杖を持って歩く

マルセイユタロットで大アルカナと呼ばれる22枚のカードのうち、手に何かを持っている人物が見られます。

その数は多いと言えるかもしれません。

つまりは、タロットの絵柄では、何らかの道具を持つことが結構示唆されているわけです。

その中でも、やはりのようなものがよく見受けられます。

これは、タロット的にはそのまま「棒」ということもありますが、メジャーな言葉では英語的に「ワンド」と呼称されることが多いです。

そう、結局、小アルカナのパートを入れて構成されるのが「タロット」なのですから、小アルカナ的要素、日本語では剣・杯・杖・玉と私たちマルセイユタロット界隈では訳し、一般的には英語としてソード・カップ・ワンド・コインとそのままで呼ぶ、いわゆる4組の組(スート)のひとつ、杖・ワンドと関係していると見ることができます。

ただし、厳密に言えば、英語においても、そして日本語訳においても、「杖」的なものの種類は異なります。

必ずしも「ワンド」が「杖」を指すのではないのです。

むしろ、「ワンド」というのは、魔法使いの魔法道具のようなもの、まさに魔法の杖であり、日常的にはほぼ見ない杖です。(「杖」にはステッキとかロッドとかメイスとかセプターとか、いろいろあります)

大アルカナと小アルカナの関係で言えば、先述したように、大アルカナで出てくる杖も「ワンド」と呼べるかもしれませんが、大アルカナの絵柄をよく見ると、「ワンド」だけではない杖の形も描かれています。

ここではあくまでマルセイユタロットの絵柄で言いますが、例えば、「愚者」「女帝」「皇帝」「法皇」「戦車」「隠者、」「13」「悪魔」と、多くのカードが、パッと見だけでも、魔法使いの杖「ワンド」ではないことがわかります。

厳密にワンドと呼べるのは、「手品師」と「世界」だけかもしれません。

当然ながら、この二枚がワンドになっている意味があるのですが、それはここでは言及しません。

今回言いたいのは、タロットの杖は、一般的には「ワンド」と呼ばれはしますが、実際にはカードごとに違いがあり、その形、その杖の意味での象徴性を理解しましょうということがひとつです。

そして、もうひとつは、ワンドというより、日本語的な「杖」という意味で見ていくと、タロットは私たちに、杖を持って進んで行くこと、その必要性が場合によってはあることを示しているのではないかということです。

マルセイユタロットの大アルカナは、全体をもって、言わば人間の完成を表すとされています。

とすれば、杖を持つことは、人として当然のこともあるわけで、その成長、完成のためには、杖の助けとか意味が強調され、必要とされることがあるのだと解釈できます。

それには、一枚一枚のそれぞの杖を持つカードの意味を理解することだと言えるのですが、非常にシンプルで、しかしあまり普段は意識しないことで言いますと、「歩く(進む)には、杖がいる」または「杖があっても(持っても)いい」ことを述べたいです。

杖は補助であり、助けであり、自分の力を分散したり、逆に集中させたりしてくれます。

これは道具でもありますが、象徴的に言えば「自分を助けてくれる人や事柄」も表すと言えます。

若い人でも、たとえば 登山などでは杖は必要ですし、年老いたのなら尚更、普段使いにも入用になります。

かっこ悪いからと言って用いないと、大変なことになる場合もありますし、逆に、やたらと杖を不必要なくらい持ち歩き、石橋を叩いて渡り過ぎるような、過度の心配、不安、依存も問題でしょう。いつまでも杖がないと歩けないようでは、独り立ちもできません。

ですから、タロットで、もし杖を持つカードがよく出ている時は、その象徴性に着目し、自分(あるいはクライアント)が、杖を必要としているのか、反対に杖に頼り過ぎていないか、その出方や位置によって判断することで、当人のあり方、これからの行動の仕方も見えてきます。

よくあるのは、真逆になっているケースです。

今は杖が必要なのに杖を捨ててしまっている人、杖はいらないと思い込み、すべて一人で背負い頑張り過ぎている人、逆に、もう杖はいらないのに、幻の杖を頑なに握りしめて離そうとしない人、いつかそれこそ魔法の杖を自分が手にして、成功や勝利を手にしたり、今の問題をあっという間に解決してくれたりすると思っている人です。

あなたは杖を堂々と持っていいという人もいますし、あなたの思うような杖はないですよ、杖がなくても、もう歩けるはずです、という人もいるのです。

とはいえ、新しい段階、未知なるところへ進む時は、杖は必要なことがあります。だからこそ、杖を持つカードは多いわけです。

杖を持つことは恥ではありません。それどころか、杖とともに歩くのが、タロットが示す王道と言えるのです。

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