タロット旅の思い出と意味

この時期(春に向かう時期)になりますと、思い出すことがあります。

それは、マルセイユタロット、厳密に言えば、フィリップ・カモワン氏のタロット(ホドロフスキー・カモワン版マルセイユタロットにおける、カモワン流を基礎とするタロット技術と思想)を学習するために、フランスでのコースに参加したのがこの時期だったからです。

当時、日本でフィリップ・カモワン氏から直接学びを受けるコースは、タロット大学という機関が担当・開催しておりました。(ヨーロッパでカモワン氏が開講しているものを学ぶ方法もあったとは思いますが、海外在住とかで、通訳なしでもOKな語学堪能でないと難しかったでしょう)

カモワン氏から学ぶコース(タロット大学のタロット上級コース)は、結局、あまり長く続かず、開催された回数的にも多くはなかったので、今では幻のようなものかもしれません。

そういう意味では、ライブで、カモワン氏のリーディングを見て学べた者は数的にも少なく、貴重な機会だったかと思います。(ちなみに私の参加した時は、別で行われていたホドロフスキー氏のワークショップを見学することもできたという幸運でした)

そういう技術的な面においても貴重ではあったのですが、当時のタロット大学からのコースには、カモワン氏から学ぶ講義だけではなく、希望者のみでしたが、マルセイユタロットに関わる土地や場所をめぐる旅もついていました。

これがまた、非常に貴重だったのです。(簡単に海外旅行ができないコロナ禍の今では、もっと貴重さが出ている気もします)

このコースで学んだ方たちのうちの何人かが、のちに、同様の旅企画をされていました。

そのような同様の企画が行われたのも、タロットの学びにおいて、タロットが生まれた(育まれた場所)を訪問することが大事であることを、その方たちも、当時感じたからだと思います。

できれば、私もそのような旅をやってみたいと思うくらいです。

このブログでも、書きましたが、マルセイユタロットには、その歴史的背景や文化的背景を知っておくほうが、活用する意味でも、意味合いがかなり違ってきます。

タロットに向き合う感覚、覚悟の違いとでも言いましょうか。

その他でも、リーディングにおいても、支援される力、気づくエネルギーも異なってくると思います。(実は「見えない技術部分」としても、関係あると考えられます)

学びには、純粋な技術的側面と、それを支えるかのような精神性の両面があり、さらにそのふたつを統合するようなスピリット(霊性)があります。

逆から言いますと、霊性に至る(向上させる)には、見た目や理論だけではない、見えないところにもある精神性を実感・認識していくことが必要でもあるということです。

特にタロットのようなものは、見た目や論理の技術側面だけではなく、精神性、見えない部分が重要になってきます。

技術がただうまくなるだけでは、本当の意味て、タロットが上達したとは言えません。

例えば、カモワン氏のタロットを学ぶコースにおいても、カモワン的技法を学ぶだけならば、氏の講義部分のみに参加して帰国すれば目的は果たせたかもしれません。

しかし、一見、技術には関係ない旅に参加することで、得られる精神性の部分はとても大きなものがあったと言えます。

あの旅に参加したからこそ、見えない部分のもの、肌で感じるマルセイユタロットの生まれた背景の場所、蓄積、物語のポイントを押えることができ、まさにタロットの学びに“いのち”が宿ったような気がしたものです。

マルセイユタロットには、異端カタリ派に関係するものが流れていると伝えられていますが、私自身、このカタリ派の人々の思いを、実際に関係する都市・村を巡ったことで、知識だけではない、感情的・精神的部分を受け取った気がします。

ヨーロッパでは当たり前にある教会、城壁、石造り建築の数々・・・これらもタロットには登場し、深く関係があるものです。それも目の当たりにして、写真とか動画で見るのとは違う、体感をしました。

旅では、教会にかなり多く行きましたので、途中、教会酔い(苦笑)みたいな感じにもなりましたが、私だけではなく、ほかの人にも不思議なことも起こりましたし、日常的にキリスト教の精神と日常性、その裏に流れる古代からの思想・信仰・土着の精霊的なエネルギーなどを感じることもありました。

マルセイユでは、町の壁にタロットが描かれていることもありましたし、タロットが私たち日本人が思うものよりも、流通していたこと、使われていたことを実感させます。

思えば、このコース、旅に参加したからこそ、私のそれからの人生において、マルセイユタロットが中心となることが決定したようなものです。

前にも書きましたが、この時、私はタロット活動をしていくことに迷いとか疑問もあったのですが、ある事件と言いますか(起きたことはとても小さなことでしたが、自分にとっては大きなこと)、事柄が起こって、旅をする中で、次第にタロットと自分との関係が構築されていくのを感じました。

それは構築というより、回帰や思い出しのようなものだったかもしれません。

ところで、マグダラのマリアの伝説は、マルセイユ近郊には特にあるのですが、例えば、マグダラのマリアの頭骨(あくまで伝承であり、本物かはわかりません)が収められている教会、マグダラのマリアが最後に籠り、修行したといわれるサント・ボームの洞窟などにも訪れ、マルセイユタロットでは「星」の女神としても描かれる彼女の存在を、現地の風土で、信仰というより、エネルギー的な存在として、土地の精霊や人々の心にいるのがわかりました。

こういうものは、日本では、同じエネルギーを持ちつつも、仏教的なものとか、神道的な神々として、別の形象で表現されているものと思います。

言ってみれば、誰の心の中にも存在するものです。ですが、その土地土地で、形や表現が変わるわけです。

比較民俗学ではありませんが、そのように、ほかの土地、場所、文化のところに実際に行くことで、自分たちのものと比較することもでき、それによって、比較の中から浮上する本質な存在・エネルギーというものを認識することもできるのです。

訪問先で、「私はかつてここにいた」とか、前世的感覚になる人もいるかもしれませんが、それもひとつのストーリーとしてあってもよいかと思うのですが、大事なことは、そのよにうに感じる自分の特質と言えましょう。

前世で自分がいたのかどうか、そういう事実的・物質的なことよりも、精神的・霊的に同調する何かがあるということで、それが何なのかを思うことのほうだと感じます。

そこにずっと自分が継続してきた魂的な方向性とか、傾向があるかもしれないからです。

また、「愚者」のように旅をすることで、私たちはいろいろなものを目にし、感じます。

しかし、「愚者」が数を持たないように、旅人は、そこの住人でもなく、そこの場所そのものでもありません。

これと同じように、私たちは、何かに縁を感じたり、強く何かに惹かれたりして、自分はこうだとかか、自分はこういうもののために生きているとか思っても、その本質は旅人であり、(自分が思う)それそのものではないのです。

ですが、訪れるもの、感じるもの、惹かれるものが無意味なわけでもありません。

旅を彩り、楽しませるためには、興味を引くものがあったほうがいいわけです。

人生もいわば、旅と言えます。私たちは、肉体と個性を持ち、現実の人生を歩みます。

しかし、旅をしている中で、いつの間にか、旅先やそこて経験するもの自体に囚われ、それそのものだと錯覚してしまうことがあります。

それは、さきほども言ったように、旅を楽しむための装置であり、演出です。

ですから、何かに熱中したり、使命感をもったりすることは、旅(人生)を面白くするためには必要ではあるのですが、それがすべてで、自分をそれそのものだと思ってしまうと、囚われやこだわりになり、自由性を失います。

楽しむための演出だと見れば、人生も、もっと楽になるシーンも出てくるかもしれません。

私は、タロットのコースに参加することで、マルセイユタロットに関わる使命や運命のようなものを感じましたが(しかし、それも帰国してから、タロットを続けて行くことで、より培われたものです)、だからと言って、タロットで縛れていては元も子もないのです。

ほかの皆さんも、何かタロットとは別のものの学びとか技術習得で、思い切った旅をしたことがあるかもしれません。

きっとそれは深い思い出となって、心に刻まれていることでしょうし、中には、仕事や使命として、その学習し経験したことをもとに頑張っていらっしゃる方もいるでしょう。

人生には転機ということで、自分の生き方を大きく変えるタイミングがあります。タロットで言えば「運命の輪」の回転ですね。

ですが、「運命の輪」の動物たちのように、輪の中にいるものと、輪の上にいるものとでは視点が異なります。

輪の中にいる熱中性、当事者意識によって、まるで遊園地にいるかのように、エンターティメント的な要素も働き、また恐怖の乗り物のように怖かったり、つらかったりする時もあるでしょう。

しかし、その輪から出ている視点・存在では、それが演出であることに気づき、幸不幸の事件、どちらてあっても、それそのものではなく、舞台装置(演出・仕掛け)であることが理解できます。

こういった両者の視点で、自分に起こる人生の出来事を見て行けば、空しくなった時は充実性を補い、、やるべきことに疲れたような時、多忙で自分を見失いそうな時には、立ち止まって、客観的に見ることもできます。

人生には意味がなく、また意味があると、両方見ることができるのです。

その使い分けをしていくと、生きるのには楽になりますし、人にアドバイスもしやすくなるでしょう。

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