人の重み、時間と体験
年を経れば誰でも経験を積み、知恵が付くと思われがちですが、決してそうではないことも、実際の世の中を見るとわかります。
反対に頑固になって、昔の考え方・見方にこだわってしまい、判断を誤ったり、鈍ってしまったりするケースもあります。
結局、時間という視点で見た場合にのみ、年齢による経験値や知恵が上がる(増える)ということになり、時間の概念をはずせば、まったく関係なくなるということになります。
以前の記事で、「継続による時間と空間の(増大による)効果」を書きましたが、今日は反対に、時間(の積み重ね)にとらわれないことの良さも述べたいと思います。
先述したように、年を取っても、悪い意味で、あまり重みのない人がいます。
昔の年功序列ではありませんが、以前は役所や会社などでも、ただ年が上、入社したのが古いというだけで、能力的に疑問があっても上司になったり、重要なポジションに着いていたりする人がいました。
こうした場合、当然、いろいろとその部署はおろか、組織全体にも悪影響を及ぼすことになります。特に直属の部下になった人には、たまったものではないでしょう。
このような、年齢だけで、中身がないように感じられてしまう人になったのは、どうしてでしょうか?
それは、毎日を軽く過ごしていたからだと言えます。もっと言えば、強烈で重要な経験がほとんどなかったのです。
以前の記事のように、たとえすごい経験がなくても、毎日コツコツと何かを積み重ねていれば、それだけ体積のような容量は増加しますので、何らかの重みは出たでしょう。
しかし、そうした継続もなく、惰性でただ生きてきてしまうと、やはり重みというものが出ません。
ということで継続ができない場合、言い換えれば時間の積み重ねの効果を期待しない(できない)場合、瞬間・瞬間の強力な加重体験が必要となるのです。
言わば、経験の時間の長さではなく、質を高めるということです。
仕事でも恋愛でも、たとえとても短い時間であっても、強烈な体験をした、濃密な時を過ごしたというものがあれば、それは強く自分の印象に残り、まさに「経験」として息づきます。
忘れたくても忘れられないほどのものは、強い圧力によって心に焼き付けられ、刻印されているものと言えるでしょう。
そうすると、安全な日々、オートマチックに進む毎日、楽に生きる道ばかり選んでいると、圧力のかかる体験がなかなか得られず、生きた経験(強い記憶・データ)もない、軽いままの自分になるおそれがあるわけです。
体験する時間の長さよりも質が重要となりますと、それは時間にこだわらないということです。それは通常(普通に流れる時間・継続する日常)とは異なるはイレギュラー感覚を体験することでもあります。
先行きに不安やおそれを抱いて、石橋を叩くかのように生きていこうとすると、どうしても時間(の長さ・期間)を意識してしまいます。
逆に起きてしまったことに囚われ過ぎても、過去という方向に自分を向け続けますので、それだけ「長さ」を意識してしまうことになります。
時間の質を高めるとなれば、今、現在に意識を集中させる体験が重要となります。いい意味で後先を考えずに飛び込み、濃密に体験を味わう感覚です。
タロットの思想に流れている四大元素(風・水・火・地)というエレメント・エネルギーでいえば、「火」が重要となります。
自分が燃焼する体験をすると、心や感情としての「水」が沸騰し、それが気化して、「風」となり、知識として普遍化のうえ、応用が利くようになります。
また燃焼によって刻印された型(経験)は、実績として残り、のちに形(現実)として実りをもたらせます。これが「地」とも言えましょう。
時間を忘れるほどの体験は、逆に言えば、意識的に本当に時間がなくなっている体験であるといえ、それは時間による蓄積という概念を超えたものなのです。
言い換えれば、一瞬に間に、数年、数十年の体験に比例するものを得ていると表現することもできます。
寝食を忘れて打ち込む体験、ものすごくインパクトのある体験、とてもつらく苦しい体験、涙が出て感極まる体験、感動の渦中に飲まれるような体験・・・これら濃密で大変な体験は時間は超越し、大きな圧力をもってあなたの心に刻まれます。
そうは言っても、何もつらいことによって質の高い(圧力の高い)経験をする必要はありません。
要するに、心が動き、時間がなくなるくらいの体験をすればよいのです。
ただ面白いことに、そうした経験は喜びであっても、不思議と苦しい体験と隣り合わせやセットによって得られることが多いのも、また人生です。
その苦しさが自分の魂まで苦しめるものでは問題で、あくまで感動体験のための反転部分(喜びの過程、感動の糧のための苦しみ)のようなものだとよいわけです。
時間に囚われない強い体験は、時間には関係ないのですから、年齢も関係なくなります。
若い人はもちろんのこと、年を取っている方でも、今この瞬間に味わうことはできるのです。
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