大・小アルカナの関係と使い方

タロットには大アルカナと小アルカナというパート、カード構成があります。

このふたつの違いは、大と小と名前があるように、簡単に言えば、大きな見方と小さな見方が適用されるものと言ってもいいかもしれません。

ただし、ここでいう、大と小は、良い悪い、優劣の意味で高い低いというわけではありません。

要するに、適用される分野や次元が異なるということです。

マルセイユタロットの場合、大アルカナと小アルカナ、特に数カード(数札)の絵柄とはかなり違っていますので、明らかにこのふたつが別であることが示されています。

しかしながら、タロット全体としては必要なセットとして組み込まれているわけで、タロットシステムからすれば、そこにはきちんとした理由があると考えたほうがよいです。

ということは、タロット全体からすれば、大も小も必要で等しく、しかし、絵柄の違いからして、別物と見ることも自然になるわけです。

全体としては同じ、しかし個別としては異なる・・・これは何かと似ていませんか?

そう、まるで宇宙全体(完全性)と私たち一人一人(の世界、個別性)の関係を見ているかのようです。

タロットが宇宙や私たちの象徴・モデルであるということは、このように、タロットの構成を検証するだけでもわかってくるものなのです。

こういう見地からすれば、自ずと、大アルカナと小アルカナの使い方、適用する分野というものも理解できてきます。

講義ではこのことはしっかりとお伝えし、具体的にタロットの使い方・読み方を、大アルカナと小アルカナで説明しておりますが、ここで簡単に大と小の関係性と使い分けをご紹介しておきます。

まず、大アルカナは一種の元型・アーキタイプのようなものと設定します。

そして、小アルカナは大アルカナひとつひとつに対して、4つの分野に細分し、表現されたものと考えます。

この4つとは、四大元素(風・水・火・地)思想をベースとした四組のことです。すなわち、剣・杯・杖・玉(一般的にはソード・カップ・ワンド・コイン)となります。

四組のとらえ方、表現分野には諸説ありますが、一般的・簡略的に述べるとすると、思考・感情・行動・物質(環境・結果など形)と表現できます。

このうち、内的なものとしては思考と感情があり、外的なものとしては行動と物質的環境があります。(杖は火の象徴なので、内的な情熱やモチベーションを表すこともありますが、今は便宜上、あえて簡単に種類分けしています)

元型的な大アルカナ一枚一枚に対して、この四組の表現方法や働きかけがあると見るわけです。

構造的には1対4(大アルカナ1と小アルカナ四組)の関係性です。

これは、大アルカナ自体にも、「手品師」や「世界」のカードに図像として表現されています。特に「世界」がわかりやすいでしょう。「世界」のカードには、真ん中の人物と、周囲には四つの生き物が配置されている絵になっています。

では事例として、「節制」のカードで説明しましょう。

「節制」という元型に対して、四つの表現方法があり、どの分野を自分が選択するかという向き不向き・適合不適合も考えられますが、同時に、「節制」を完全に理解、自分のものとする(現実化する)には、四つの分野それぞれが必要であるという考えにもなります。

「節制」は救済や治療を表すとすれば、そのために必要なものは四つのうちどれか、あるいは、四つのバランスで歪になったり、ないがしろにしていたりする部分はどれかというような見方ができます。

どこか調子が悪いのなら、まず内(思考・感情)か外(行動・環境)か、というものを見て、さらに内・外のそれぞれの因子を調整したり、取り入れたり、過剰さを排除したりすることで、元型としての(この場合は「節制」)本質が現れてくるというイメージです。

ほかにも、「節制」を別の意味にして、例えば経済的節制、つまりお金を節約する課題として考え、小アルカナ的に四つの分野からアプローチする、手段とすると見ることができます。

今は単純な例でやりましたが、実は四組構造はもっと複雑化したり、逆に単純化することもでき、かなり具体的・個別的に絞っていくこともできれば、元型次元にまで抽象化して、ほとんど元型と変わらない意識までもっていくことも可能なのです。

こうしてみると、特にマルセイユタロットの大と小のアルカナ構造は、本当によくできていると実感させられますし、マルセイユタロットを使う多くの人が、小アルカナをあまり活用されていないのではないかと残念に思うところもあります。

そもそも日本においては、ホドロフスキー氏の著作以外、本格的に、あまりマルセイユタロットとしての小アルカナの解説や使い方が教授されていないので、仕方ないのかもしれません。

私自身も、もとはカモワン流から入りましたので、当時のカモワン流ではほとんど小アルカナを使わない技法ということもあり、自力で小アルカナと大アルカナの両面の活用について探求・実践してきたところがあります。

その過程で、やはり小アルカナはタロットシステムにおいて必要不可欠なものだということがわかりましたし、一般的に言われている小アルカナの考え方・使い方とは、また別の方法もあるということも気が付いてきました。それでも、大アルカナとはセットで考えたほうがよいのです。

何事もそうですが、使わないものは衰えたり、疎遠になったりします。

タロットもしかりで、大アルカナばかり使っていては、小アルカナを理解することから遠ざかりますし、小アルカナとあなたの関係はよそよそしいままです。

実は、小アルカナは現実と強く結びつく性質があり、大アルカナばかり使っていると、現実逃避や地に足のつかない状態になってしまうこともあります。(しかし、リーディングしたり、占ったりする内容が現実性を持てば、大アルカナもその次元にシフトしていくことができるので、必ずしもそうとは言いませんが)

ということで、せっかく小アルカナのパートがタロットではあるのですから、使ってあげるとよいです。魔法的には四大の精霊と仲良くなる感覚でもあるでしょう。

面白いことに、ゲーム世界では四大の精霊はよく表現されていて、子供たちは名前も知っているはず(笑)です。

ゲーム世界では、四大はアイテムや能力においても不可欠な要素で、ロールプレイングゲームでは、その四大要素の特質を持つ人物も現れ、パーティーを組みます。それがアンバランスだと、パーティーも、最悪、全滅します。

つまりは生きる力と関係しているのです。これはゲームを私たちの現実世界(これ自体もゲームだと考えることができます)の例えだとすると、よくわかると思います。

タロットの活用は、78枚あってこそなのです。

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