「力」のカード、ライオン。
今日、ふと意識に上がってきたのは「力」のカードでした。
「力」のカードと言えば、女性とライオンという、なかなかインパクトある構図の絵です。
さて、皆さんは、女性とライオン、どちらに目が行きますか?
それによって、自分の状態・立場というものがわかるかもしれません。
「動物と人との構図」では、ほかに「愚者」も、犬と人物という関係で描かれています。
「愚者」のほうは、犬が人物に対して、何か関わり合いを積極的に持とうという意図が感じられます。ちょっかいを出しているとも言えますし、警告とも取れますし、愛嬌とも言える様子のしぐさで、犬側から人物への働きかけが明確です。
一方、「力」は、ライオンが受動的に、ただ女性の意のままにされていると言いますか、ライオンの関わりの意志と無関係のようにも見えます。しかし、「愚者」の犬の関係と比べると、両者は一体化している感じが強くなっています。
マルセイユタロットでは、「力」の女性とライオンは、ライオンが女性の中に入り込んでいるかのような一体感があるのです。
「愚者」の犬が、仮に、人物の旅に一緒について行こうとして、ある意味、愚者を案内したり、守ったりしているように見えるのですが、「力」のライオンでは、すでにすべて、女性に明け渡しているかのように、ライオンの主体性は失われているように受け取れます。
このことから、「力」(のカード)は、ある種の統合を示していると考えられます。
このライオンと女性は何を意味するのか、講義では詳しくお話していますが、ここでは、また違った見方で、特にライオンについてふれてみたいと思います。
ライオンは、タロットの大アルカナの図では、ほかにも登場しています。それは「世界」のカードに現れています。
この「世界」のライオンと、「力」のライオンは対になっており、ある並べ方をしますと、「力」のライオンが「世界」のライオンのほうに向いているのがわかります。
このライオンたちが何を表すのかは、もはや、ふたつのライオンの絵を見れば一目瞭然なのですが、口を開けている「力」のライオンと、口を閉じている「世界」のライオンとで、日本人には神社の狛犬でおなじみと言えばわかると思います。(詳しくは、あえて言いません)
ライオンは動物であり、百獣の王と呼ばれるほどのまさにパワーと威厳を持ちます。
おそらく、皆さんのイメージからしても、この「力」のライオンの絵を見れば、たてがみのある雄ライオンなので、男性的で力強い、時に狂暴なものも思い浮かべるかもしれません。
それをまるで猫のように手懐けているのが女性ですから、彼女は女性的な、何かの力を持っていることがわかります。
日本語では、「力」と書けば、英語のパワーのような感じがしますが、「力」というのは、ただの物理的な力だけではなく、「精神的な力」とか「能力」「経済力」「人間力」などと、熟語的に用いれば、様々な「ちから」に例えられますので、一言で「力」と言っても、やはり(物理的な)パワーだけではないのです。
明らかに、ライオンの力と女性の力は、ここでは別種だと見ることができますが、先にも述べたように、女性とライオンは一心同体のようにも描かれていますので、すでに、このカードににおいては、ひとつの「力」として統合されているものと推測できます。
逆に言うと、ひとつの大きな力は、ふたつの別種のエネルギー、質の違う力によってもたらされると言えます。
ひとつだけの力では、おそらく限定的な範囲でしか作用しないものと考えられます。(そのことは、数で言えば、「力」までのカードたちや、「運命の輪」の動物たちによっても示されています)
ところで、自分にとってのライオンは何になるのか、もう少し具体的に考えるてみるのも面白いです、
タロットを使いこなすには、元型とも言える象徴の基本的な意味を知る必要があります。この「力」のライオンの場合、ライオンの本質的な象徴を知るということです。
しかし、それは元型的であるので、全員に当てはまったり、原理としては言えることだったりするのですが、個人の象徴として、より具体的な次元に降下させていきますと、ライオンの意味は各人で異なってくるようになります。タロットリーディングのシステムと同じことです。
その時、本来は知っておかねばならない元型的な意味も、象徴図の印象からだけでも、想像することが可能になって、そのイメージしたもの、思いついたものが、意外に個人には相当していることがあるのです。
簡単に言えは、絵を見て浮かんだものが正解だったり、問題や課題の核心をついていたりすることがあるわけです。
ということで、たとえ、カードの意味を知らなくても、例えば、「力」では、絵を見て、ライオンの意味を個人的に想起してみるのもよいのです。
あなたには、ライオン(と女性)は何に見えますか?
まず、いきなり答えや具体的なことを出そうとしなくてよいです。
絵はどのような構図や状態になっているのか、それらを観察することです。
「力」だと、女性がライオンを操っている、押さえているようにも見えますし、ライオンは自ら、女性に身をゆだねているようにも見えます。
また、ライオンは口を開けて、そこに女性が手を入れているわけですから、ペットを飼われている人ならわかるように、これはよほどの安心とか信頼がないと、動物のほうがそのようなことはさせないと思いますし、人間も、噛まない、大丈夫だという確信がなければできないことです。
あなたが女性の場合は、「力」の女性側の立場で見ることができるでしょうが(反対に、男性だったら、ライオン側で見ることができます)、性別に限らず、自分がライオンだったら、女性だったら・・・と想像すると、その立場における何かが見えてくるかもしれません。
そして、女性とライオンの関係性、力のかけ方、かけられ方を、ポジティブに見ることもできますし、ネガティブ(問題性)として見ることも可能です。
自分が力を入れ過ぎていることもあれば、放置していたり、依存したりしていることもあるかもしれませんし、誰かから強制的にさせられていたり、逆に、この人のおかげで、乗り切れそうだと、勇気や自信をもらえているかもしれません。
ライオンは動物として、強烈な力を持ちますが、それだけにもし、手懐けることができれば、かなりの(新たな)力となって、自分のものとなります。
ライオンに同じエネルギー、同じようなパワーで立ち向かっていっても、おそらくコントロールすること、勝つことは難しいでしょう。
サーカスやショーでの猛獣使いは、鞭を用いていますが、鞭があるから猛獣が人に従っているわけではありません。従う理由がすでに形成されているから、あのようになるのです。鞭は単なる合図の道具に過ぎません。
サーカスやショーと言えば、「手品師」もそれらしい人物として関係しますし、「吊るし」もいかにもサーカスぽいですよね。
余談ですが、タロットに造詣が深くて、マルセイユタロットをフィリップ・カモワン氏と共同で復刻させた映画監督のアレハンドロ・ホドロフスキー氏は、幼少の頃、サーカスと関わることがあったため、サーカスぽい絵柄のあるタロットに、昔から心魅かれる理由のひとつにもなっていたのだと思います。
それはさておき、ライオンには、理由はここでは述べませんが、古代より、象徴的に太陽の意味もありました。
占星術的には、太陽の巡りは、黄道十二宮、星座(サイン)と関係し、女性(乙女)とライオン(獅子)も星座にはあります。
ただ、私は、ライオンと女性の関係が、通常の人間を超えた人物と、旧太陽系から新太陽系への変換を示しているようにも考えています。
すると、やはり、「太陽」のカードとも関連してくるでしょう。太陽とか惑星、宇宙を、ただの物質、今の天文学的な見方をしていては、このあたりは全くわからなくなります。というより、常識はずれで迷信みたいな感じに思えるでしょう。
ですが、太陽こそ、太陽系を作っているように、私たちの意識の中心であり、もっと言えば、意識そのものと言ってもよいのかもしれないのです。ただし、物質的な意識が中心だと、今見ているような、化学的反応の燃える星みたいなものに見えます。
古代では、太陽にはいろいろな見方があり、太陽信仰にもなっていましたが、熱くない太陽もあるとされています。もちろんエネルギーの大きさや供給する大元としての意味はありますが。
太陽がライオンで表される時、野蛮で肉食のライオンの動物の姿と、百獣の王としてすべてに君臨する威厳ある存在、何者にも屈しない(影響を受けない存在)としての部分がともに示唆され、私たちは前者の部分をよい意味で征服した時、太陽としてのライオンは、新たな姿を見せるのだと想像されます。(錬金術的な意味もライオンと太陽にありますが)
要するに、私たちの意識が変わる時、ライオンを取り込み、新たな意識の人類(人間)として、再生(次元自体が変容)するということです。
それは言い換えれば、私たちの常識としての宇宙が変わることを意味します。
丹念に「力」のカードを見ていくと、いろいろなことが隠されているのがわかりますし、それを読み解いていくと、結局、私たちの進化や成長(の方法、方向性)を示唆しているように思います。これはマルセイユタロットのどのカードにも言えることです。
ライオン(と女性)は、このような大きなものの象徴でもありますし、さきほど述べたように、自分にとって具体的なものや、何か(あるいは誰か)との関係性も示すことがあるのです。
この、ミクロからマクロ、マクロからマクロ、抽象から具体、具体から抽象の世界を、縦横無尽に旅させてくれるのが、タロットのだいご味と言えるでしょう。
さあ、あなたも自分のライオンを手懐け、あるいは、ライオンとして、この女性に象徴されるものに委ね、大きな力を発揮いたしましょう。
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