色々な世界。(ショートストーリー)

今日は物語を書きます。

結論とかはありませんし、内容からくみ取る意味も、読まれた方それぞれで考えていただければ結構です。正解とか間違いはとかもありません。

では始めます。

ある世界(社会)がありました。

この世界では、まだ交通網も発達しておらず、他の地域との交流はほとんどない状態でした。

それでもまれに他地域から旅人などが訪れることもありました。

さて、そこの一部の地域では、「赤い服」を着ている人は悪魔の使いで、悪い人だということが信じられていました。また、あまり色を使わず、「白い服」を着ている人が多く、白が最善だという信仰もありました。

ある時、たまたまよそからの旅行者がこの地域に入りました。

その人は運悪く、「赤い服」を着ていました。そのために皆から罵倒され、泊まるところも提供されないというさんざんな目に遭いました。

旅人は住人から理由を聞いて唖然としました。

そしてあまりに悔しかったので、その地域を去る時、「私の町では赤い服は着た人は天使であり、位も高くて幸せな人だ!」と叫び、出て行きました。

住人は「そんなことあるものか!」と旅人に石を投げたりして、追い打ちをかけました。

ただ、あまりに旅人の反論の声も大きく、必死な形相でしたので、その地域のある若者がふと好奇心を抱き、「悪魔のしもべの言うことだけど、恐いモノ見たさっていうか、なんか興味が湧いてきたな・・」と、密かにその旅人のあとをつけて行きました。

若者は苦労しつつも、何とか旅人のあとを辿ることができ、やかで旅人の住む町に入ることができました。

するとその町の人々は、町に入ってきた若者を見ると、皆逃げて行くではありませんか。まるで恐怖におののいた目をして。

「なぜだろう?」と若者は疑問に思いましたが、そのうち警察のような人たちが現れ、無理矢理彼を連行し、彼は牢獄に入れられてしまいました。

「おい、オレが何をやったというんだ!」彼は叫びます。すると看守は言いました。

「おまえ、白い服着てるだろ」

そういえば、若者は自分の地域からそのまま出てきてしまったので、白い服を着たままでした。

「それが、どうした、オレの地域ではみんな着ているよ、白はすばらしい色なんだ」

しかし看守は、目を見開いて、

「はあ? おまえはバカか。白は罪人の証だ。それ着ているやつは凶悪な犯罪に手を染めたじゃないか」

「それはここのだろ」

「ここもそこもないわ! 外も同じルールに決まっているだろ、掟はどこもおなんなじだから、掟なんだよ!」

彼は必死で「自分たちのところは違う!」と主張しましたが、看守をはじめ、ここの町では誰もまったく聞く耳を持とうとしませんでした。

彼がどうなったのか、それは書かないでおきましょう。

一方、さらに別の者が、この町(白い服が罪人になる町)に入ってきました。

この者はどこで情報を得たのか、よそ者ではありましたが、きちんと「赤い服」を着てやって来ていました。

当然、牢獄にも入れられず、それどころか、たいそうな歓待を受けました。

その後、その者はそこから旅立ち、今度は赤い服が嫌われている町(白い服が最善とされる町)の近くに来ました。

彼は持ち物の中から、白い服を取り出し、それに着替えました。そうして町に入った時、ここでもかなりのよい目をすることができました。

彼は心の中でつぶやきました。

「しめしめ、どの町がどの色を尊敬しているか知れば、楽に旅をできるぞ」

彼はこの世のからくりを明かしたと、得意になりました。

やがてこの彼も、次なる町に入ることになりました。

「ここは確か・・・だったな」 彼は紫の服を着て町に入ります。

案の定、彼は宮殿に招かれ豪勢な接待を受け、あまつさえ「この町の王様になってほしい」と懇願されました。

「王様か、こりゃいいな」「色を支配すればこの世も支配できる」 と彼は喜んで承知しました。

次の日から彼は王様としてこの町を治めることになりました。

「さてと、好きなようにこの町を変えてやるか」 彼は家来を呼びました。

「さて王より命令するぞ、まず・・」と言おうとした時、家来が遮りました。

紫の王様、今日は緑の日なのです、王様は紫のままのご衣装ですので、残念ながら奴隷に格下げです」

「バカな、私はここの王様だぞ、そんなこと通じるか!」 彼は家来に言いました。

しかし家来は、

「この国の法律が作ったもので、絶対です。王様と言えど従わなくてはなりません

「じゃ、着替えるから、許してくれ」 無駄もしれないと思いつつ、彼は言ってみました。

すると家来は、

「いいですよ」 とあっさり了解してしまいました。

「えっ、いいのか」 彼はほっとしました。が、次なる疑問も湧いてきました。

「ところでもしかして、明日になると、いい色が変わるのか?」

「その通りでございます」

「どうやって決まるのだ?」

「私どもも知りません。神様がお示しくださるのです」

「神とな。それはどのように?」

「朝になればインスピレーションが、巫女に降りることになっています」

「巫女? 信用できるのか?」

「巫女を疑うことは、神を疑うことです」

「わ、わかった、巫女の示す色が神意なのだな」

「はい、左様でございます。ところで王様は緑にお着替えされると、本日の奴隷は免れますが、明日お召しになる服が巫女の示される色でなかった場合、王様としての効力を失い、死刑となります」

「えっー!なんだって?!」

「一回目は赦されるのですが、二回間違うと死刑なのです それが王様という特別な地位にあられるお方の権利でもあり義務なのです。あなた様は一回間違えましたので、もう一回で・・・」

嬉しさから一転し、王様となった彼は、新しい日を迎えることが恐怖以外何物でもなくなりました。

彼の命はあと何日続くでしょうか。。。それはまさに、「神のみぞ知る」なのでした。 (終わり)

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