マルセイユタロットの大と小の世界。

私の開いているタロット講座にはいくつかの種類がありますが、最初と基礎は、やはり、大アルカナと呼ばれるパートの解説、それを中心としたリーデイングテクニックの習得ということがメインとなります。

これは大アルカナにタロット(マルセイユタロット)の基本があるからです。

一方、タロットには大アルカナだけではなく、小アルカナというパートがあります。最初に学習する「基礎講座」でも小アルカナについて学びますが、さらにアドバンス的なコースでは、もっと小アルカナの論理と技術にふれていくことになります。

マルセイユタロットの小アルカナ、中でもトランプのような記号的な絵柄になっている数カードは、カードの絵柄のイメージからリーディングしていくことは難しく、ある種のテクニックと術(方法)がいります。

それも何種類かあるのですが、残念ながらのこの明確な区別があまり意識されておらず、独学でされたり、ほかで学習されたりしてきたことで、小アルカナの読み方(リーディング)に混乱を起こしている人もいらっしゃいます。

それは、やはり絵柄の違いから来る、大と小(特に数カード)のリーデイングアプローチに異なる部分があるからなのです。

ウェイト版(ライダー版)などのカードでは、小アルカナも含めてすべてに絵画的な絵がついていますので、大と小を同様のアプローチで解読することも可能です。しかし、マルセイユタロットはそれでは無理があるのです。

マルセイユタロットには意図があって計画的に絵柄や象徴が配置されており、そのデザインにも無造作なところはありません。従って、大アルカナ、宮廷カード・数カード(小アルカナ)の違いは、わざとそうされていると見ることができますし、リーディングにも違いをもたせるのは当たり前となってくるのです。

その大きな違いは、一言でいえば、抽象性と具体性、夢と現実性、イデアとリアルみたいなものとなります。前者が大アルカナで、後者が小アルカナとなってきます。

大アルカナは魂の解放を目指し、小アルカナは現実世界での安定や確実性を表現させます。

実はこのふたつは相反するものであり、いわば天と地の逆方向の指向性を持ちます。※(あくまでマルセイユタロットにおいてであり、そして私の考えです)

大アルカナを使ってリーディングしたり、自己成長のためのツールとして使ったりすることは、現実や常識の囚われから解放し、全体的なものに自己(あるいはリーデイングする相手)を融合させる方向性にあります。

ですから、スピリチュアル的なもの(スピリチュアル的な思考と感性)には相性がよく、現実に飽き飽きしていたり、実生活で閉塞的な苦しい状況にある人は、大アルカナのエネルギーと示唆によって、特に精神的安らぎや解放を得ることができます。

しかし、一方で、逃避的にもなり、夢の世界に逃げ込み、現実を見ないようになるおそれ(まさに現実逃避になること)もあります。

これに対して、小アルカナの世界は現実性とリンクしていきますので、よりはっきりとした判断に使うことができます。

特に数カードは、数を象徴していますので、数で表せる世界は、現実のほとんどすべてのものを象徴させることができ、いわゆる時空として、時間・場所の指定も顕著になります。また数で表せない人間そのものは宮廷(コート)カードによって象徴させることが可能です。

つまりはいつ・とこで・誰と・どのように、というものがはっきりと特定できるような世界観なのです。

その世界はいわば生身の人間が悩み苦しみ、翻弄される実生活の世界であり、だからこそ、はっきりと、「これだ」というものを示して欲しいと人は願うのです。それに応える(答える)のが小アルカナの世界です。

成功するのはどっち? 失敗を避けられるのはどの分野? いつ恋人や結婚相手に出会えるの? お金を増やすにはどうすればいいの? 仕事を辞めたほうがいいか続けたほうがいいか? 旅行はどこに行けば楽しめるのか? どの人とつきあうのがいい?・・・こういうようなものがリアルな生身の人間の問いとなってくるのです。

それに答えようとするのが市井の相談者であり、占い師はこの世界で求められ、人々の相談に乗り、人々の成功、幸せをサポートして行きます。(現実の生々しい相談に対応しなければならない「占い師」という仕事は、本当に大変で、すばらしい仕事をされていると思います)

だから、言ってみれば、小アルカナは占いの世界と相性がよいのです。

小アルカナは現実の生々しい問題に、「これ」「あれ」「それ」と言った具体的回答を示します。

それは明確で嬉しいことのように思えるかもしれませんが、現実性を示すことで、はっきりとしたものが出て、実はシビアなことでもあるのです。

小アルカナを使う時、逃避できない(あるいは自分が逃げている現実部分のような)シビアなことが、如実にタロットから出ることがあります。

それと、小アルカナの世界ばかりで対応していると、自分のレベル・次元を上昇させる(言い換えれば意識を拡大させる)ことが難しくなり、現状の価値観と意識レベルでの選択によって、自分の思う良い方向、成功する道を獲得しようとします。

しかしそれは、ある線引きによる右か左かの選択の連続であり、常に焦燥感のようなあせり、得たものを失うのではないか、失敗を選ぶのではないかという恐れが伴います。

またどうしても、モノ(お金など)の多寡や、能力・環境の違い、物事の出来・不出来、友人・知人の数や地位・評判など、他人と比べる傾向が強くなり、人から承認されたい(認められたい・評価されたい・抜きん出たい)欲求も刺激されます。

そのため、そういう世界から魂が飛翔していく(魂を解放していく)象徴として、大アルカナの世界があるのです。

しかし、大アルカナだけでは、精神やスピリチュアルに過度に傾いて現実逃避になり、小アルカナだけでは、分離された現実世界での、いい・悪いの価値基準の中でグルグル回り続けることになります。

マルセイユタロットは見事に、大と小、その絵柄などの違いと構成によって、まさに天と地、夢と現実の調整・バランス・統合を図られるように設計されているのです。

ということで、マルセイユタロットにおいては、大も小もどちらも必要なものであり、特に、占いや実際の現場で相談に当たる人にとっては、小アルカナを使いこなしつつ、大アルカナの世界につなげていくことが重要になってくるのです。

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