変わってきます。

タロットカードを選ぶ時、図像の違いは決定的な印象の違いをもたらせ、それが自分の好みやその他のこととあいまって、自分にとってなじみのタロット(活用できるタロット)になるか、そうでないかの線が引かれると言ってもよいでしょう。

それはさておき、「吊るし」です。

マルセイユタロットの「吊るし」は、受動的ではあっても、能動的な部分を持ちます。それは自らこの逆さまスタイルを取っていると解釈することで出てくるものです。

逆さまというのは、通常とは正反対の立ち位置であり、つまりは逆の観点別視点です。

このことは重要な示唆を私たちに与えてくれます。

そして、単に別の観点を持つというだけではなく、「吊るし」から想起されるのは、今まで信じてきたこと、感じ思ってきたこと、経験したこと(または現在進行形で続いていること)を別の角度から検証してみるということが伝わってきます。

これはネガティブに思っていたことをポジティブに見てみるとか、その逆の、ポジティブだと思っていたけれどネガティブもあったというケースも意味しますが、さらに一歩進んで、同じ要素をさらに別の視点で見るということも考えられます。

上記で言えば、ネガはネガとしても別のネガだったり、ポジはポジでもほかのポジも見てみるというようなイメージです。

たとえば、サーフィンが好きな人がいたとします。

彼はサーフィン、波乗りのスポーツとしての感覚、ライド感がとても心地よく、波にチャレンジしていくその高揚感と乗れた時の達成感がたまらないとして、サーフィンが好きだと思っています。

ここでサーフィンがなぜ好きなのかの別の観点をもってきますと、意外にも彼は、サーフィンをする仲間との時間や語らい、自分を素直に表現できる場所があることで、サーフィンが好きであることがわかったというような具合です。

つまり、サーフィン自体よりも、別の要素が好きの割合を占めていたわけです。

もちろん、だからと言って趣味の対象が何でもよかったわけではないでしょう。サーフィンというスポーツだったからこそ、彼はそれを好きになれたということは前述の彼の思いの通り、あるわけです。

けれどもその前に、彼は仲間との自己表現を求めていて、サーフィン自体の楽しみはあとから付け加えられたものだったということも言えます。いわば、「楽しみ」をいろいろな別視点で見ることができるのです。

ほかにも、パン好きな人が、単にパンを食べる楽しみだけではなく、パン屋さんを巡るその小さな旅の楽しみもあったというものでもいいでしょう。

反対に嫌なことでたとえてみると、仕事が嫌と思っていたけれど、さらに分析してみると、給料が安いというのも嫌だったし、そもそも上司が嫌なので、さらに仕事が嫌いになっている・・ということがわかって、実は仕事よりも職場が嫌いであったということがわかる場合があります。

これは実際に結構多くあります。仕事が嫌いではなく、実はほかの部分(人間関係・時間・給料・報酬・社風・仕事の進め方・・・)などが嫌いな要素であり、仕事や働くこと自体が嫌いなわけではないと自己の誇りを取り戻すきっかけになることもあります。

ということは、別に仕事を辞める必要なく、その要素が改善されたり、自分から働きかけたりすることで解決することもあるわけです。

また、自分に合った環境と内容が提供されれば能力が発揮でき、自分がダメ人間ではなかったことが証明されます。(ただし基本的能力の未熟性の時は、やはりどんな環境であっても鍛える必要はあります)

以上のことから「吊るし」で示される重要な示唆は、同じ状況や状態の中でも、別の角度・視点から見たり分析したりすることで、解決策や楽になる方法が見つかることは多いものだということです。

苦しいどころか、実はとても解放(のきっかけ)を与えてくれるカードが「吊るし」なのです。

「吊るし」が現れる時はその状況が必要だから登場します。(状況を受け入れ、肯定するか、反対に問題視しなければならない部分があること)

「吊るし」の人物が後ろ手にしているものが、まさに鍵となる別の要素を示しています。

そして、「そのことにあなたは気付きますか?」と微笑みながら、「吊るし」の彼は今日も問いかけているのです。

(※何でもそうですが、タロットの解釈はひとつの事例であり、唯一絶対ではないことに注意してください)

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