自身をタロットに語らせる
タロット、特にマルセイユタロットは人の意識の元型を描いていると言われます。
かの有名な心理学者ユングも、マルセイユタロットに関わっていたことが知られていますし、後学のユング派と呼ばれる人たちの中には、詳細にマルセイユタロットと人の心理(成長、統合)の関係を考察されている人もいます。
そして、マルセイユタロットに限らず、いわゆる絵のついたカード類たちは、何らかの心の状況や、潜在的にある心の中の思いを投影すると考え、カウンセリング的な相談に用いられることもあります。
占いではないタロットの活用があるとすれば、ひとつには、心理的な意味でカードを扱うということがあげられます。
むしろ、最近では、タロット(などの絵のついたカード)は、心理セラピーに使えるものだという認識が増えているように思いますし、そのことは、精神世界系や、アカデミズムではない心理の世界では、もはや当たり前のようにも見えます。
しかし、だからと言って、タロットは心理的な(心の中の)投影装置として使うものだけではないということは述べておきます。それはタロットにおけるほんの一部の機能と言ってもいいでしょう。
私自身は、心理・メンタル面をタロットで読むことは多いですが、一方で、さらに違う階層・次元にもふれることがあります。
現実の問題の多くは、心の問題をとらえ、それを浄化したり、癒したり、変容させたりすることで解決に向かいますが、もちろん、人は心だけで成り立っている存在ではないので、ほかの部分も観ておく必要性があるのです。
とはいえ、クライアントや自分の心を整理しておけば、問題と思っている部分は、ほとんど楽になったり、快方に向かったり、少なくとも、見え方、感じ方は変わります。
なぜなら、今「問題と思っている」と書いたように、問題(悩み)は、問題として当人が思わない(意識しない)限り、問題ではないからです。ということは、「思う、思っている」ということが重要で、それはつまりは自分の心の思い方になりますので、ここに焦点を当てれば、だいぶん変わることができるのです。
ということで、タロットを心理的な分野、心の整理(ただし病的なまでになっていると専門家の力が必要です)に活用することは、大いに意義があることだと言えます。
ここで、意外に簡単な方法で、タロットを使って、自分の心と対話する方法を示します。
それは、大アルカナ22枚を使います。(高度になれば、小アルカナを使う方法もあります)
マルセイユタロットの大アルカナは、一番最初に述べたように、もっとも意識の元型を表しており、絵として把握しやすいものになっていますので、自然、自分の内面や意識、心を象徴させることができるのです。
特に、明らかに「人物」となっているもの(描かれているカード)は、この場合、やりやすいです。
ですから、全部のカードを使う必要は、最初はありません。
まず、22枚のカードのうち、気になる人物が描かれているカードをいくつか選択します。
例えば、「悪魔」が気になるとか、「隠者」が気になるとか、「星」が気になるとか、カードはどれでもいいですし、何枚でもOKですが、初めのうちは、あまり多すぎると混乱してしまうので、特に気になる三枚くらいの(人物として見ることのでき)カードにしておいたほうがいいかもしれません。
そして、自分が選んだカード、一枚一枚と向き合い、まるでカードの人物が実際の人間であるかのように想像します。
このカードが語るとすれば、何を言っているのだろう? 今、自分に何か言いたいことがあるとすれば、このカードの人物は何と言う(言っている)のだろうか? という具合に、カードの人物に想像上で語らせます。
この時、カードの普遍的な意味は、あまり考えないほうがよいでしょう。あくまで人物が語るセリフのように思うことです。
一枚ずつが終れば、次に、もし三枚を選んでいたとすれば、その三枚の人物が合議(会議)しているように、今度は想像してみましょう。
誰か一人が強い意見で押し切る場合もあるかもしれませんし、三人が等しく、意見を述べ合って、あなたに何か共通して意見を具申(笑)することもあるかもしれません。
結局のところ、自分の心の分身と語っているようなのものなのですが、タロットという物理的なカードがそこにあるので客観性を持ち、自分の中の色々な人物の思い(それは自分の思いの一部でもある)を聞くことができ、自分を整理することに役立ちます。
慣れてくれば、人物ではないカードも、あえて人物のように見て行くこともできますし、シャッフルして偶然出たカードを素材にして、語らせることも可能です。
偶然に出すほうが、意外性と言いますか、さらに客観性を持ったり、特に占い次元に降りていく(変えていく)こともできるたりする(つまり、現実的・具体的な問いに答えてくれるような気にもなる)ので、楽しいこともあります。
マルセイユタロットは、人物が描写されているたいていのカードには鋭い視線がありますので、その視線方向を気にして見るのも、マルセイユタロットならではのコツと言いますか、特徴と言えましょう。
それから、自分の選んだ人物のカードが、何もしゃべらない、話さないこともあります。
これは、自分の心がそのカードの象徴性において閉じていたり、秘密があったり、なかなか一人になっている時でさえも言いづらい何かを抱いていたりする場合があります。
また、反対に、うかつにしゃべりの過ぎていることの注意であることもあります。
さらに応用編の方法も、少しだけふれておきましょう。
例えば、マルセイユタロットの「月」のカードでは、犬のような動物が二匹、月に向かって吠え合っています。
それぞれ、あえて色も異なって描かれているのですが、それはつまりは、何か対抗したり、相反したり、拮抗したりする要素とも言え、いわばあなたの中のせめぎ合っている葛藤部分とも言えます。
それが何なのか、二匹の犬、それぞれにまたカードを一枚ずつ引いて、そのカードたちに語らせる(争わせる)という手があります。
あなたは、それ(会話、想像する言葉での吠え合い)を見ているだけです。(笑)
「月」のカードは、皆さんわかりづらいとか、もやもやしているので嫌われたりするカードですが、心や感情の整理には、すばらしい効果と意味を発揮する奥義的なカードなのです。ざわざわするのはプロセスであり、本当は心を静めるカードになるのです。
ただし、それには、「月」のカードの細かな象徴をよく理解(知的にも感性的にも)しておく必要があります。
ということで、皆さんも、タロットカード自身に語らせて、逆に自分を見てみましょう。きっと、なかなか面白い気づきがあると思いますよ。
コメントを残す