リーディング技術・内容

コンビネーションでカードを読む

私は本来、教えることが好きな性格です。

そして人間、だいたいは、その逆にも関心があり、つまり、私は教えられること、学ぶのも好きです。

今何かを学んでいても、いつかは人にそれを教えていく、伝えていくという立場になる人もいます。全員と言いませんが、学ぶのが好きな人は、いつか自分が逆の立場になって、学ばせて行くほうに変わって、生きがいを持つ方もいるでしょう。

結局、学びとは、受け入れだけではなく、外に実践したり、表現したりしていくことでもあるのです。

さて、今日はそんな教え好きな私のおせっかい(苦笑)で、独学でタロット、特にマルセイユタロットを学んでいる方に、カードをコンビネーション(複合)させてリーディングするやり方の一例をお伝えしたいと思います。

コンビネーションと言えば、一枚だけでは無論ダメですので、最低二枚から始めます。それが基礎と言ってもよいでしょう。

では、わかりやすく、ここに「運命の輪」と「戦車」を置きます。

タロットは、絵そのものから意味を推測することが普通ですが、それでも、おおよその意味を覚えてしまったあとでは、どうしても、知識としての意味をあてはめようとしてしまう傾向があります。

それはそれで悪くはないのてすが、意味(言葉)を探そうとするよりも、図像の運動性や方向性、エネルギーに注目して読むと、タロットが伝えようしていることがわかりやすくなります。

上記、「運命の輪」と「戦車」を見てみましょう。

「運命の輪」はその名の通り、回転する輪が図像の中心にあります。一方、「戦車」も、車輪のついた(車輪自体はちぐはぐな感じですが)のようなものがあり、その中には勇ましい感じで将軍的人物が描かれています。

ここから見て、ともに何か動いている雰囲気が伝わってくるでしょう。

これが、例えば、「運命の輪」一枚だけだったら、そして、「運命の輪」の意味を言葉として出そうとこだわり過ぎてしまったら、「運命が回っている・・・どんな意味だろう? 確か時間とかタイミングという意味もあったな、ということはタイミングを計れということか、いやいやタイミングと言っても、チャンスを今つかまなければならないタイミングなのか、もう少し待ったほうがいいというタイミングなのか・・・うーむ、これって、今動くのがよいのか?待ったほうがいいのか? どっちなんだ・・・」などと、頭の中でいろいろと逡巡させてしまうわけです。

コンビネーション、二枚以上引いて読むことの利点は、こうした一枚だけでは、どちらともつかないような、判断に困ることようなものに対して、別のタロットを引くことで、方向性や運動性を補足していく(傾向をはっきりさせる)ところがあるのです。

「運命の輪」だけではどちらともつかなかったものが、「戦車」を引いたことで、回転が運動的に働き、積極性が推測てきます。つまり、動かないよりも、明らかに動いて前進する感じが強くなります。

ただ、「運命の輪」が出たことの意味も考え、闇雲に動くわけではなく、まさにタイミングを計って、ここぞという時にギアを入れて前進するみたいなニュアンスともなってきます。

それでも、Goという感じは「戦車」によって強化されているので、そこから「運命の輪」を見れば、この「運命の輪」がチャンス的な意味になることがわかります。

あとで、覚えたカードの意味を照らし合わせると、さらにこのことがしっくりきます。

すなわち、「戦車」が成功や達成、勝利を表すとすれば、まさに成功の時が来た、勝利のタイミングは今、というように読めることが可能です。この読み方は意味を言葉として表した場合のコンビネーション的な読みです。

最初からこれをしてもよいのですが、やはり、出ている複数枚のカードの図像を見て、その運動性、エネルギー性、方向性の共通点や、逆に異質点を見ながら、タロット全体としての意味を汲んだり、推測したりしてから、言葉としての意味や文章を作り上げるやり方のほうが、案外、タロットからのメッセージ、本質が読みやすいです。

もし、「運命の輪」の横に、「戦車」ではなく、「吊るし」が出たとすれば、「吊るし」は運動性がストップしている傾向が強いですので、「運命の輪」も、たとえ回転していても、その回りつづける状態を観察するような、輪の上にいる動物(スフィンクス)の視点で見るほうが、この場合はよいことがわかります。

タロットの時系列的解釈をすると、一般的に左から右に移ると読むことができますから、「運命の輪」が「戦車」に移行するのか、「吊るし」に行きつくのかによって、二枚を複合した読み方、ニュアンスは変わってくると思います

例えば、好調、あるいは波乱を呼んだ波(運命の回転)も、「吊るし」では収束に向かうとも見えますし、「戦車」ではさらに加速させられる感じもします。

あと、これはちょっと特殊な見方ですが、「運命の輪」と「戦車」の場合、「戦車」の人物が、まるで取っ手のある運命の輪を回しているように見えますから、「戦車」としての人物や物事自体が、まさに運命を変える、変えていく(ことができる)というように、二枚を複合すると見えてきて、結局、「戦車」がもし自分であるならば、自分で運をつかむ、運命を動かすみたいな意味合いにもなってくるかもしれません。

いずれにしましても、いきなり言葉の意味をタロットカードから出して(読んで)、ああでもないこうでもないと悩むよりも、複数(以上)枚数引いたカードの全体傾向を観察し、特に運動性や方向性に着目して、どう動けばよいのか、待てばよいのかを推察して判断するほうが、読みが早いこともあるのです。

あるコツとしては、自分自身がタロットの(展開されているタロットの画像の世界)中に入るかのように見て(自分が小人みたいになっていると想像してもよいです)、例えば、「運命の輪」に乗っている自分、「戦車」に乗っている自分、その二枚を移動している自分をイメージし、感覚的に見ると、カードの言わんとする物語性がつかめてきます。

あれこれカードに乗っているうちに(笑)、自分の経験していることの意味がつかめてくるような感覚です。

そして乗るカードの順番が違えば、またニュアンスも異なってきて、その中で、自分(クライアント)の質問にびったりと思える物語性が、示唆されてくるのです。

タロットに限らずですが、「これだけでわからなければ、あれも出してみる」「この方法(ルート)でうまく行かないのなら、別の方法(ルート)を試してみる」というようにすれば、リーディング時に困っても、打開策は出ます。

タロットリーディングは、思考と感情、様々な感覚器官を使って、問題解決やアイデアを練るための一種のトレーニングをしているようなものです。

それには本当に、タロットの世界に遊ぶような、一言でいえは「愚者」となる感覚(姿勢)も重要なのです。

難しく、まじめに考え過ぎていても(これは私自身がそういう傾向にありましたが)、リーディングはスムースにできません。

正しいやり方にこだわるよりも、情報を導ける様々な方法を試すことです。

よいか悪いか、合っているか合っていないかなどは、あとから思考で判断すればよいだけで、まずは、いろいろなルートからタロットによる智慧や情報を引き出すことをやってみましょう。


タロットと自分の情報

これはタロットの活用にも関係することですが、タロットの図柄を見て、どう思い、何を感じるかということは、タロットリーディングにおいても基本のように考えらています。

しかし、タロットカードを見た時の感じ方・思い方というのは、人によってまちまちでしょうし、どれをもって正しい情報と取るのか、または、たくさん浮かんできた中で、何を今は(リーディングの判断として)選択すべきかは、なかなかわかりづらいものです。

ここのところで、多くの人が迷い、時にはタロットを教える先生によっても、いろいろな意見が出てしまう部分なのです。

この点については、私の講座で整理して説明しており、その考え方は、おそらくどこにおいても言われていないもので、私オリジナルの方法とも言えます。

ここで詳しく書いてしまうと、せっかく講座を受けていただいてる方には不公平になるのと、一記事で説明するのは、とうていしきれないので、今回は別の観点から少し、タロットからの情報(の扱い)についてふれてみます。

そして、いきなり結論みたいになりますが、実は、タロットからの情報の迷いをすっきりさせるには、質問者側がタロットへの問いを絞ることで、かなり改善されるのです。

例えば、「太陽」というカード、一枚が出たとします。

質問が何もなければ、人によって、いろいろなことが思い浮かんでくるでしょう。あるいは、イメージから言語化することが、まだ苦手な人には(これは訓練すれば誰でもできるようになります)、言葉としては何も出ない場合もあるかもしれません。

けれども、ほんどんの人は何かしら感じるものはあるはずで、それを言葉にするかしないか(できるかできないか)の違いくらいで、イメージや感覚の言語化さえできれば、スムースに多くの言葉が出てくるはずです。

単に太陽を見て、温かい、熱いとかでもいいですし、ふたりの人物を見て、仲良しとか、友情とかそんなものからでもいいのです。

ところが、先述したように、たくさんの言葉とか意味が思い浮かんでも、その選択に迷うという段階が出てきます。

この「太陽」というカード一枚だけをとっても、カード上部の顔がついている太陽そのものからの情報と、下部の裸のふたりの人物の様子からの情報と、大きくわけて二つあり、それらは描かれているもの自体が違うわけですから、別々のものが言葉・情報として出てくるのは当然と言えます。

“太陽”のイメージから現れた情報なのか、“二人組”の絵柄から出てきた情報なのか、それだけでも情報の選択の幅というか、振り子はかなり揺れるかもしれません。

ですが、ここで質問側の情報を重ねて行けば、その選択も絞られてくるのです。振り子の幅が狭まると言ってもよいでしょう。

例えば、「旅行を計画したいが、誰と行けばよいか?」という質問の場合に、この「太陽」のカードを見ると、いかがでしょうか?

この質問は、「誰と」にフォーカスしているものであり、それは人物であるので、当たり前のように、人物に関する情報を探そうとするでしょう。

すると、さきほど述べたように、「太陽」には、ふたりの人物が描かれている部分があります。

ということは、この部分に注目すればよく(自然にそうなると思いますが)、「太陽」のふたりの人物の様子から、二人で行っても楽しい人、意見や性格の合う人、仲の良い友人、手を指し伸ばせば(誘いをすれば)乗ってくれる人というような「人物」が浮かんで来るでしょう。

この場合、親と行くとか、一人旅というイメージ・情報は取りにくいと思います。(ただし、親でもまるで友人同士みたいな関係の人には、あてはまるかもしれませんが)

一方、同じ旅行の質問でも、「どんなところへ行けばよいのか?」というものならば、ふたりの人物から想像することもできるかもしれませんが(例えば、裸なので温泉とかビーチなどのリゾート地とか)、どちらかといえば二人組より太陽のほうに目が行き、太陽がさんさんと輝く場所、端的にそのまま太陽のような明るい場所、解放的なところ、元気がもらえるような場所というようなイメージが出てくると思います。

人によっては、輝く太陽からイメージされる場所は、具体的には異なるでしょうが、「月」からイメージされる場所とか、「隠者」からイメージされる場所とは明らかに違うはずで、選択にそんなに迷うことはないと思います。

このように、質問を絞ったり、具体的にしたりすることで、カードの図柄でも、注目すべき点が明確になり、回答も導きやすくなるのです。

逆にいうと、抽象的な質問では、たとえ一枚と言えども、たくさんのイメージ、情報がカードから浮かんできたものの、その選択に悩んでしまうことになります。(ただし、抽象的な質問をあえてする方法もあります)

また情報としても、直感性やインスピーション系のものと、思考・論理・知識系のものとがあり、前者は個人によっても差が大きく、後者はいわゆる知識として覚えた「カードの意味」が大半なので普遍的とも言えるのですが、その両者のギャップ・葛藤(どちらがこの場合正しいのかとか、どの情報を選択すべきかということ)にまた悩むようになります。

カードを勉強すればするほど解釈がわからなくなったり、リーディングに迷いが出たりするのも、こうした理由(知識が増えて取れる情報も多くなったものの、その判断と選択に逆に迷うようになる)によります。

かえって勉強していなかった頃のほうが、すんなり読めていたという人もいるくらいです。

ですが、学習前とか初期にすんなり読めていたとしても、それは実は幅の狭い、情報として選択肢自体が少なかったからで、井の中の蛙のような、小さな世界でカードを読んでいたにすぎない状態といえ、進歩は止まったままなのです。

タロットの情報の取り方には段階やレベルがあり、実は奥深いものです。それはカード・図柄からの情報を得ようとやっきになっていても膠着状態に陥りやすく、今回ご紹介したような質問者側の工夫もいるのです。

タロットの情報、その他の情報が交流し合い、情報はますます複雑化することもありますが、それを整理し、コントロールし、選択するのは、タロットに向き合っている「人」なのです。

それと、正しい答えを出そうとか、答えはひとつだとか思わないことです。

私が思うに、タロットとは、人を混乱に貶め、楽しむようなツールでもあると見ています。(笑)

別の言い方をすれば、自分の固定観念や思い込みの世界を一度破壊するかのように、タロットの世界の誘いを受け、その世界に浸ることにより、現実にいたあなたの(固定)観念も、いつのまにか変わってしまうようなものです。

言わば、タロットは混沌に遊ぶツールなのです。この点は、同じ「卜占」系と言われる「易」とはかなり違う気がします。

タロットは質問に対して、ちゃんと出るのですが、ちゃんと出ていないように感じるというおかしなところがあります。

それは結局、リーダーの感じ方であり、カードの示唆が認められないということがほとんどなのですね。だから、カードは、いつも質問に対しての情報は必ず出していると言えます。その扱いが重要なのです。

タロットをうまく読みたい、タロットからきちんとした答えを出したいと悩んでいる人でも、少し自分の考え方、見方、態度を変えるだけで、楽になったり、読めるようになったりするものなのです。


リーディングの具体化が苦手な人に。

タロットを学習していて、タロットがうまく読めない、タロットリーディングに自信が持てないという人の要因は様々に考えられます。

その中て今回は、タロットの象徴と具体という点について、読めない原因を書いてみたいと思います。

タロットは、基本的には象徴ツールです。その絵柄は、何かを象徴的に描いているものです。英語風には、シンボリックに何かを表していると言ってもよいです。

象徴・シンボルというものは具体的ではないから、それ(象徴)でもあるのです。逆にいうと、具体的にこれだと決まってしまうと、それは象徴ではなくなってしまうのです。

ただし、「これこれはなになにの象徴である」と言えることはあります。例えば、「田中社長はわが社のシンボルみたいな人」という言い方の時です。

しかし基本的に、象徴・シンボルから意味をひとつに決めてしまうことは、その象徴的機能の働きを失わせることになります。このあたりは難しい書き方をしているようですが、講義ではもっとわかりやすく説明しています。

とにかく、タロットが象徴である限り、具体的な意味をカードから決めていくのは、本来的におかしな話であり、難しいものなのです。

単純に考えても、例えば「赤丸」という「象徴・シンボル」があったとして、それはどんな意味なのかを具体的に答えるとなると、見る人によって、いろいろな意味や言葉が出てくることになります。

右翼的な日本人ならば、国旗とか日の丸(逆に左翼的で普段から日の丸を嫌っている人も)ということを言うかもしれませんし、果物に興味のある人ならば、りんごとかいちごとか、切ったすいかなど(笑)と述べるかもしれません。

このように、あくまで象徴の場合は、ひとつの図形においても、たくさんの意味が出てくることになります。

また、そのシンボルを通して、個人や民族の特徴もあぶり出されることもあります。同じ象徴図を見ても、人によって、国によって、やはり違うからです。(同時に、特定集団などでは共通した見方も出るからです)

ですが、ここが非常に大切なことですが、その象徴だからこそ出てくる意味があり、たとえ個人それぞれによって違うものが出現したとしても、その奥底と言いますか、本質的には、その象徴として共通している部分があるのです。

それぞれに、その答えならしめている「中心である何か」、それが象徴の本質です。

タロットリーディンクで重要なのは、タロットから言葉や意味を具体的に出すことよりも、この本質をとらえる、感じる、直観するということです。それができれば、具体的な意味は、あとからついてきます。

ところで、タロットを簡単に読めるようにする方法のひとつは、カード一枚一枚の具体的な意味を暗記してしまうことです。

事実、一日コースとか短期間のタロット講座では、そういうやり方を取られているところもあると聞きます。

ですが、このやり方は、まさに一時的なものであり、すぐに限界が来ます。すなわち、まったく読みの幅がなく、決まった意味でしか読めなくなり、行き詰まるわけです。

では新たに言葉や意味を一枚一枚について覚えて行けばいいと思うかもしれませんが、そんなことをしていると、際限なく暗記しないといけなくなります。

これは結局、カードが表す象徴としての本質を理解せず、ただカードから派生する周辺の言葉を覚えているに過ぎないものです。

ゆえに、タロットカードに近づいておらず、人間的に言えば、タロットカードと仲良くなることもできませんから、タロットを理解することも難しくなるのです。

カードが読めない理由のひとつは、象徴としての本質を理解しようとせず、カードを単純に機械や記号のように具体的意味をあてはめ、暗記してしまうことにあります。

この場合は、タロットが象徴であるということの理解がもともと抜け落ちている(そういう説明を受けていない)ことが原因です。

一方、象徴としては理解していても、いざ、実践で読もうとすると、「具体的に」よく読めないというパターンがあります。

大まかにはカードの意味はわかるけれど、それがクライアントへのアドバイスや質問の答えとして具体性に欠けるという状態です。

これは象徴から具体への次元(レベル)変換がうまく行っていないことによります。哲学的に言うと、象徴で見ている時と、具体的に見ている場合とでは、世界が違うのです。

このあたりを詳しく説明すると長くなりますので、とりあえず、ここでは対処方法のひとつをお伝えしておきます。

それは、具体化のため(への変換のため)に言葉や文字を使うということです。一言でいえばイメージの言語化とそのトレーニングです。

言語化はすなわち具体化なのです。私たちは言葉や文字にすることで意思を伝達していますが、それは耳で聞こえたり、目で見えたりすることで、より抽象的なものを具体化しているわけです。

自分の考えを伝えるのに、言葉や文字ががなければ、現実的には伝わりません。

ここから考えると、タロットリーディングというものは、抽象的・直感的世界と具体的・言語的世界との共同作業、統合によって行われるのがわかるでしょう。(特に人にリーディングして伝える場合)

テレパシーのようなものがお互いに使えるのなら、言語化はいらないのかもしれませんし、リーディングにおける具体化に悩むこともないでしょう。

しかし、私たちの世界は言語や文字という具体性を必要としたコミュニケーションによって成立しています。

だから、タロットリーディングにおいては、言語の世界への関心を持ち、それを豊かにする必要があるのです。

ひとつの言葉の複数の言い換えとか表現、これを持つこともそのひとつです。

タロットリーディングと言えば、聞いて話すことという伝達方法が主ですが、そのために、言語や文字というものを、ないがしろにしてしまっている場合があります。

タロットのことをただ話として伝えればいいと思ってしまっているということです。

当然、この状態では、言語化は無意識のうちにやっていますし、ほとんど文字を書くこともないので、文字・言語としても発達・意識することがありません。だから、タロットの情報(リーディング)を具体的にしようとしても、しづらいわけです。

反対に言えば、形としての言語・文字での表現をあえてしていくことにより、タロットからの示唆やイメージを具体化することがやりやすくなるのです。

自分の話す言葉を意識すればよいのですから、文字化しなくても、例えば自分のリーディングを録音して聴くのもよいでしょう。

どんなことを話しているのか、どんな言葉を使っているのか、これを意識するだけでも、かなり変わると思います。一番いいのは、やはり、リーディングを実際に文章化してみることです。

何事も訓練であり、しかもその訓練は何のために行っているのかということをわかっているほうが効果は高いです。(モチベーションも違います)

さらに言えば、現実逃避傾向や現実の苦しみがある人は、抽象的世界に逃げたい気持ちも出ますので、自分が具体的なリーディングがしにくいという方の中には、そういう気質がないかも振り返ってみるとよいでしょう。

抽象的な物言いは、間違いも正解もあやふやな世界と言えますので、自分のリーテイング責任をあやふやにしておきたい人も、具体的リーディングを避けようとします。

まあ、物事にはすべて反転とか逆転の意味もありますので、具体的なリーディングを目指し過ぎると、現実的価値観(今の自分の囚われの世界)の正誤で判断する傾向が強くなり、〇か×か、正しいか正しくないかのジャッジ的読みになって、相手や自分を追い詰めることにもなりかねないので、これはこれで注意が必要です。

ですが、リーディングが具体的にできないというのとは違います。タロットリーダー自身の心理的問題もありますが、技術的問題も大きいのです。

それから、勘違いしている人も結構いますが、タロットリーダーがすべて与えない(読まない)といけないみたいに思っている人もいます。

タロットリーダーは、あくまでタロットの情報を知っているに過ぎず、相談者の具体的なことは聞かないとわかりません。(占いの場合は、聞かずとも当てないといけないこともありますが)

従って、具体的なことは、タロットリーダーが決めるのではなく、クライアント自身が知っていて、クライアントが決めるのです。

「左右に分かれた道の右を選ぶことがよいです、そしてそれは転職を意味します」という具体的な感じではなく、「ふたつの道はあなた自身が知っていることで、それは具体的に、あなた自身で「これとこれのことだ」とわかるはずです、ちなみにこちらの方向はこのような象徴性持ち、あちらの方はこういう象徴性です、タロットは、あなたが本当に進みたい道を示しています・・・」と、抽象的であっても、タロットからの本質を伝えて両者が話し合っていくことで、やがてクライアントは自分の進む「具体的な」道を選ぶことが、自分でできるようになるのです。

つまり、具体的なことはタロットリーダーが読まなくても、クライアントが知っているということなのです。

クライアント・相談者はあなたのしもべでも、命令を聞く人でもないのです。具体的でよいことを言ってあげようと力むと、いつしか、タロットリーダーの立場を忘れ、えらそうな状態になるか、うまく行かないと反対に、自分は無力だと感じて自信を失ってしまうことにもなりかねません。

タロット占いではなく、タロットリーディングであるならば、共同作業であることを、常に意識しておくことです。


タロットリーディングスタイルの多様化

タロットを学習して、他の人にタロットで貢献しようとなると、やはり第一には、タロットリーディングを提供するということがあげられるでしょう。

タロットに興味を持つと、タロットリーダーになる人も少なくありませんが、最初からタロットリーダーになりたいと思っている人と、そうでもなかったのに、いつの間にかやるようになったとか、タロットに親しんでいるうちに、リーディングを人にしたくなったというタイプの人があるようです。

タロットは一般的には占いのツールとして人々には思われているので、他人に占う、他人リーディングする、つまりは他者向けに使うツールだと認識されていることが多いようです。

しかし、個人的な意見になりますが、私自身は、タロットは本来、自分に使うものであると考えており、私のやっている講座も、基礎的なものは、自分向けにタロットを活用することが中心です。(他者向けのタロットリーディング講座もありますが)

まずは、自分向けにタロットと向き合ってみて、それからでもタロットリーダーになるかを決めるのでも遅くはないと思っています。

そして、他者向けにタロットリーディングを提供したいと決意された場合は、そのための知識と経験を重ね、トレーニングをしていく必要があるでしょう。

また、別に基礎的な段階でも、自分で研鑽と工夫を重ねて、タロットリーダーとしてデビュー、活躍していくことも可能だと思います。(ただ遠回りだったり、壁に当たった時にアドバイスしてくれたりする人がいないという問題も出てきますが)

さて、他者向けにしていくタロットリーディングですが、時代とともに、そのスタイルも変わりつつあります。

一般の皆さんがイメージするような古い昭和タイプと言いますか、昔の「タロット占い」というイメージ、例えば占いの館などのお店に所属したり、自分でお店を出したりして、何かヴェールのようなものをかぶり、アラビア風な衣装で水晶を前にしてカードを並べて占うみたいなものがあるかもしれません。(笑)

自己アピールとして目立たせるために、今でもわざとそういうことをしている人はいるかもしれませんが、普通は、もうこんな格好やスタイルではやっていないでしょう。

お店の側でも、おどろおどろしい感じとか、不思議チックな演出は、あまりされないようになっていると思います。怪しくなく、それでいて、秘密を語れるような、そんな場所を意図して作っているように感じます。

また、お店に出て占い師になるというタイプよりも、個人の自宅やセッションルームを持って、そこでカウンセリング・ヒーリング的にタロットを使うという人が、特に平成以降は増えてきたように思います。

ここに個人起業とかママ起業とか流行ったこともありますので、それに乗って、タロットだけではなく、ほかの技術・ツールを使い、対面相談セッション、ヒーリングなど開業する方も増加しました。

要するに、タロットを使っての相談スタイルも多様になったということです。

そして、令和になり、今度は面談の形も変わってきています。顕著なのはオンライン化です。

昔も、直接会わないリーディング・鑑定方法はありました。例えば、メール鑑定とか、さらに古くは手紙で書いて送るみたいなものもありました。占い界では、電話鑑定というのは今でも普通によくありますよね。

やがて少しずつ、ネットを使ったオンラインのリーディングも出現してきましたが、それでもチャット的な感じで行うとかで、あまりオンライン上での顔見せしてまでのものは少なかったように思います。

ところが、コロナ問題を契機に、いや実はそれ以前からすでに移行しはじめていたのですが、Zoomを中心とした使いやすいネットテレビ通信アプリが広く使われるようになったことで、飛躍的にオンライン面談の形は一般化しつつあります。

このことで、ますます、タロットリーディングスタイルの選択の幅が拡大しました。自分がタロットリーダー・タロット占い師としてやる方法が、昔よりかなり選択肢が増えたわけです。

しかも支払いの方法も、一昔前は直接現金のやり取りか振込くらいでしたが、今はキャッシュレスの時代が進んでおり、カード以外にもいろいろな方法が導入・選択できます。

おそらく、時代とともに、あらゆる面で、ますます多様な選択ができるようになっていくでしょう。

当然ながら、行う側だけではなく、受ける側も様々な方法を選べることになります。

となりますと、考えられるのは、自分好みのスタイルが取りやすくなること、タロットリーダー側で言えば、例えば直接の対面でしか、かつては提供できなかったものが、オンラインなど、別の方法でも可能になったわけですから、自分の鑑定ルームがない、セッション部屋がない、借りないといけない・・・と悩んでいた人も、一気にその問題は解決するどころか、必要経費も減ることになります。

たぶん、リーダーとしてデビューすることでは、お店に出ないといけないとか、ルームを借りないといけないとか、自宅をそれように準備しないといけないとかの物理的な意味(理由)に付随して、気持ち的なもの、心理的な面倒さ、抵抗感が大きかった人がいると思います。

それが、今ならネットさえできれば、いきなり自分の部屋からでもサービスを提供することが可能になったわけです。部屋が狭いとか、あまりルームを他人にお見せできないと思っていても、Zoomだとバーチャル背景が使えますし、画面共有も可能ですから、そういった問題もほとんど解決します。

ということで、物理的環境の変化で、実は心理的抵抗感が減り、今後は(今もですが)他者向けのタロットリーディングとか、タロット占いは、とてもやりやすい環境・時代になってきているのです。タロットさえ読めれば、今日でも明日にでも、デビューは可能です。(笑)

他人に対してタロットリーディングを行いたい人は、このチャンスを活かすとよいと思います。

スタイルが前より自由に選べることにより、たとえ話下手、人と対するのが苦手であっても、機器やツールを使えば何とかなりますし、自分の得意な提供の仕方がわかると思います。

自分にとって苦痛なやり方は、タロットリーディングの質さえも落とす場合があります。(タロットを読む技術と、その他の環境的要因による影響はまた別なところがあるからです)

もちろん、昔ながらの、直接対面式のほうが自分は得意で、力が発揮できるといタイプの人もいらっしゃるでしょう。やがてコロナも収まる時が来るでしょうから、その時は、リアル対面の要望が一段と高まることがあるかもしれません。

オンラインが普通になれば、じっくりと対面して話を聞いてくれる、人の温かみのある直接対面式は、それはそれで、かえって貴重になる可能性を持つからです。

私は生徒さんに対して、今はオンラインで勉強会を開いていますが、数カ月前にこの勉強会で、オンラインリーディングの方法を解説し、学んでもらったことがありました。

これにより、オンラインリーディングに目覚め、実践されることで、直接の対面式よりも前向きにリーディング活動ができるようになった人もいます。

また、従来からの対面式にプラスして、オンライン形式を導入された方もおり、それでリーディングスタイルのメニューを増やせたわけです。

これからは、いろいろな方法・スタイルにチャレンジして、受ける側に選択の幅と自由性を感じてもらうのもよいことかと思います。

反面、提供する側も、メニューを増やすというやり方だけではなく、自分がやりやすく、得意な方法、リーディングをやっていて楽しくなる方法にこだわって行うのもありでしょう。

つまり、お客様だけではなく、提供する側にも選択する権利があると言いますか、自由がある時代になっていくと思われるのです。

タロットリーディングを行うことが、副業的にも、趣味的にも、ますます融通が利くようになるでしょう。

もちろん、タロットがある程度読めないと(特に営業・仕事としては)話にはなりませんが、こと、提供スタイルに関しては、これからは、「こうでなければならない」という定番のものはなくなり、自分の個性・工夫によって、スタイル・やり方を自由に選択できるようになり、結局、自分がやりやすい方法で行っていけばよいことになると思います。(お客様のニーズとか時代性も考慮する必要性はありますが)

マルセイユタロットで言えば、「節制」(節約という意味ではなく、融通無碍の意味のほう)と「手品師」(仕事や、やり方の多様性)みたいな印象です。

あと、マルセイユタロットは直感だけではなく、むしろ論理的に読むことがてきるカードですので、だからこそ普遍的に、どのスタイルになってもリーディングを提供しやすいというところがあります。読みのルールのようなものがありますから、環境に左右されにくいということです。


カモワンタロットと占い

私はもともとカモワン版マルセイユタロット(通称カモワンタロット)から入った者ですし、過去のブログはカモワンタロット自体について書いたものも多いですから、カモワンタロットを学習したい方、興味のある方が検索して、たどり着く場合もあるようです。

それで、カモワンタロットについて、今もって、私もカモワンタロットの情報を見ることがありますが、最近は日本での購入・入手が難しくなっているようですね。

まあこのことは、すでにコロナ以前からもあった(だからコロナウィルスの影響ではないと考えられます)のですが、たぶん日本においては、どこかでカモワンタロットの大きな需要があって、もともと少ない在庫が一斉にはけてしまったのだと思われます。

事情はわかりませんが、カモワンタロットの製作者のお一人、アレハンドロ・ホドロフスキー氏も、まだお元気とはいえ、かなり高齢でいらっしゃいますし、もう一人のフィリップ・カモワン氏も日本での活動はほとんど行われていないようですし、生産・販売について、特に日本までの供給となると、難しくなる何らかのことが起こっているのかもしれません。

カモワンタロットを教えるところや人は、正式にはカモワンスクールさんのほうがされていますので、そちらの人たちが事情に詳しいのではないかと存じます。

ところで、カモワンタロットがもたらしたインパクトは、やはり、タロット=占いという概念を打ち崩したところにあると、私は考えています。

それは以前、日本でのカモワンタロットの正式教育機関であった旧国際タロット学院→タロット大学(現イシス学院)が、そのような(占いではないタロットの視点の)売り方・広め方をしたことが大きいと思います。

もちろん、カモワン氏の技法やリーディングスタイルも、日本でいうところの“占い・占い”したものではなかったということもあります。(とはいえ、以前、ある雑誌の記事で未来予想の占いをカモワン氏かしていたこともありましたが・・・苦笑)

また、ホドロフスキー氏も、著作「タロットの宇宙」を見てもわかるように、そして常日頃から氏が語っているように、タロットは占いではないというスタンスであり、このお二人からの流れのタロットが、占いから脱却したものになるのは明白でした。

私はカモワン流においては、かなり学習・研究した者ですが(今はカモワンスクールの認定講師でもありませんので、その流れにはありませんし、カモワンタロットを教えることのできるのは、カモワン氏いわく、カモワンスクールが認定許可した講師のみということになっています)、いわゆる「カモワン流、カモワンメソッド」と呼ばれる、その展開法を見ましても、まったく占い向きではないのがわかります。

絶版にはなっていますが、以前、「秘伝カモワン・タロット」というカモワンタロットに関する本(日本では唯一のカモワンタロット関係の本、最近はカモワン氏が出したフランス語の本もあります)が出ていました。

その本に書いてある「動的展開法」というカモワン流の並べ方(スプレッド)があります。『学研「秘伝カモワン・タロット」大沼忠弘、フィリップ・カモワン共著 p85~の部分』 (この本の「動的展開法」は、本来のカモワン流に日本式に改編が加えられたものですが)

ここで、リバース・逆位置のカードに対して、そのカードの下に(カモワン氏のサイトでは上に置くという方法も書かれているのですが、この本では下に置く方法になっています、これには理由がありますが、ここでは割愛します)正立で別のカードを引いて置くという方法が記されています。

いわゆる「問題カード」「解決カード」の法則です。(イシス流では課題カードと対策カードに相当)

そして、この展開法規則そのものが、占いに向かないものなのです。

例えば、「彼の気持ちはどうなのか?」という質問で、問題カードと解決カードの展開を使った場合、問題カード(リバースのカード)を彼の気持ちと読むのか、解決カード(その下か上に正立で置くカード)のほうが示しているのか、混乱してしまいます。

問題カードと解決カードのシステムは、問題カードはその名の通り、問題を示しているのてあり、解決カードもまたその名のごとく、問題を解決するためのエネルギー・意味・示唆を表すというものです。

ですから、ここに、「彼の気持ちはどうなのか?」とか、「この仕事は辞めたほうがいいですか、それとも続けたほうがいいですか?」とか、「この先、私、結婚できますか?」というような典型的な占い形式の質問には、どう答えていいのか、どう読めばいいのか、わからなくなるのが普通だと思います。

そう、「何が問題で、何がその解決を促すのか?」という趣旨の質問スタイルに変えないと、そもそも、展開法自体が占いの質問に合わないのです。

ですから、「彼の気持ちはどうなのか?」と質問するのではなく、「彼とうまく行くにはどうすればよいですか?」とか、「結婚できますか?」ではなく、「結婚するためには(結婚に対して私の何が問題で)、どうすればよいですか?」(どんな対策や解決策があり、どんな見方をすればいいですか?)というものにしないと、スムースには読めないのが当然と言えます。

逆に言いますと、質問をうまく変えることができれば、カモワン流の展開法は非常に有効なものとなります。

こう考えると、もともとカモワン流の展開法自体が占い質問に答える形式ではないので、そもそもからして、占いには向かないタロット(厳密にはその展開法が、です)であることがわかるのです。

これを無理に占いに適用しても、また当たらないとか占いに使えないとか言っても、元から目的・使い方が違うので、文句を言っても仕方ないのです。

もちろん、スプレッド・展開法、そして解釈次第では、カモワンタロットでも占いに使用し、効果を出すことも可能です。(まあ、それでも個人的には占い向きタロットではないと思いますが)

バリバリの占いタロットをしたい方、当たる人気占い師などを目指す方は、カモワン流よりも、ウェイト版などのタロットで、占い質問を答えるのに向いたスプレッドで学び、実践を重ねたほうが目標に近づけるでしょう。

そうした占い方面ではなく、カモワン流のリーディング・質問形式に、自分の感性や思考、タロットを使う目的として合ってると思う人は、カモワンタロット、カモワン流を使っていけると思います。

ですから、これまでもたくさんの人を見てきましたが、やはり、占い嗜好(志向)の層とは違う方が、カモワンタロットやマルセイユ版を好む傾向があるように思います。

個人的には、カモワン・ホドロフスキー版マルセイユタロットはすばらしいものだと考えていますので、生産・販売がストップするようなことのないように願いたいものです。


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