「月」のカードと夢の話

人間、をかなえたいと思うものです。

若い人は特に夢があり、それも大きいものを持っていることでしょう。

年を経てきた者は、これに対して、「現実を知りなさい」とか、「そんな絵空事」とか言って、若い人の夢を否定する人もいます。

かつての自分がそうであったのに...です。でも、だからこそ、夢を追い続けて、失敗した人生にしたくないという老婆心的な助言の意味もあるでしょうし、実は、若い頃の昔の自分自身に対して言いたいということもあるのかもしれません。

さて、タロット的を考えてみましょう。

日本語で「夢」という言葉には、大きくわけてふたつあります。

ひとつは、今述べたような、かなえたい希望や願望のようなもの。もうひとつは、私たちが眠っている時に見ている映像や幻のようなものです。

どちらも「夢」という言葉を使うということは、本質的に、ふたつは同じものではないかということが考えられます。

マルセイユタロット的には、おそらく「月」のカードと関係するのではないかと思います。

「月」(のカード)は、夢の両方を表し、実現したいイメージということもあれば、睡眠時に見る混沌としたイメージという印象もあります。

実際、「月」には、水滴が月に向かって吸い寄せられているかのように描かれているので、それが夢のエネルギーだとすれば、願望の夢も、夜見る夢も、等しく月に向かうと想像されます。

いや、逆に考えることもできるでしょう。「月」というものから降り注ぐエネルギーが、夢という形(イメージ)を与えていると。

水滴は普通、下に落ちますので、当然、下部が膨らんでいるようになります。しかし、もし水滴というよりも、何か矢のようなエネルギーであれば、むしろ向かう先のほうが尖り、やがて相手に刺さるようにもなるでしょう。

こう考えると、マルセイユタロットの「月」の水滴は、月の毛髪・触覚のようなものが地上に発射されている図と見ることもできます。

ということで、どうやら、夢は月という存在(これは天体的な月というよりも、象徴的な月の意味)から、私たちに投げ与えられたもののようであり、月によって私たちは動かされている(踊らされている)ところもあるのかもしれません。

ただ、それは現実の世界を面白くする効果もあり、夢を思い描くことて、私たちはまさに希望を持ち、願いをもって活動し、生きることができます。人生に彩りを与えると言ってもいいですし、生きる原動力にもなるでしょう。

一方、夢破れることも多く、望みとしての夢はなかなか叶いにくいものです。

しかしそれは、月から見れば、面白いことなのかもしれないのです。

個人の人間の範囲では、夢がかなわない、夢が破れることは悲しいことですが、夢を持ってあれこれ思い、動き、それが実現しようがしまいが、月の視点からは関係なく、上から眺めていると、そうした過程こそが楽しい・面白いみたいな感覚です。

心や感情の操作と言いますか、その波を作り上げているという感じでしょうか。

でも、だからこそ、私たちは喜怒哀楽を持ち、現象について色々と感じることができ、この世は、はかなくもあるし、楽しくもある(エンターテイメント性がある)と見ることができます。

しかし、現実に生きている昼間の時間では、夢や感情を持って、いろいろと考え、思いながら生活していますので、それがずっと続くと身が持たないことになるのでしょう。

従って、睡眠時は、別の「夢」を見ることによって、心身が整われ、再び起きている時間に夢を追うこと、感情の起伏をもって生活することができるようにされているのだと考えられます。

睡眠時の夢は時間軸もバラバラで、混沌としたものが多いですが、逆説的にはなりますが、混沌としたものだからこそも混乱したものを整理することできるのだと想像します。

マルセイユタロットの「月」の数は18で、まだ大アルカナでは、残り三つ、19「太陽」、20「審判」、21「世界」が残されています。

ですから、この夢(月)の(操作の)世界では完結せず、究極的には、ここから脱出する必要も、グノーシス的にはあると言えます。

とはいえ、夢のエネルギーの力も現実には必要で、私たちが人間であることの原動力のひとつとなっていることも間違いないでしょう。

夢なき生活は味気ないものですし、また夢(特に幻想)に溺れていては、現実性を失います。

ところが、「月」のカードを見ていると、「夢うつつ」と言われるように、夢と現実は同じで、ただ作用が違うだけであり、夢を見ることは、実は現実を活かすことと同意義になる次元があるのだということがわかってきます。

うまく「月」を理解し、「月」を能動的に見ることが重要です。その意味では、「月」は「悪魔」のカードとよく似ていますし、「運命の輪」とも強く関係してくると言えましょう。

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