マルセイユタロットが示す「悟り」
マルセイユタロットには、いわゆる「悟り」の道が描かれているのですが、これが最大にしてもっともシンプルなマルセイユタロットの秘密です。
なんだそんな簡単なことが秘密だったの?と思うかしもれませんが、いいですか、「悟り」ですよ、「悟り」
「悟りの道」を示唆しているものなんて、そうそう世の中にはありません。
ほかにあるとすれば、多くの人は仏教などの経典をイメージされるかもしれませんよね。あるいは高次に啓示を受けた人物が書いたものとか。
それが、絵のついたカードごとき(一般の人が思う感覚ではこうでしょう)に象徴されているのです。考えてみれば不思議なことです。
とはいえ、現実的には「悟り」なんて言うと、宗教ぽいですし、あまりにも大きなテーマで、「そんなこと無理無理」「考えるだけ無駄」「そんなこと思っても、現実的に生活が楽になるわけではない」と思うのが本音でしょう。
そう、実はあまりにもテーマが壮大すぎると、人は自分のことと感じることができません。
精神世界が宗教ぽくなってしまうのも、「精神」なので物質や現実とのリンクが希薄なことと同時に、このように扱うテーマがあまりに広大なので、とらえがたい、現実感がないというのが理由でしょう。
特に人が実際に悩んだり、苦しんだりすることは、例えば「目の前の好きな人の気持ちがどうなのか?」とか、「お金が足りない、何とかしなくては・・」とか、「毎日の仕事がつらい、つまらない・・」とか、狭く個人的なテーマであることが多く、いちいち宇宙とか愛とか感じている暇はないんだよ、という方が実際ではと思います。
しかし、実は壮大なテーマと個人的で卑近な問題・課題はつながっているのです。というより、つなげけていくと、気持ちが楽になったり、現実的な生活や悩みが縮小したり、解消したりしていきます。
ただ、個別テーマと大きな全体テーマの関係性が切り離されていると、どちらか一方だけをしきりに向き合おうとして、それは一時的な問題解決にはなりますが、またぞろ、似たような身近な問題や課題としてテーマが浮上してきます。
宇宙は大きなことを気付かせるために、身近で個別なあなた自身のことや、あなたの周囲で起こる小さな事で表現させる(わからせる)のです。
マルセイユタロットの場合、この個別と全体という関係性をうまくつなげてくれるツールとして活用することができます。
いわばそれは、「悟り」というようなでっかいことを想定しながら、毎日の生活の中で「悟り」につながる小さな事ことを発見していく作業とも言えます。
両者の関係性に意味を見い出せていない時は、それは無駄な作業であり、ちっとも楽しくありません。
ところが、タロットを使えば、カード一枚一枚に大きなテーマと小さなテーマが同時に含まれ、気づきが待っていることが見えてきます。
簡単に言えば、私たちが「気づき」や「発見」「理解」「腑に落ちる」「わかった!」「そうだったのか」という言葉で呼ぶその現象こそ、実は「悟り」なのです。
と、私はタロットを見ながら思うのです。(大きな悟りに至っているわけではないので、大それたことは言えませんが)
小さな「悟り」があることは、大きな「悟り」があるからという前提にもなります。
小さな悟りを積み重ねると、真の悟りになるという考えではなく、もともと悟っている存在で完全であることを、小さな悟りを蓄積して(刺激にして)思い出すという方向性の逆で見るのです。すると、大きな「悟り」が自分のどこかにすでに存在していることを想定できるようになります。
すでに自分は悟っている存在ながら、現実生活の中であえてハンディをつけ、悟りゲームを楽しんでいるようなものと考えればよいでしょう。
マルセイユタロットは大アルカナと小アルカナのデザインが明確に区別されているのが特徴です。
私も当初はよくわからないところもあったのですが、これは明らかに意図してそうされていることが次第に確信をもって理解できてきました。
占い的にタロットを使っていてはなかなかわからないことであり、そのため、占い師の使うタロットは大も小もほぼ同じデザインであったり、同じような絵柄であったりするカードが使われるわけです。その方が「占い」としては使いやすいでしょう。
しかしマルセイユタロットはふたつ(大アルカナと小アルカナ)を区別する必要があったのです。
それが、先述した大きなテーマと小さな身近なテーマとの区別であり、そしてタロットがセット(デッキ)としてひと組78枚(大アルカナ22枚・小アルカナ56枚)であるように、大と小のアルカナが合わされることで、大テーマと小テーマの統合が図られる仕組みになっているのです。
しかも、大アルカナにもそれぞれ小さなテーマが含まれており、どのカードもたった一枚だけで完全性が象徴されています。それゆえ、一枚一枚を具体的なテーマや課題にも象徴させることができ、抽象的ながら具体的な事柄に対処することが可能になってくるのです。
今さらながら、マルセイユタロットのおそるべきとも言える、その計算しつくされた構成と構造に、驚きを覚えます。
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