タロット、物語、語ること

タロットリーディングは一種の物語創作に近いものです。

タロット自身がスートリーを語るとも言えますし、また、読み手のほうも、タロットの象徴を通して、自らが自分自身(あるいはクライアント)の物語を紡ぎ出すのです。

この、自身のスートリーを創る・語るという行為は、実はなかなかのパワーがあります。

それは人は皆、自分の(創作した)物語で生きているようなものだからです。

私たちは他人の影響は受けますが、自分の物語、自分の人生だと話を作る(話としての形にする、意味あるものにする)のは、ほかならぬ自分自身です。

ですから、外のものはいわば設定や舞台・材料のようなもので、自分の人生を意味あるもの、理由のあるもの、筋が通るもの、認識できるもの、「物語」にしているのは自分自身と言えましょう。

しかしながら、普段、私たちは自分の物語・ストーリーを冷静に振り返るようなことはあまりありません。それは無意識に物語をつないでいるものだからです。

しかし、ストーリーであるがため、その物語には切り替えや分岐点のような重要なポイント、あるいは全体の流れや意図、さらにはオチのようなものまで用意されていると、とらえることができます。(物語なので、そのような見方をすることができるということ)

そして、ストーリーだからこそ、その都度、作り替えることもできます。

けれども、そうは言っても、終わってしまったもの、過去のものは、ストーリーを変えることは不可能だと思うでしょう。

しかし、これもストーリー(物語)であればこそ(「事実」ではなく、あくまで「物語」だからこそ)で、しょせんは「物語」なので、改変も可能なのです。

厳密にいえば、過去の解釈を変えるというようなことになるでしょうか。(それでも、「物語」としては変えることができると言えます)

ところで日本には言霊思想というものがありますが、これとは違うかもしれませんが、やはり、「言挙げ」すると言いますか、言葉に明確に出すことで、「形」と反応(形に変化)し、現実に影響を及ぼすということも考えられます。

ですから、物語として「自分の物語」を実際に口に出して語ることは、心でただストーリーを思うだけよりも、現実とのリンク(現実への作用)が強くなる可能性はあると想像できます。

タロットは絵柄でできた象徴ですから、絵としてのイメージも浮かびやすく、物語を作り、そして語ることには適しています。

本当はクライアント自身がタロットの表す物語を語ることのほうが効果は高いと言えますが、タロットリーダーが物語を語っても、それ相応の効果が出ると考えられます。

時系列でいえば、現在を中心に、過去の自分、未来の自分を「物語として創り、語る」ことで、それまで抱いていた自分のストーリー・物語が変わるわけです。

これはリーディング前の自分の物語が終わり、新しい物語が誕生することと言ってもいいでしょう。

ただ、本質的なことで“語れ”ば、やはりそれも「物語」なので、真実ではなく、自分(そしてほかは他人)と思っている「自我」としての創作であり、究極的には幻想と呼べるものなのかもしれません。

逆を言えば、私たちは、自身の物語を語れなくなった(創ることができなくなった)時、それは自分ではなくなるということです。

それを「死」という現象で表してもよいでしょうし、自我(エゴ)意識を消失した、何らかのワンネス状態と言うこともあるかもしれません。

では自分の物語などないほうがいいのかと言えば、ある次元ではそうかもしれませんし、また特に現実次元においては、なくてはならないものと言えましょう。

このように、普通に生きる意味では、自分(自我)の物語は重要で必要なのものと言えますが、何度もいうように、これは「物語」であるので、ただひとつのストーリーに凝り固まる(こだわる)必要もないわけです。

材料や舞台も豊富であり、創作や改変が認められている世界でもあるのです。

悪くいえば、自分の人生(他人の人生)も、すべて物語であり、自分を語っているようで、自分を騙っている(騙している)のです。

しかしよく言えば、しょせん騙りの物語だから、悩みすぎるのもバカらしいもので、物語創りとその体験を楽しめばいいわけで、ここにタロットでいえば「愚者」精神が立ち現れます。

さらにダジャレ的(笑)に続けると、語り終えれば、語り(の物語)はつまりは死ぬ(終了する、完結する)わけで、それはカタルシス(笑)として、浄化になります。

まじめに言えば、一通り語ることは、自分のひとつの物語(それが問題やネガティブなものだと特に)が終わる感覚で、浄化(物語の成仏)することもあるということです。

ということで、皆さんも大いに語りましょう。

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