カードの第一印象から脱却・超越する

マルセイユタロットの大アルカナを見ていますと、特に女性的なカード中で、とても優しく、慈愛に満ちたカードがあります。

それはたいてい、天使的・女神的な絵柄であり、また象徴的に「」に関係するものが描かれています。

水は流れるものであり、形があればそれに沿い、器に注がれれば満ちていき、やがてはあふれ出ます。

このことから、満ち足りること、浄化すること、流れに任せていくことなどが浮かびます。

もちろん、そのような「水」でも、多すぎて溺れたり、つかみどころがなかったりと、マイナス面もあります。

とはいえ、全体的には、「水」に関係する絵柄のカードは、ほっとするものが多いです。

一方、これに対し、剣や刃物状のものが描かれているカードは、厳しいところがあります。

マルセイユタロットの大アルカナでは、「正義」とか「13」のカードが典型的でしょうか。

また剣が描かれていなくても、厳格に見えるカードはあります。

それは男性的なカードに、やはり多いかもしれませんが、女性のように見えるカードでも、それはあります。

ちなみに「正義」の人物は「女神」として表され、女性であると言われます。

タロットカードは、「絵」なので、このようにまず、見た目の第一印象ともいえるものが、どうしても強く見る側に入ります。

それは重要なことではあるのですが、実は、それ(見た目)だけではないのです。

むしろ、第一印象から逃れる意味や象徴性というのを会得・理解することが、次の段階に進むために、非常に大切なことです。

このことは、私たちの日常生活の場面においても言えることです。

第一印象・外見は、その人となりを表すことが多いものですが、しかし、つきあったり、深く交流したりしてみないと、その人の本当のところ、あるいは別の面はわかりません。

怖そうに見えても、意外にシャイで優しい人だったということもあれば、いつも笑顔で穏やかな人が、腹黒かったり、かなり葛藤を抱えていたりして、人に嫌われないよう、癖のように作り笑顔で過ごしていたということもありえます。

こうした二面性、多面性(多重性)は、当たり前のように、人にも物語にも社会にも、構造として存在します。

単純に現れている一面だけを見て、判断することは、素直なようでいて、実は危険でもあり、未熟でもあると言えます。

物語・ストーリーでも、わかりやすい勧善懲悪スタイル、最初から悪者と善人が明確で、最後は正義の味方によって悪者が退治されるみたいなお話は、スカッとするかもしれませんが、ストーリー作法としても入り口ではあっても、最低レベルのものです。

現実の人間・社会がそうであるように、人はそう単純なものでなく、悪人にも善に見える理由があり、善人も立場や状況、見る人の価値観によって悪となります。

「正義」ひとつとっても、ある人の正義は、ほかの人の不正義や悪にもなり、時代や国、社会の一般的価値観によって、いかようにでも「正義」の概念と定義は変わります。

そうすると、本質的には、世の中にいい人なんていませんし、悪い人もいないのです。

それを決めているのは、自分自身であり、その線引きこそが、あなたのルールであり、「正義」ということになります。

ということで、タロットカードの大アルカナ一枚一枚を見ながら、見た目の第一印象をまず感じつつ、それとは異なる意味合いを見出すことで、世の中の多重構造を知ることができます。

それは結局、自分自身の多重性でもあるのです。

ただ、当然ながら絵柄の最初の頃の印象(見た目・イメージ)だけでは、それを探ることはできません。

だからこそ、感覚だけではなく、一枚一枚の象徴的知識が必要となるのです。それがないことには、単純な絵柄のイメージだけの印象と意味に留まります。(逆に知識に引っ張られ過ぎるのも問題ですが)

それは人間でいえば、ひとつのペルソナだけ見て、その人を判断しているようなものです。

これはまた、最近のネットやSNSから発せられる情報を、そのまま鵜呑みにして信じてしまうことと似ています。

特に裏や陰謀論を明かすと見せかけているものが表面的なものであり、普通の情報・表の情報ののように見えるものに、裏や陰謀があるというような反転構造などにも気がつくことができません。(もちろん、様々なケースが存在します)

タロットはいろいろな面で、神性的な自分自身を取り戻すための象徴体系であると実感します。

しかしそれも、人によってどれ(どの状態)を志すか、タロットをどの次元に置いて活用するかによって変わってくるものです。

少なくとも、怖く見えるカードに、とても有り難い救いを見たり、柔和で優しく見えるカードに、厳しい面を見たりすることができるようにはしたいものです。

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