わからないものを見えるようにする。
「幽霊の正体見たり、枯れ尾花」ということわざがあります。
また「百聞は一見にしかず」というのもあります。
人は、疑心暗鬼になったり、不安になったりして「ああだ」「こうだ」と悩むわけですが、要はその実体が何だかわかると安心するということであり、また議論や推理していても見ればすぐわかるということでもあります。
ということは、昔からも「見て確認する」という作業が人の心を安定化するのに役立つと理解されていたことになります。
ただ「心」というものはつかみどころがなく、直接見たりさわったりすることができません。
それゆえ余計に気持ち悪いといいますか、ざわめいてくるのです。
ここのところは、タロットカードでは「月」のカードなどがうまく表現しているように思います。
それでその見えない、さわれない、いわゆる得体の知れない心の正体を何とかして確かめようと、人は会話を行ったり、説明しようとしたりして「言葉」を使うことになります。
しかしなかなか自分や人の気持ちを適切な言葉では表現できないことも多いです。
その場合、実は便利なものがあります。
それが「絵」なのです。
「絵」は文字を読めなくても意味をわからせることができます。音が聞こえない時、その音の意味がわからない場合(たとえば外国語を話されているような時)でも絵は互いの意志を疎通させます。
もちろん人の態度や行動でもできます。つまりは見えること、見えるものでコミュニケーションする方法です。
手話や手旗信号などもこの類と言っていいでしょう。
ただそられはやはりルールや形の意味をきちんと覚えておく必要があります。それがわからない人には無意味なものとなります。
ところが「絵」であるタロットは少々事情が異なってくるのです。タロットは絵なので、先述したように「見せる」ことによって理解させる働きがあります。
その上でさらに、絵の意味を覚えていなくても相手に伝わることがあります。ここが手話などと違う点です。
それはなぜかと言いますと、タロットの絵は人のもつ共通意識的な象徴だからです。
誰が見ても同様に感じる「絵」なのです。
タロットもルールや規則がわからないと、厳密にいうと相互理解できる手段とは言い難いですが、それでも何も絵の意味を知らなくても、通じることは少なくありません。
こうして内なるもの(心)を外に絵として取り出した時、そこに困らせていた内側の正体のようなものが見えてきます。
正体そのものとは言えませんが、それに近い「たとえ」のものであり、少なくとも内側にあった時よりも確実に見えやすくなっています。ですから理解しやすく、安心できると言えます。
これがタロットのひとつの働きです。リーディングによってクライアントがほっとしたり、気付いたり、安堵したりするのもこの効果のためです。
外にうまく象徴させることができれば同様の効果は期待できますので、必ずしもタロットを使う必要はありませんが、タロットは象徴ツールとしてはよくできており、それ自体にある種の力を秘めています。
タロットを使って内面の心の動き・状態を映しだしてみれば、きっと混乱していた状況も整えられてくるでしょう。
その繰り返しにより、実はあなたを苦しめているエゴの仮面をあばき、正体を明らかにしていくのです。
タロットの心理的な使い方の一面はこうしたものとなります。
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