仲介する自分

マルセイユタロットの大アルカナを見ていると、人間、あるいは人間でない存在も含めて、複数のものが出てくるカードと、単独の人物など、独立した感じの図像のカードとに大別されるように思います。

細かく見れば、単独に見えるカードでも、実はほかの存在が隠されて描かれていることもあるので、必ずしもそうとは言えないのですが、ぱっと見には、そういう分類も可能です。

そして、複数の存在の出るカードたちの中で、その人物(存在)たちの中心となったり、仲介をしたりしているように見えるものがあります。前者は「世界」、後者は「恋人」などが典型でしょうか。

今回、その後者と言いますか、仲介や架け橋役ということをテーマにしてみたいと思います。

タロット的に言えば、仲介や架け橋となる存在は、天上的な存在と、地上的な存在があるように見えます。

もっとわかりやすく言えば、実際の人か、人ではない存在かということです。

私たちは現実の世界では、当たり前ですが、「人間」である以上、私たちがなれるのは、(実際の)人としての仲介役、架け橋役です。

皆さんも、今までの人生を振り返ってみてください。

自分が仲介役になったこともあるでしょうが、特にまだ未熟な頃、幼い頃、若い頃などは、誰かに仲介されて、あるグループや団体、組織などに導かれたと思います。

それには、仲介された先が、悪かったこともあるでしょうが、あとで振り返ると、結果的には良かったと思えるところ(こと)が多かったのではないでしょうか。

俯瞰した見方をすれば、どちら(導かれたところが良かったところ、悪かったところ)にしても、自分ひとりで閉じこもっていては見えなかった世界、わからなかった世界を、ある人が仲介してくれたおかげで、経験することができたのです。

その仲介役が、天使か悪魔かで、行き着く先は違ったかもしれませんが・・・

今、天使と悪魔の対比をしましたが、実際の仲介する人は「人間」ではあっても、その背後に、天使的な力や悪魔的な力が働いている場合があるかもしれません。

すると、一口に仲介と言っても、現実の人間だけの意志や思いだけで、仲介されているのかどうかという問題(疑問)が出てきます。

常識的には、現実・実際世界の関係性・情報性の中で仲介がなされますので、それ以外の見えない世界の仲介や力などは、普通の人は考えないものです。

しかし、タロットなどの世界に関わっていますと、現実を超えた世界を見るようになって来ますので、いろいろな影響や原因も、見える世界だけで考えないようになってきます。

「恋人」カードにも、人々が気が付かない上空で、キューピッドが矢を射かけている図があり、このような見えない世界からの働きかけ、仲介があることが示唆されています。

ということは、仲介、橋渡し役というのは、人間だけではなく、見えない世界の存在、さらには「存在」だけでもなく、いわゆる「ご縁」のような「概念」的なものも含まれるのかもしれません。

ともあれ、ここで言いたいのは、私たちの世界は、当然ながら一人だけの世界ではないので、様々なことを体験したり、新しい考えをもたらせたり、意識の拡大が起きたりするためには、どこか別のところへ(新しい経験の場所へ)行く必要があるということです。

そして、そのためには、仲介役・架け橋役のような、旧から新へ、既知から未知へ、孤独から仲間たちのところへと連れ出してくれる人が重要なのです。

人は心地よいとか、逆に、あきらめ、絶望の世界にいると、何もしたくなくなります。現状維持、固定を望むというか、どうでもよくなって、惰性に生きるようになるわけです。

言い換えれば、自分から何かをするということが少なくなるのです。従って、他人の力が必要となってきます。

あなたを今の状態から外の世界や別の世界に連れ出したり、ほかの経験をさせてくれたりする人によって、あなたに変化が訪れます。

狭い世界にいる人は、自分からどうこうしないというのは、すでに述べた通りです。

ですから、皆さん自身が、仲介役にもなれることを意識して、お節介かもしれませんが、少し、ほかの人に、その人が知らなくて自分は知っている世界を味わってもらう工夫をしてみてもよいのではないかと思います。

最近は、自己アピールをすることで、むしろ自分だけの世界に閉じ込める(囲い込む)がごとく、何かファンとか、推しの人を取り合っているかのように見えます。ニッチな世界であっても、自分がお山の大将とか、個性のてっぺんみたいな位置にいたがる、みんながそういう場所を占めたがるような様相です。

自分が一番、自分が目立つという志向は、必ずしも悪いわけではないですが、ほかに生き方として、誰かと誰かを結び付けるあの世界とこの世界との橋渡しをする、そういうことで、自分自身の世界も広げ、人々に貢献するみたいな方法もあるかと思います。

それが向いている人もいるのです。コーディネート役と言いましょうか。

もちろん、お節介になったり、押し付けになったり、仲介のはずが迷惑になってしまったりすることもあるかもしれません。

宗教とか変な集まりとか、ネットワークビジネスとか、仲介役自身が何らかの利己的な利益・特典を受けたり、自分の強い思い(欲求)を満たすために、そういう役をしてしまうのは問題です。

そのあたりは、仲介する側だけではなく、される側も気をつけなくてはなりません。

しかし、まさにこのバラエティある世界の拡がりを、実際の人間として、純粋な気持ちで、つなげていく活動をすると、そこには天使性が働くのではないかと思います。

天使は、カードの「節制」においては救済の意味にもなります。あなたの仲介は、誰かに救済をもたらすかもしれないのです。

ところで、タロットリーディングもまた仲介の性格があります。

クライアントとタロットリーダーは、タロットを仲立ちとして、問題の解決を図り、双方の意識の変換や拡大、成長を担っていきます。

また、ある意味、天上と地上の架け橋にもなっています。(タロットがそういうツールでもあります)

心理学的には、自我と(統合的)自己の架け橋でもあり、何より、「太陽」のカードでも示される、普段の自分ともう一人の別の自分との懸け橋にもなります。それは神性なる自己と物質・心理的な自分との統合の過程とも言えます。

最初のほうに、実際は人が人を仲介する話をしましたが、あとでふれたように、見えない世界のことを入れると、その裏では、別の存在や、縁とかカルマのような「概念」が仲立ちしていることも考えられます。

そして、霊媒・ミディアムのように、心霊界と、現実の世界を仲介する人もいますし、カウンセラーなどは、心の世界と現実の世界を仲介しているとも言えます。

人だけではなく、儀式・祭祀のようなものでも、特別な演出が、実際の普通の世界と神や仏、祖霊の世界とを仲介させる役割をします。お墓参りすらも、お墓というものと祈りによって、亡くなった人と生きている人の仲介を、意識の世界で行います。

まさに、間々(あいだあいだ)の(仲立ち・仲介)世界は、そこかしこにあり、私たちは、様々に仲介し、仲介されながら生きているのです。

あなた自身も、きっと、誰かと誰かの架け橋になっているはずです。

そう考えると、人生とは、誰しも役割をもって生まれている、あるいは、誕生すると、役割が自動的につくことがわかります。

特に、年齢や経験が増しますと、仲介される側より、仲介していく側になってくると思います。今までよりも、積極的に、仲介役、架け橋役をやってみるのもよいのではないでしょうか。

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