タロットの時系列リーディング 過去

タロットの展開法では、時系列、特に過去・現在・未来を、出すカードの位置で決めている場合がよくあります。

例えば、スリーカード、三枚引きの技法では、単純に見て、向かって左のカードが過去、真ん中が現在、右が未来を示す(象徴する)カードだという具合です。

この時系列の方向性も、なぜ左が過去で右が未来なのか、考えてみると面白いのですが、残念ながら、カード単体と全体も含めて、その方向性に統一性があるシステムを持つカードは少ないかなと思っています。

その点、マルセイユタロットは、左と右の方向性には時系列的な意味合いもあるので、展開法においても、左側から右側にかけて時系列が進むと考えるのも妥当になります。

さて、こうしたタロットの時系列展開で、よく質問があるのは、「過去のカードの意味は何か?」「そもそも過去のカードは引く必要がないのではないか?」というものです。

過去はもうすでに終わったことであり、今更、カードを引いて読んだところで、何の意味があるのかというニュアンスですね。

これは、いわゆる「タロット占い」の観点であれば、そうかもしれません。

占いの質問では、クライアントの焦点・関心は、現在のことから未来にかけてが大半だからです。

占いの場合、だいたいにおいて、今の問題や悩みごと、迷いがあり、それを未来にはよくしたい、自分の思い通りにしたい、よい運勢の方向・選択を(未来においてなるように)選びたいという気持ちで、タロット占いを求める・行うからです。そこに過去への関心はほぼありません。

もし占いで、過去のカードに意味をもたせるとするならば、今までの選択パターンを見たり、占い師がクライアントの過去を当てて、その占いに信頼や神秘性をクライアントに抱かせたりする効果があるというものでしょうか。

ですから、クライアントにとってというより、占いの場合、当たることで評価が意識されるものは、過去のカードの読みは、占い師にとって重要(自身の力量か試される試験紙のようなもの)と言えるかもしれません。

しかし、占いというより、心理的なリーディングということになってきますと、がぜん、過去のカードは重要な意味を持ってきます。

占いの場合でも、過去のカードに、クライアント(質問者)のパターンを読むことがあるとは言いました。

そのパターンが、意外にもクライアント本人には、気がついていないケースもあるのです。

いつも同じような恋愛をしている、似たような恋人を選んで別れているとか、困難や苦痛の場面に遭遇すると、同じ反応をしていた・・・など、自分では盲点になっていて、改めて指摘されると驚くことがあります。

また同じパターンに気がついていても、それに意味が特にあるとは思っていないとか、隠したい、人には言いたくない部分であるとかの場合もあります。

そうした、自分のある種の反応・行動パターンを、過去のカードが表していると読み、それに気づいてもらって、現在以降に活かしてもらうことができます。

ほかにも、過去のカードを出してリーディングすることにおいて、とてもたくさんの意味があります。それらは私の講義で説明しております。

しかしながら、展開法(スプレッド)によっては、過去のカードはあまり枚数を出さないことのほうが多い気がします。それはやはり、タロットとその展開法が、占いとして開発・発達してきたところが大きいからと考えられます。先述したように、占いだと、現在から未来にかけて焦点が向くからです。

たとえ過去を読むことに意味があると認識したところで、上記で述べたように、展開法自体が過去のカードの枚数が一枚とか、二枚とかの少ない状態では、あまり詳しく見ることができないのも事実です。

心理的なリーディングをするには、それでは少し物足りないと言えます。

ですから、オリジナルな展開法でもよいので、もし心理的な意味でタロットを使おうとするのなら、過去を象徴するカードを、ある程度枚数を出すようにしてみてもよいかもしれません。

そして、このことが、今日一番言いたいことであるのですが、過去をリーディングすることによって、クライアントの人生、エネルギーに変化が出ることがあるのです。

それは、クライアント自身が、過去を受け入れることの、サポートができるからです。

ただ、過去を受け入れると言っても、誰かを赦さなければならないとか、自分の過去を称賛したり、感謝したりしなければならないということではありません。(そうできても、よいですが)

ただありのままに、自分の過去の、特にその時の抱いた感情を受け入れるということです。怒りや憎しみ、つらさ、悲しさ、寂しさ、悔しさ、反対に、嬉しさ、喜び、期待感、ワクワク感など、思い出していただくわけです。

過去となってきますと、やはり、親・兄弟・姉妹・家族との記憶、問題がどうしても出ることが多くなりますし、これまでの仕事や恋愛、人間関係においてのインパクトのあるシーンなどが印象としても出て来るでしょう。

それらが、今に全く影響を及ぼしていない人はほとんどいないのではないでしょうか。

過去としての事象は終わったことであっても、心の中の時間では続いているわけです。それが自分ではわからない状態か、認められない状態、逆に気にし過ぎて、葛藤や心理的苦痛・トラウマなどになっている状態、これらが現在の生きづらさ・問題として現れていることが少なくないのです。

過去のカードによって、隠れていたもうひつの時間の流れ、いや停止している時間(そこに過去の感情が貼りつき、固定されている)といってもいいものに入り、その時間を今の時間と同調させるように動かします。これは「運命の輪」の象徴性にも関係します。

過去の誰かや、何かを赦すのはあとでもいいですし、できなくてもいいと思います。

それでも、こうして現在まで生きてきた自分自身を認め、潜在的に止まっていた時間の中で感情を抱え続けていた、もう一人の自分、過去世界の自分を受け入れる(特に評価とか判断とかはしなくてもよく、どちらかと言えば、感情にフォーカスするほうがよいでしょう)のです。

たとえ受け入れられなくても、そうした自分がいたことを、もう一度発見してもらうだけでも、かなり癒しや浄化の面においても、違うことになります。

カードは絵なので、過去の実物の記録フィルム・映像を見せられるわけではありません。そこにも生々しくない(古傷をえぐるような痛さがない)緩和装置が働きますし、マルセイユタロットの図像の力そのものもあり、特殊な効果も期待できる部分があります。

私たちは、完璧な人間など、いません。

悩み苦しみ、迷う人は、ある意味善人であり、完璧や理想を追い求めるのが強いがゆえに、そうなっているとも言えます。

みんな、過去においては、恥部もあれば、間違いをした、失敗したと思ったこともあるはずです。それをいまさら正すこともできませんし、もし自分が害を被った側だとすれば、その気持ちを、無理やり愛や赦しに換えるようなことも難しいでしょう。

ここで言いたいのは、死後に行わわれるというものと近いことです。過去をただ改めて見て、「大変な人生(過去)だったなあ」とか、「あれはひどかった、苦しかった」「あの時は良かった」とか、そういう振り返りを過去カードによって行うというものです。

不思議なことに、それだけで、変容が起きる場合があるのです。その理由は、ここで書いたような、ふたつの時間のシンクロと流れが始まることや、感情の浄化などのことがあるかもしれませんが、ほかの理由もあるでしょう。

過去のエネルギーが戻れば、私たちは心理的に、今と未来に向かって、もっと積極的に、前向きに生きていけるものに変わっていくのです。

占いで、「未来によいことがある」と言われれば嬉しいのはわかりますが、過去のことが置き去りにされたり、抑圧されたりしていると、そのよき未来さえも引き寄せることができない(自分で自分の運命のを変えてしまう、言い換えれば、たくさんの可能性の中から、過去の苦しいエネルギーに引き合うものを選択する)こともあるわけです。

ですから、過去のカードを出すこと、リーディングすることも、決して無駄ではなく、それどころか、人によっては大変重要な意味を持つのです。

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