三枚引きと時間感覚

タロットの展開法(スプレッド)で、三枚カードを引く技法、いわゆるスリーカードというものがあります。

これは、結構、いろいろな展開法の基本となっているもので、あの、特定の展開形を持たない、カード人物の視線の方向性にカードを並べていくカモワン流でさえ、最初は三枚引きから始まります。

三枚それぞれについては、様々な解釈(所定の意味)が付与されているのですが、時系列的に見れば、たいてい、過去・現在・未来というように意味付けされます。

私たちの通常の時間感覚では、今現在を基準にして、すでに過ぎた時間の過去、いまだ起こっていない時の未来というようにとらえるので、すなわち、現実的時間とは、三つの観点による時間の流れということになります。

従って、カードをそれぞれ過去・現在・未来と振り分ければ、必然的に三枚(三つのパート)となり、それがつまりは、私たちの経験している時間の舞台を表現していることになるわけです。

ですから、三枚引きは、時系列感覚においては、とても現実的であるのです。

しかし、タロットといえば象徴が機能しますので、むしろ、現実を超えたもの、非現実、超現実、見えない領域や通常の認識していない部分を表すことが多いものです。

とすると、三枚引きで時系列的に見る(タロットの)シーンは、現実のようでいて、そうではないところもあるわけです。

ここが非常に重要なポイントで、現実と非現実との境界線にゆらぎが生じ、これにより私たちは、常識的な自分、自我が固まった世界観が崩壊してくる体験を(タロットリーディングで)します。

すると、気がついていなかったこと、表面や現象ではない、本当の問題とか核心にふれていくことにもなります。

ところで、スピリチュアル的によく言われるのが、「今この瞬間に生きる」という戒めのような言葉です。

これは確かに、そうしたほうがよい場合もあるでしょう。私たちは、どこか、今に集中せず、ああでもないこうでもないと考えを巡らせたり、過去や未来のことを心配したりしていて、今をおろそかにしていることがよくあります。

今に集中していれば、余計な考えも少なくなり、エネルギーや意識も現在に収束され、作業効率とか目標達成力も上がるでしょう。

けれども、一方で、今に生きないということもでき、必ずしも、今に集中しなくてもよいケースがあると思っています。

言ってみれば、過去に生きる、未来に生きるという考え(意識)です。

実は、多くの人は、過去や未来に生きる選択をしている場合があります。

さきほどの「今に生きろ」という戒めも、偏って過去とか未来に意識が飛んでいる人を注意しているだけで、過去とか未来を思ってはならないというわけではないのでしょうが、それでも、あえて過去か未来に生きるという方法もありだと述べておきましょう。

まず、現在ではなく、過去とか未来の時間に意識を飛ばすのは、ポジティブや、よいと思う自分になる場合ではないとなりません。

ネガティブな場合は、それに囚われ、まさに時間の虜になってしまいます。過去だと後悔とかトラウマ、未来だと不安とか恐れでイメージしてしまう自分(や状況)の場合です。

よい時間への跳躍とは、平たく言えば、過去の良かった自分に戻る、未来の理想的な自分に浸るというようなものでしょうか。

とは言え、なかなか思いだけでは(イメージ)が難しいので、タロットの図像(絵)を援用するわけです。

さきほど、三枚引きが、過去・現在・未来を示すという解釈があると言いましたが、それを使い、過去に良かった時代があれば、過去のカードから想像し、未来によいものを描きたければ、未来パートのカードのイメージを借りるわけです。

カードを展開する時も、自分がよくなるにはどうすればよいかというテーマで行えば、それ相応のカードをタロットが出してくれるでしょう。

現在は現在で、今の自分をイメージするのに役立ちます。

ここで注意しなければならないのは、カードは正立で出すということです。逆位置を取らないわけですね。逆位置には、どうしてもネガティブなイメージがついてしまうので、正立のみの展開で三枚引くとよいでしょう。

時間の跳躍は、言わば、現実逃避(笑)なのですが、よい現実逃避は、現実を変える(超える)効果があるのです。なぜならば、私たちは今の自分を作りあげている自分(自我)ルールに縛られ、その範囲からなかなか抜け出せないでいるからです。

自分を変えることは現実を変えることにつながります。そのために人は、学んだり、経験したり、運動したり、新しいことに挑戦したりします。それは、すなわち、今の自分を壊す作業でもあるのです。

従って、今ではない過去や未来に飛ぶということは、今を変える可能性があり(過去の認識が変化すれば今も変わります)、現実逃避も悪くはないのです。

また現実逃避は、自己を保護する役割もあり、傷つき、疲れ切った自分を癒す作用が期待できます。

本当は、三枚それぞれを関連させ、現実時間の流れを無視して調和させることで、大きな変革や癒しが起きるのです。

ですから過去だけ、未来だけの跳躍は一時期な避難みたいなもので、そのあとに、三枚を統合させて、新しい意識を作り出す必要があります。

結局、それは「過去」→「今」←「未来」のように、今に集約されてくるものです。その意味では、やはりスピリチュアリストの言われるような、「今に集中」「今に生きる」というのも、理に適ったことになってきます。

今の常識的な自分を変える(超える)には、時間の流れを、過去→現在→未来ではなく、その逆方向や、三つが輪になって回転しているようなイメージを持つことです。「運命の輪」のカード図像にも関係してくることです。

そうすると、無意識の領域では、時間の流れというものがないことに気づくかもしれません。

過去の問題は今の問題であり、未来もまたしかりで、現在に悩みがあれば、実は過去も未来もよいようには見えてきません。

すべてが関連しているのですが、現実時間にいる私たちが実際に行動できるのは今の自分だけなので、三次元的には今の自分の行動と選択が重要になります。

反面、意識(心)の中では、行動ではない部分も効力を持つので、思いとかイメージの力が有効になります。ですから、時間的には、今だけ大事とは限らないのです。

そういうことを、たった三枚でも、タロットからは感じ取ることが可能でしょう。

タロット三枚と時間意識について、タロットを展開しながら考えてみる(体験してみる)のも面白いことです。

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