リーディングの具体化が苦手な人に。
タロットを学習していて、タロットがうまく読めない、タロットリーディングに自信が持てないという人の要因は様々に考えられます。
その中て今回は、タロットの象徴と具体という点について、読めない原因を書いてみたいと思います。
タロットは、基本的には象徴ツールです。その絵柄は、何かを象徴的に描いているものです。英語風には、シンボリックに何かを表していると言ってもよいです。
象徴・シンボルというものは具体的ではないから、それ(象徴)でもあるのです。逆にいうと、具体的にこれだと決まってしまうと、それは象徴ではなくなってしまうのです。
ただし、「これこれはなになにの象徴である」と言えることはあります。例えば、「田中社長はわが社のシンボルみたいな人」という言い方の時です。
しかし基本的に、象徴・シンボルから意味をひとつに決めてしまうことは、その象徴的機能の働きを失わせることになります。このあたりは難しい書き方をしているようですが、講義ではもっとわかりやすく説明しています。
とにかく、タロットが象徴である限り、具体的な意味をカードから決めていくのは、本来的におかしな話であり、難しいものなのです。
単純に考えても、例えば「赤丸」という「象徴・シンボル」があったとして、それはどんな意味なのかを具体的に答えるとなると、見る人によって、いろいろな意味や言葉が出てくることになります。
右翼的な日本人ならば、国旗とか日の丸(逆に左翼的で普段から日の丸を嫌っている人も)ということを言うかもしれませんし、果物に興味のある人ならば、りんごとかいちごとか、切ったすいかなど(笑)と述べるかもしれません。
このように、あくまで象徴の場合は、ひとつの図形においても、たくさんの意味が出てくることになります。
また、そのシンボルを通して、個人や民族の特徴もあぶり出されることもあります。同じ象徴図を見ても、人によって、国によって、やはり違うからです。(同時に、特定集団などでは共通した見方も出るからです)
ですが、ここが非常に大切なことですが、その象徴だからこそ出てくる意味があり、たとえ個人それぞれによって違うものが出現したとしても、その奥底と言いますか、本質的には、その象徴として共通している部分があるのです。
それぞれに、その答えならしめている「中心である何か」、それが象徴の本質です。
タロットリーディンクで重要なのは、タロットから言葉や意味を具体的に出すことよりも、この本質をとらえる、感じる、直観するということです。それができれば、具体的な意味は、あとからついてきます。
ところで、タロットを簡単に読めるようにする方法のひとつは、カード一枚一枚の具体的な意味を暗記してしまうことです。
事実、一日コースとか短期間のタロット講座では、そういうやり方を取られているところもあると聞きます。
ですが、このやり方は、まさに一時的なものであり、すぐに限界が来ます。すなわち、まったく読みの幅がなく、決まった意味でしか読めなくなり、行き詰まるわけです。
では新たに言葉や意味を一枚一枚について覚えて行けばいいと思うかもしれませんが、そんなことをしていると、際限なく暗記しないといけなくなります。
これは結局、カードが表す象徴としての本質を理解せず、ただカードから派生する周辺の言葉を覚えているに過ぎないものです。
ゆえに、タロットカードに近づいておらず、人間的に言えば、タロットカードと仲良くなることもできませんから、タロットを理解することも難しくなるのです。
カードが読めない理由のひとつは、象徴としての本質を理解しようとせず、カードを単純に機械や記号のように具体的意味をあてはめ、暗記してしまうことにあります。
この場合は、タロットが象徴であるということの理解がもともと抜け落ちている(そういう説明を受けていない)ことが原因です。
一方、象徴としては理解していても、いざ、実践で読もうとすると、「具体的に」よく読めないというパターンがあります。
大まかにはカードの意味はわかるけれど、それがクライアントへのアドバイスや質問の答えとして具体性に欠けるという状態です。
これは象徴から具体への次元(レベル)変換がうまく行っていないことによります。哲学的に言うと、象徴で見ている時と、具体的に見ている場合とでは、世界が違うのです。
このあたりを詳しく説明すると長くなりますので、とりあえず、ここでは対処方法のひとつをお伝えしておきます。
それは、具体化のため(への変換のため)に言葉や文字を使うということです。一言でいえばイメージの言語化とそのトレーニングです。
言語化はすなわち具体化なのです。私たちは言葉や文字にすることで意思を伝達していますが、それは耳で聞こえたり、目で見えたりすることで、より抽象的なものを具体化しているわけです。
自分の考えを伝えるのに、言葉や文字ががなければ、現実的には伝わりません。
ここから考えると、タロットリーディングというものは、抽象的・直感的世界と具体的・言語的世界との共同作業、統合によって行われるのがわかるでしょう。(特に人にリーディングして伝える場合)
テレパシーのようなものがお互いに使えるのなら、言語化はいらないのかもしれませんし、リーディングにおける具体化に悩むこともないでしょう。
しかし、私たちの世界は言語や文字という具体性を必要としたコミュニケーションによって成立しています。
だから、タロットリーディングにおいては、言語の世界への関心を持ち、それを豊かにする必要があるのです。
ひとつの言葉の複数の言い換えとか表現、これを持つこともそのひとつです。
タロットリーディングと言えば、聞いて話すことという伝達方法が主ですが、そのために、言語や文字というものを、ないがしろにしてしまっている場合があります。
タロットのことをただ話として伝えればいいと思ってしまっているということです。
当然、この状態では、言語化は無意識のうちにやっていますし、ほとんど文字を書くこともないので、文字・言語としても発達・意識することがありません。だから、タロットの情報(リーディング)を具体的にしようとしても、しづらいわけです。
反対に言えば、形としての言語・文字での表現をあえてしていくことにより、タロットからの示唆やイメージを具体化することがやりやすくなるのです。
自分の話す言葉を意識すればよいのですから、文字化しなくても、例えば自分のリーディングを録音して聴くのもよいでしょう。
どんなことを話しているのか、どんな言葉を使っているのか、これを意識するだけでも、かなり変わると思います。一番いいのは、やはり、リーディングを実際に文章化してみることです。
何事も訓練であり、しかもその訓練は何のために行っているのかということをわかっているほうが効果は高いです。(モチベーションも違います)
さらに言えば、現実逃避傾向や現実の苦しみがある人は、抽象的世界に逃げたい気持ちも出ますので、自分が具体的なリーディングがしにくいという方の中には、そういう気質がないかも振り返ってみるとよいでしょう。
抽象的な物言いは、間違いも正解もあやふやな世界と言えますので、自分のリーテイング責任をあやふやにしておきたい人も、具体的リーディングを避けようとします。
まあ、物事にはすべて反転とか逆転の意味もありますので、具体的なリーディングを目指し過ぎると、現実的価値観(今の自分の囚われの世界)の正誤で判断する傾向が強くなり、〇か×か、正しいか正しくないかのジャッジ的読みになって、相手や自分を追い詰めることにもなりかねないので、これはこれで注意が必要です。
ですが、リーディングが具体的にできないというのとは違います。タロットリーダー自身の心理的問題もありますが、技術的問題も大きいのです。
それから、勘違いしている人も結構いますが、タロットリーダーがすべて与えない(読まない)といけないみたいに思っている人もいます。
タロットリーダーは、あくまでタロットの情報を知っているに過ぎず、相談者の具体的なことは聞かないとわかりません。(占いの場合は、聞かずとも当てないといけないこともありますが)
従って、具体的なことは、タロットリーダーが決めるのではなく、クライアント自身が知っていて、クライアントが決めるのです。
「左右に分かれた道の右を選ぶことがよいです、そしてそれは転職を意味します」という具体的な感じではなく、「ふたつの道はあなた自身が知っていることで、それは具体的に、あなた自身で「これとこれのことだ」とわかるはずです、ちなみにこちらの方向はこのような象徴性持ち、あちらの方はこういう象徴性です、タロットは、あなたが本当に進みたい道を示しています・・・」と、抽象的であっても、タロットからの本質を伝えて両者が話し合っていくことで、やがてクライアントは自分の進む「具体的な」道を選ぶことが、自分でできるようになるのです。
つまり、具体的なことはタロットリーダーが読まなくても、クライアントが知っているということなのです。
クライアント・相談者はあなたのしもべでも、命令を聞く人でもないのです。具体的でよいことを言ってあげようと力むと、いつしか、タロットリーダーの立場を忘れ、えらそうな状態になるか、うまく行かないと反対に、自分は無力だと感じて自信を失ってしまうことにもなりかねません。
タロット占いではなく、タロットリーディングであるならば、共同作業であることを、常に意識しておくことです。
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