リーディングの能動・受動

この世界の表現には、大きく分けて、ふたつの方向性があります。

それには様々な言い方があるとは思いますが、シンプルに「能動性」と「受動性」と言っておきます。

タロットを誰かのために読むということにおいても、この能動性と受動性が働きます。

読む、つまりリーディング行為自体は、「読む」わけですから、タロットリーダー(タロットの読み手)の立場からすれば、能動的なものとなります。

しかし、受け手側(相談者・クライアント)は、文字通り、受動的な立場にあります。

マルセイユタロットにおいては、タロットの読み手、タロットリーダーを大アルカナで例えることもありますが、一番多いのは、「斎王」(タロットの通常の名前では「女教皇」とされるカード)かもしれません。

この「斎王」とセット・組になる存在が、「法皇」と考えられています。

タロットリーダーの例え(象徴)としての「斎王」は、確かに本のようなものを開いていますが、言葉や口で伝えている風ではありません。むしろ、黙して語らず、みたいな印象があります。

そういう点では、「斎王」は受動的と言えましょう。仮に「斎王」の手にしている本がタロットであったとしても、それを見ている、受け入れているだけで、その内容を他人に口頭で伝えているようには見えません。

もしかすると、「斎王」は神殿のような場所にいて、そこを訪れた者にだけ、神託のようなものを告げている存在にも見えます。(古代ギリシアなどの、神託の巫女のような存在がイメージされます)

いずれにしても、「斎王」は受動性がメインで、もし「斎王」から何かメッセージがほしければ、彼女に会いに行くという、私たち側からの能動性が必要となります。

一般的に「斎王」のカードが出れば、その絵柄や性格の通り、受動的な態度、受け入れ、学ぶような姿勢が示唆されます。

しかし、今述べたように、「斎王」そのものは受動的であっても、その「斎王」の能力や知恵を引き出すには、自ら(こちら)がアプローチをかけないといけないという意味で、逆に能動性とか行動が要求される意味合いも出るかもしれないのです。

一方、「斎王」と組の人物と考えられる「法皇」においては、その絵柄から見て、口頭や言葉で人に伝えているように見えます。ですから、能動的です。

ただ、これも「斎王」のパターンのように、逆の立場を考えることができます。

「法皇」が“語る人”ならば、その語りを受動的に聞く者たちがいるはずです。事実、「法皇」の絵柄には、そういった弟子とも思える人物が描かれています。

「法皇」は一般的タロット名ては「教皇」と呼ばれることもあり、やはり、タロットは西洋文化・キリスト教の影響もありますから、ローマ法王的教皇として宗教的権威を示す人物像の印象も出ます。

すると、教皇様が語るわけですから、(特に教徒として)いいかげんな気持ちでは聞くわけにはいかず、心して静かに態勢を保っておく必要があるでしょう。いわば、神聖な気持ちで、襟を正して聞くみたいな感じです。

そのようなことが求められているとすれば、「法皇」が出たからと言って、伝える、話すなどの能動的な意味だけではないこともわかり、反対の、受動的な意味も生じるのです。

このように、タロットは当たり前ですが、ひとつの意味だけで固定されるものではなく、また、この世の表現である能動と受動(の読みや意味)が、立場を入れ替えることも含めて、存在するということです。

さらに言えば、カードの読みそのものにおいても、能動と受動はあり、「出たカードのことになる、なっていく」という受動的な読みと、「出たカードのように働きかける、その実現のために動く」という能動的なものがあります。

簡単に言えば「なる」と「する」の違いです。

例えば、「13」という数だけのカードがマルセイユタロットの大アルカナにあります。

このカードは、ほかのタロット種では「死神」という名前がつけられ、絵柄からも怖がられるカードです。

もし、上記のような能動と受動の二種の読みを適用すれば、「死神」となったカードでは、どうしても、その名前と印象に引っ張られ、「なる」、つまり受動的な読みをしがちでしょう。すなわち、何か不吉なことや悪いことが起こるという感じの読みです。(マルセイユタロットの「13」の場合は、そもそも悪い意味で見ることはあまりありませんが)

しかし、「する」という能動性で読めば、ネガティブなことよりも、ポジティブとまで言いませんが、「何かをする」ということで、積極的な読みと意味が見出されるでしょう。

仮に「死神」という名前や意味を踏襲しているカードであっても、不吉から避ける、逃れる、打破する、変えるというような能動的・行動的意味合いを見ることができるかもしれません。

これはどちら(の読み)がいいとか悪いとかを言っているのではなく、能動性・受動性の表現を考慮して、「なる」「する」の二つの見方や、カードの人物から「される」、カード人物が「する」というような二つを思って、幅広い読みを心がけるといいですよというお話です。

今はタロットリーディングの話に絞っていますが、実は、この能動・受動の話は、もっと霊的な観点のことにつながっていきます。

それはまた別の機会にて。

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