「隠者」のランプ 内なる光明
マルセイユタロットに、「隠者」というカードがあります。(ほかの一般的なタロットにもたいていあります)
彼は老賢人の姿で描かれており、見えにくいですが、右手にはランタン・ランプを持っています。
ところで、今、クリスマスシーズンということで、町中はイルミネーションがさかんです。
節電が叫ばれる昨今ではありますが、それを忘れたかのように、年々イルミネートする場所や機会が増えている気がします。
その良し悪しについては各人の考え方なので、ここでは取り上げません。でも見ていてきれいですし、ロマンチックな気分になるのはありますね。
余談ですが、ロマンチックというと女性の気分のように思われがちですが、実は私が思うに、男性のほうがロマンチックなことにあこがれる傾向があり、それを現実的に表現しようとします。
女性と男性は心と体が反転構造できているので、表面的にロマンは女性を象徴しますが、逆もまた真なりなのです。このことはまたいつか機会を改めて書かせてもらいましょう。
ともあれ、女性であれ男性であれ、光にある程度魅了されるのは人として当然のこともあります。
原始的なことから考えれば、光は炎であり、太陽であり、火でもあるので、それがあることは自分を守り、食べ物を加工したり、恩恵をもたらせてくれたりする意味でも重要なものだったので、人の記憶に刻み込まれているのかもしれません。
それはよいのですが、外側の光・イルミネーションはあくまで外のものに過ぎません。
本当は内なる光、自分の中に光明があることに気がつく必要があります。
外側の刺激よりも内側の穏やかさ・智慧に気付くと言ってもよいでしょう。それは豊かさにも通じることです。
昔、タロットリーディングで、こんなことがありました。
その人(クライアント)は、「相手(恋人)ともっとよい関係になるためにどうすればよいか?」というテーマで質問をされました。
聞けば、記念日デートの演出(過ごし方・場所)で悩んでいるということでした。
カードを展開してみますと、その中で、鍵となる重要な位置に、「隠者」が登場したのです。
私は全部の展開とポイントである「隠者」を見ていて、彼(隠者)からの声を聴きました。
「内なる光を見よ」と。
これだけでは抽象的な答えですが、クライアントとさらに話すうちに、クライアントの具体的な答えが出てきました。
クライアントは恋人の時間をロマンチックに過ごしたいため、雑誌や人から聞いた情報で、夜景の美しい場所などに行くことを考えていたのてすが、そこは遠い場所で、いろいろと実際的に行くのには問題があるようでした。
そこで「隠者」が出たことで、私はクライアントに訪ねました。
「あなたや相手は、確かにきれいな夜景を見て語り合うとロマンチックでよいのかもしれませんが、本当にそうでしょうか? もしかすると心の奥ではもっと違う過ごし方をお互いに望んでいるのではないですか?」
というように語っていくと、普段なかなか時間の取れない二人にとっては、静かに穏やかな場所で、ともにふれあい、語り合う時間がほしかったことがわかってきました。
つまり、二人には内なる自分たちの光(愛)を見るほうが、「幸せ」と感じられる「とき」だったのです。外のものはあくまで演出道具にしか過ぎず、本質は二人でいること、愛と真実を確かめ合うことでした。
そうすると、夜景は別の機会に、改めて行ってもよいということもわかってきました。
外側のムードやシチュエーションも大切ですが、それぞれの内なるもの、本当の思いや、やすらぎを見る(探求する)ことのほうがもっと重要です。
そこ(内)には、外のイルミネーションより明るく美しく輝く光があることを確認できるでしょう。それこそが叡智であり、愛でもあります。
このことを気づき、お互いにそれを発見した時、自分も相手もそれぞれにとって「光明」となり、愛のオーラで包まれることになるのです。さらには相手は結局自分のことだったと知る時が訪れます。
それゆえ、「隠者」は光(ランプ)を持ち、一人でいながらも、深い体験をしているのです。
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