タロットから、「見る」ことを考える。

これは学習した内容や流派にもよりますが、マルセイユタロットのリーディングでは、カードに描かれている人物の視線を重視します。

ほかのタロット種でもできないことはないでしょうが、マルセイユ版における人物の視線は、なかなかに鋭く、どこを向いているのか、一目瞭然のところがあります。

人が誰かや何かに関心のある時、そちらの方向に向くのは自然なことです。カードの人物を人間のように見れば、自分や人の考えている内容・興味ごとが、カードで象徴されるという見方になってきます。

ここで改めて、見ること、視点というものについて考えてみたいと思います。

私たちは、全部を見ている、全部を見ることができるように思っていても、実はほんの一部、ひとつの方向性しか見ていないのがわかります。

当たり前ですが、人の目はふたつあり、しかしカメレオンのように、別々に動かして見ることはできません。ふたつでひとつであり、結局のところ、視点の定点はひとつと言えます。

しかも、前方向か、頭(首)を動かした方向にしか見ることができず、後方、その他視野外の部分は、いつも見逃していることになります。

単純に言って、後側は鏡や機械でもない限り、自力では見えないのです。

もちろん他の人が見ていてくれれば、見えないところもわかります。

しかし、自分一人だけの場合、果たして、後側など見えないところは、本当に自分が想像しているような世界(あると思っている世界)であるのか、証明することは難しいものです。

もしかすると、前方の、見ている世界しか存在していないかもしれず、後はイメージの世界として、別世界(あなたの想像の世界)の可能性もあるのです。それどころか、何もない、まだ現実として固まっていない状態かもしれません。(笑)

こう考えると、私たちは視線を向けた瞬間に、あるいは見たその瞬間(そのわずかの直前)に、一人一人世界を創造しているとも言え、今自分の見ている側が現実(になった世界)で、見ることのできない側がイメージや空想、まだ未顕現の裏の世界かもしれません。

しかし、どちら(現実かイメージか)にしても、創造されていることには変わりありません。

つまり、見ることは創造につながるということです。逆にい言えば、見ないと創造されません。

これはマルセイユタロット的には、「女帝」と「世界」の関連の考察とあいまって、私たちの認識というシステムにおいて、極めて重要な示唆を与えるものだと思います。

ここでは、「見る」というものが、実際に目で見ることだけではなく、心の目のようなもので見る(観る)ということまで考慮すると、創造の源泉が、プラトンの言うイデアというものに近いことがわかってきます。

この話はちょっとややこしいので、このあたりでやめまますが、言いたいことは、見る・観るという意識が創造性において大切だということです。

さて、「視点」で言えば、いわば自分視点と他人視点という二つにわけることができます。

自分視点は、先述したように限界があり、自分では見ることのできない方向を見ようとすれば、他人の視点か機械を利用しないとなりません。

しかし、他人とて人間ですから、これも限界があります。そう、一人一人では常に視点や視野に限界があるのです。見えないところ、わからないところがあるということです。

しかし、ほかの人と協力すれば、全方位を見ることもできます。皆で鏡役になるということですね。

これがマルセイユタロットでいえば、「節制」(の目)とも関係して来ます。「節制」には互助的な救済の意味があり、協力的な多数の視点のことも考えられるからです。

私たちの視線は、一人一人では限界があり、見方も偏りがちですが、他者と協力しあえば、多くのことを見ることができ、知ることもできます。

カメラとモニターを使えば、確かに一人でも様々な方向を見ることはできますが、一人ですべてをチェックするのは大変なことです。

一人でできないこと、難しいこと、わからないことは協力する、助けてもらう、教え合う、そういうことが視点の問題から見ても、まさに「見えて」くるのです。

ただし、マルセイユタロット(カモワン版)の「悪魔」にも、たくさんの目がついているように、人の視線は気に過ぎると自分を縛ることになり、また監視社会のように、あまりに見られすぎるのも、牢獄のような状態となって息苦しいことになります。

ところで他者の視点を取り入れるだけではなく、自分単独でも、視点を変えることの重要性は、マルセイユタロットの「吊るし」の逆さま姿勢に描写されているところです。

いつもの決まった席や立ち位置を、何気なく変えてみる(見る)だけで、あなたの世界は、意外にも大きく変わるものです。

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