「節制」と「星」を例にしたリーディング
マルセイユタロットの「節制」と「星」は似ているカードです。
一番の共通点は、女性と思われる人物がいて、ともに水瓶(壷)を持っているところでしょう。
しかし、注意して見ると、同じ水瓶でも、微妙に違いがありますし、何より、「節制」と「星」とでは、水瓶から流れている(流されている)液体の方向性(流出の仕方)が異なります。
「節制」のほうは、ふたつの水瓶の液体を混ぜ合わせているかのように見え、一方、「星」は、それぞれの水瓶から別々の液体をただ流しているだけに感じられます。
つまり、水瓶から出た液体が、水瓶の間から出ないのか、出ているか(内に注がれているか、外に注がれているか)の違いと言えます。
タロットは象徴として読むことが基本です。
こうした水瓶の扱い、そこから出ている液体の流れの方向性などを「象徴」として考え、実際の事柄に適用していくことで、タロットリーディングが成立します。
ということは、単純に同じ図柄だからといって、まったく同じことを読むことにはならないわけです。
「節制」と「星」はこのようによく似ているだけに、逆に違いが明確にもなってくるよい例なのです。
例えば、この液体をお金の流れ、扱いだとしてみましょう。
「節制」ではふたつの水瓶の間を行ったり来たりしています。ということは、お金を一方から一方へ移し替えているとも言えますし、収支や一定(量)のお金を、うまくやり繰りしているとも考えられます。そもそも「節制」という名前も、この液体の扱いから出ているわけで、お金だったら、まさに節約している状態と言えます。
では「星」の場合はどうでしょうか。
「星」は、かなりの勢いともいえる液体の流れがあり、水瓶に戻ってきている様子はありません。ということは、お金が支出のみというようにも見えます。支出のみでも困らないというのは、どんな状況でしょうか? ちょっと想像してみるとよいでしょう。
例えば、見える形(描写として液体があること)では確かに支出なのですが、それくらい出せるほどの、どこかに(わからないところに)お金がある(収入がある)とも考えられます。
それは見えないエネルギーや自分の持つ情報のようなものが、「星」の彼女の場合、すでにお金に変換できる状態にまで達している(知識や技術をお金に換える方法を熟知している)とも想像できますし、もしかすると、彼女自身のお金ではないものが、誰かから供給されている可能性もあります。
ともかくも、「星」の場合は、節約する必要はなく、ふんだんにお金を出せるわけです。とすると、お金の使い方・扱い方、もっと言うとお金に対する考え方そのものにも、「節制」と「星」とではかなり違いが出ることになります。
では、人間のサービスやサポートということで見るとどうでしょうか?
「節制」はふたつの水瓶と液体を交互に混ぜ合わせているように見えます。ということは、人との交流を意識していると見てもよいわけです。ここから、サポートしあう、助け合うというイメージが出ますし、ふたつの水瓶の間ということから、その助け合いの範囲は限定的とも予想できます。
「節制」のカードが出る時、それは特定の人にサポートしたり、逆にサポートしてもらったりという、そのポイントが絞られるということが、ひとつには読めてきます。
これが「星」の場合は、だだ流れに近い状態ですから、対象範囲はかなり広い、非限定的(限定があるとすれば、液体の広がる範囲)と言えるかもしれません。
また「星」は、ふたつの水瓶からの液体の流れ方も、マルセイユ版では異なって描かれているものが多く(色の違いの場合もあり)、つまりは、別々のサポートの方法、技術があるとも考えられます。言ってみれば、表からのものと裏からのものとの両方の手厚いサポートがあるわけです。
しかも「星」は、ひとりで行っているということが重要で、助け合いの「合い」ではなく、しゃれではありませんが(笑)、「助けが愛」になっているとも言え、独力で大きな愛のサポートを、広範囲で行えるものがあると言うわけです。
もう少し狭く考えたとしても、少なくとも、特定の人に対してではなく、複数の人に共通のサポート方法が考えられると解釈することができるのです。
「節制」はそれぞれ個人(個別)に調整・適合したサポートであり、「星」は共通で普遍的なサポートと言ってもよいでしょう。(ただし、「象徴」ですから、必ずしもそう決まるわけではありません)
ですから、あなたが「節制」を引くのか、「星」を引くのかによって、関わる人間の範囲、サポートの求め方、提供の方法なども、その示唆するところが変わってきますから、きちんとカードの絵柄を見ていないといけないわけです。
こうした絵柄の細かなところを観察して比較していくことで、タロットからのメッセージを明瞭に読み取るのが、マルセイユ版を使ったリーディングの特徴と言えます。
これにさらに、一枚全体性の象徴、絵柄のほかの部分の象徴、展開されたほかのカードとの関連もありますから、情報量はかなり多くなるのです。
まるでそれぞれのカードの絵柄の鍵をヒントに、あるストーリーを読み解く謎解きに近く、そういうものが好きな人には、とても面白く感じられることでしょう。
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