タロットによる横の拡大

タロットカードは、絵柄を象徴とするカードの集まりなので、一枚につき、ひとつの意味が決まってくるという性質のものではありません。

頭が固かったり、あせってすぐカードを読みたいと思ったりしていると、ひとつの意味を暗記するかのようにして、結果的に固定的な読み・解釈しかできなくなってしまうことがあります。

タロットを習い始めの人に時々いらっしゃるのですが、タロットの読み方の正解を強く求めるという人がいます。

ある問題ケースにおけるタロットの展開において、正しい読み方はどれかと質問されるわけです。

なぜそうなる(そうした質問になる)のかと言えば、タロットの読み方が複数あるので、どれが正しいかがわからず、それを教えてほしいとなってくるからです。その気持ちはわからないでもありません。

私たちの普通の状況やシーンにおいては、正しい回答、いわゆる正解というものは、クイズではありませんが、それは「ひとつ」であることがほとんどです。

学生時代の試験や、社会に出てからも、ひとつの正解を求められ、それを導き出すこと、正解としての結果を出すことが求められます。

従って、「答えはひとつ」の世界に慣れてしまい、それがさらに、「答え(正解)はひとつでなければならない、ひとつであるはず」と思い込むようになります。

勢い、人生の勝利の方程式、勝ち組への情報、幸せになるやり方などもひとつ、私にはこういう状態(仕事・生活・友人・パートナー)しかない・・・というようにもなってしまいます。

しかしタロットは象徴ですから、同じカード、同じ展開であっても、たくさんの読み方や解釈ができます。

言ってみればその全部が正解で、また絶対の答えでもないのです。

そこに全部があり、しかしまた一部でもあり、さらには何もないのかもしれないという奇妙なものになります。

これは通常、あまり経験したことのないような世界(観)であり、だからこそ、タロットを前にすると、固まってしまったり、かえって戸惑ってしまったりする人もいるわけです。

特に何かのモデルや指針、回答がないと不安になる人、常識や敷かれたレールの上で自動的に従っていれば、つづがなく生きられると思っている人のようなタイプの人には、タロットを学ぶことは最初は苦痛でしょう。

しかしながら、その混乱こそがタロット(を経験したり、学んだりすること)のひとつの役割でもあるのです。

言ってみれば既成概念・固定観念の打破であり、自分が安心・安全だと思っていた世界(それは逆に自分を苦しめていた要因でもあります)からの旅立ちでもあります。

最初は怖いことではありますが、思考や感情においての自由への選択の第一歩でもあるのです。

タロットには、縦の階層・次元別の読み方の相違と、横の同じレベル、同じ個人の間で違ってくる読み方の幅があります。幅と奥行き、または幅と高さの違いによる読みと言ってもいいでしょぅ。

タロットが象徴であり、読みと正解もたくさんあるという考えに変わっていくのは、個人的なレベルでの横の幅を増やすことと同意です。

ただし、タロットから導かれる正解の多様さは、レベルや次元の違いによる縦の読みの場合になってくると、実はそれぞれの階層(レベル)によって、正解はひとつとなる読み方にもなります。

ここが象徴性の難しさ(面白さとすばらしさ)にもなってくるのですが、今日の話の趣旨は、縦ではなく、横においての多様さの獲得(自我のこだわり・囚われの常識からの解放)なので、その説明は別の機会にします。

タロットが、個人レベルにおいて、読みの幅の多様性によって、多くの正解があるということは、一人一人、別の正解があるということにもなります。

つまり、自分がよいと思うことは、人には当てはまらない(その逆もあり)ということもある世界です。(これは現実の世界でもそうですが)

リーディングにおいても、セオリー・定番的な意味でのタロット解釈だけではなく、そのクライアント個人、その時その時のセッションや相談、問題別によって、特徴的な読みと回答(解答)が現れてくることもあるわけです。

極端に言えば、自分にしか通用しない読み方、その人にしか適用できない読みというのもあるのです。

占い的になってしまうと、どうしても正解や正しい方向、幸運なる道の選択の示唆、その拝受みたいになってしまうのですが、それも悪いわけではないにしろ、タロットによって、選択肢そのものを増やす仕組みを知ること、常識的・多数派的に正解(正しい生き方)だと思っていたものに対し、揺らぎや革命を起こす意味では、あまりそういったタロットの使い方はよくないかもしれません。

「答え(ひとつの正解)を出す」という姿勢だと、かえって余計に悩んだり、迷ったりしてしまうこともあります。

タロットリーダー・クライアントともに、ひとつの正解を出すという姿勢よりも、たくさんの答えをタロットをもとに、一緒に導き出すというスタイルにすると、双方、楽になることがあります。

そのうえで、縦のレベル別の正解というものを入れると、さらに整理がついてきますが、まずは、タロットによる横の幅を広げることが大事かと思います。

マルセイユタロットにおいても、大アルカナの数の順で言うと、5の「法皇」から6の「恋人」になって、人物や選択肢が増えていることがわかり、横の幅(選択肢や視野)が拡大していることがうかがえます。

その分、確かに迷いも増えるのかもしれませんが、思ってもみなかった道、生き方、世界があなたの前に広がっても来るのです。

「あなた(自分)らしく」というのは、自分を知るということの意味でもありますが、世界(人生)にはたくさんの選択があることを知って、そのどれかを選ぶ生き方によって、自分らしさ(個性)をもって、全体の中で生きやすくなることでもあるのです。

タロットはそのサポートに使うことができるのです。

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