そして、時は動き出す。

家の時計が、昨日、止まりました。ま、単なる電池切れですが。

というわけではありませんが(笑)、今回は時が止まること、動き出すことについて、タロット的に見ていきたいと思いつきました。

マルセイユタロットで時間を象徴するカードと言えば、「運命の輪」がすぐイメージされてきますが、実は、ほかのカードでも時間との関係を示唆させることができます。

例えば、「節制」では、時間の有効活用ということの意味を見出すことができますし、「月」では、月のサイクルによる周期的な時間パターンを当てはめることもできます。また、「太陽」では一年という時間を見ることも可能です。

今回は、そのような時間のスパンや活用ということではなく、心理的な時間の動きを中心にタロットで考えたいと思います。

時間には、大きく分けて、物理的・計測的時間と、各人の心の中で動いている心理的な時間があると考えられます。前者は万人に共通な、いわば時計時間ですが、後者は一人一人違う進み方がある個人的な時間とも言えます。

前者は否応なく、一定の速度で進み、伸びたり、縮んだりはしません。(本当はそうではない可能性もありますが、一応そうしておきます)

しかし、後者は極端なことを言えば、止まってしまっている時間さえあります。人によって動き方、進み方が違うのですから、とても速く時間が動いている人もいれば、まさに停止したままになっている人もあるわけです。

速く進む(と感じられる)時は、たいてい時間そのものを気にしていない時で、いわば、熱中したり、夢中になっていたりしているような時です。だいたいは楽しい状態でもありますが、楽しさとかつらさとかに関係なく、ただ真剣に集中しているから、そうなっているということもあります。

問題は、時間が停止していると感じている時です。いや、時には、停止しているとさえ感じられない場合もあります。

これは心理的な時間が動いていないわけですから、心が止まっている状態だと表現することができます。心が止まるほど、何かに囚われているわけです。

タロットで言えば、「吊るし」(の問題状態)ともいえますし、「愚者」が過剰になり、どこにも居場所なく、彷徨っている(堂々巡りしている)ような状態とも言えます。

しかし、一方で、「時間が止まっている」というのは、時間(の動き)を感じさせないことでもあるわけですから、それは「永遠」というものにも近い感覚ではないでしょうか。永遠の苦しみはあまりにもつらいものですが、永遠の喜び、永遠の愛という表現になれば、それはとてもポジティブなものにもなります。

例えば、恋愛において、両思いとなり、二人の世界が悦楽状態になっている時、まあ、平たく言えばめっちゃラブラブ状態(笑)になってるい時、そこには時間はほとんどないような感覚になります。

二人で過ごしている時、時計時間は一瞬で過ぎ、同時に、二人にとっての時間は至福の永遠のようにも感じられます。

恋愛を象徴するカードでは、「恋人」カードがありますが、このカードでは、上空に天使が描かれ、下の人間たち、恋人たちの上には人間の世界を超えたものや状態があることが示唆されています。つまり、時間で言いますと、人間の時間とは違う、天使や天上の時間があるということです。

それは、計測され、分離(過去・現在・未来)された人間(地上)的時間と、統合され、永遠と感じられる天上的時間との比較です。(時間のある世界と時間のない世界)

恋をすると、天使は、この時間を、愛し合っている者にプレゼントしてくれることがわかります。

ただ、つらい片思いであったり、望みのない報われない恋をしていたり、強烈な失恋をしたりするとどうでしょうか?

実はこれ(その状況)もまた、時間が止まったようになる(感じる)のではないでしょうか。この場合は「囚われ」「強い思い」による心の時間停止です。

「恋人」カードでは、三人の人間の恋模様のような描写があり、必ずしもラブラブ状態の二人とは言えず、むしろ三角関係も匂わせる感じになっています。すると、恋に悩んでいる時も、上空の天使は別の時間を見せに来るのかもしれません。

これまで恋愛で例えてきましたが、何も恋愛に限らず、結局、ひどく心が囚われたり、逆に現実を忘れるくらいのハッピーな出来事などあったりすれば、人の心の時間は止まり、「永遠」というものを瞬間的、あるいは長期的にもたらすことになるということです。

タロットを展開した時、時系列的には過去を象徴するパートにおいて、このように過去における出来事によって、心の時間が停止してしまった場合が見受けられます。その人自身は、今や未来に生きることができず、言わば永遠に過去のその時間の状態に囚われているわけです。(まだ実現していない、あるいは実現不可能な夢のような未来像に囚われていることもあります)

または意図的に逃避(その人にとっては天国ですが、偽物でもあります)していることもあります。自分の創り上げた仮の永遠の国に逃げ込んでいるわけです。しかし、この永遠の国でこそ、癒されることもあるのです。だから、そこに逃避するわけです。

これはまた、「吊るし」の休息状態と例えることもできるかもしれません。仮の永遠の国で、思い出に浸り、傷を癒し、何度も過去の状態を繰り返し、自分の感情が治まるまでリトリートします。

しかし、ずっとそこにいては、現実の時間と乖離したままで、エネルギーも今に動かすことができなくなります。本当の自分は(偽の)永遠の国にいて、仮の自分が現実で生きているようなものです。

「吊るし」(数は12)の次には「13」というカードが控えており、12の国を壊し、脱出させることを促します。止まった時間を再び動かす必要が出てくるのです。言い換えれば、現実時間への帰還です。

心理的に停止した時間の状態とは、一見、永遠の融合感にありつつも、その実、今の自分と囚われた(ている)時の自分との分離状態でもあります。つまり、過去や囚われの自分を癒し、今の自分と一体になる必要があるのです。

それを生み出すのは、一言でいえば、愛の存在の自覚(愛の気づき)と言えましょう。

この愛は、低次の自己愛でなく、高次の大きな意味での愛です。宗教的表現でいえば「神の愛」になります。

一人で気づくのはなかなか難しいかもしれませんので、他者のサポートがいることもありますが、いずれにしても、囚われに至る出来事にも、愛の存在があったと気づくことができた時、統合が起き、囚われ(停止)の時間(心)は浄化され、今の自分・時間に戻ってきます。

「結合」による新たな時間の認識、進化と言ってもよいでしょう。

だから、こうして回帰してきた(普通の)時間は、確かに時計時間として同じようには進むのですが、実は質としては変化しており、数段上の時間を味わうことになり、人生の意味(見方)も変わってくるのです。

止まった時間が動き出す時、あなたは新しい自分となって再生したのです。

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