「13」の多重性と後の方向
マルセイユタロットには、名前のない「13」という、数だけ持つカードがあります。
このカードは、絵柄の特徴から言って、怖がられたり、ネガティブなイメージ持たれる場合は多いです。
その感覚は間違いではないですし、そもそもカードの第一印象というのも、とても大切なものです。
ですが、人間でもそうですが、最初の印象やイメージだけで判断すると、誤っていることもありますし、つきあえば、ほかの部分もあることを発見できます。
感覚は重要ですが、それだけでは知性に欠けるところもあって、思い込みや洗脳の危険もあります。
「13」の象徴性を詳しく学べば、このカードのポジティブさにも気づけますし、そもそもカードは個別でも全体でも、いいも悪いもないのだということを知ります。
いい・悪い、ポジ・ネガなどを決めているのは、自分自身であり、その自分が属する(肯定している)社会や組織、常識的な価値観といえます。
そのことでは、「13」は、私たちの普段かけている色眼鏡を修正してくれる役割を持つカードと言えるかもしれません。
さて、そんな「13」ですが、大体、このカードの意味合いとして、変化・変容的なものがあり、それは大変さでもありますが、文字通り、大きく変わることが示唆されます。
一方で、絵柄にある「大鎌」から、削ぎ落としてシンプルにしていくというようなことも出てきます。
「鎌は」本来、作物を刈り取って収穫する道具ですから、実りに関係していることもあります。
ほかの部分も含めて、このように象徴的には「13」にもいろいろと意味は出てきます。
今日は、その中でも、一見、普通の解釈のようで、少し異なるものを紹介したいと思います。
さきほど、出ました「大鎌」ですが、収穫道具ということもあるのですが(この象徴性はとても大事です)、ここでは、「削ぎ落とす」刃物的な意味でとらえてみます。
となれば、何かを切っていくようなイメージになるのですが、大鎌の動かし方は、単に直線的に切るのではなく、よく見ると曲がっており、回転させるものであることがわかります。
この回転というのが鍵です。
詳しくは講座で述べることではありますが、簡単に言いますと、行きつ戻りつの運動があるということです。
ただ変化・変容ばかりに目が行くと、前に進むようなイメージが出ますが、戻るということもあるのです。
つまり、前を見るだけではなく、後も見る必要があるのです。
後には何があるのか? おそらくまだ刈り取られていない、残されたものがあるのでしょう。
また「削ぎ落とす」という象徴性から、初心や、物事の本質に立ち返るというようなこともあります。
物事を始めた頃は、ただ楽しさや成長のためにやっていたのに、今はいろいろな条件や事情をあれこれ複雑に考え過ぎて、わけがわからくなっている・・というようことはあると思います。
そうした時に「13」が出れば、「本質に戻ること」」「もともとの最初の気持ちや状態までそぎ落とすこと」が示されていることがあるのです。
言わば、この場合の「13」は、「愚者」に変化しつつ、もう一度「手品師」まで戻ることのような象徴性になっているということです。(しかし、一度通ってきた道ですので、レベルや次元は異なります)
ほかにもう一つ、「13」が反対(後)側を見る時に言えることがあります。
「13」が回転しながら逆方向(後側)に向いた時、鎌は勢いを増して、遠心力で外側に刃を向けるようなことになります。
これは、後にあるもの対し、強い拒否姿勢であったり、防御しようとしたりしている姿勢にも見えます。
ということは、これまでの中で、嫌であったこと、受け入れられないことに対して、断固拒否し、自分を守るということもあるかもしれません。
そこから過去を断ち切るという意味も出てくるでしょう。
そうした上で、さらに回転すれば、後側には未練なく、きちんと前(右側)を向いて先に進めるということになります。それが、その人にとっての変化・変容の重要な過程であると見ることができます。
タロットカードの象徴性は普遍性と個別性を持ちます。
学ぶ時は、カード象徴の普遍性や全体性に注目しますが、リーディングにおいては、人それぞれの個別性・個人の問題・事情にその象徴性を適用していく必要があります。
模範解答のようなものが、厳密にはできないのがタロットリーディングです。
模範解答があるとすれば、大きな象徴性においてですが、それは個人個人のケースでは抽象的過ぎ、個人の相談ではほとんど役に立ちません。
今回取り上げている「13」でも、意味合いは様々に出ますが、それが一人一人の事情によって、どれが当てはまり、どの実際のケースに象徴性が適用されるのかは、まさにケースバイケースなのです。
しかしながら、逆に言えば、タロットの象徴性を大きな意味でも、細かい意味でもとらえておかないと、個別への適用は難しいものとなります。
結局、多角的で多重な視点が、タロットの学びやリーディングにおいては大切と言えます。
その意味で、今回は「13」を例として見たわけです。
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