三角関係

マルセイユタロットの「恋人」カード。

図像では、三人の人物がいて、真ん中の男性が両隣の女性にはさまれている絵柄があります。

見ようによっては男性の取り合い(笑)のようでもありますし、逆に、ダメ男を女性が押し付け合っている(ダチョウ倶楽部のどうぞどうぞみたいなシーンが浮かびます(笑))のかもしれません。

まあ、普通に見て、男性が女性のどちらかを選ぼうとしていると見えるでしょうか。

ところで、恋愛もののストーリーには、恋人カードではないですが、三角関係がテーマとなるものがよくあります。

パターンとして(どちらの人を選ぶかの悩みに)は、行動的・野性的・活発的なキャラと慎重・清純・控え目的なキャラとの対比、あるいは現実派とロマン派の人物みたいな対比があります。

またまたアニメネタで恐縮ですが、富山を舞台(そのものではありませんが)にした「true tears」というアニメがあります。これは登場人物の恋愛模様、三角関係(厳密には四角関係(笑))を描いています。

主人公の男の子は、二人の女の子(+あと一人も関わりますが)の間で苦悩する話です。こういう関係性のアニメにはコメディ系(ラブコメ)が多いのですが、このアニメはシリアスです。

男の子にとって重要な二人の女の子は、一人はある事情で自分の家に住むことになった女の子、もう一方は、学校で出会った天真爛漫な女の子です。

このアニメを見ていて思ったのは、まさに「恋人」カードで、主人公の男の子が悩むのは、いわば天上と地上にある葛藤に見えました。

それは西洋絵画では有名なモチーフである「天上のヴィーナス、地上のヴィーナス」の葛藤とも言えます。

「true tears」では、高校生の話なので、いわゆる地上のヴィーナスとしての肉体的なものが描かれるわけではありませんが、同居している女の子として、セクシャルなものも感じさせるシーンはありますし、言ってみれば、その女の子は、男の子にとって現実的な意味での女性として強い印象を与えるのです。

実際にその女の子は、スポーツも優秀で美人、優等生、しかし主人公の男の子に対する秘めた思いを隠し、ちょっと計算高く(というより、女性としての感情と行動がいかにもありそうな現実性があるよう)にも見えます。

もう一人の女の子は、幼い風貌でもあり、行動も奇抜で、ちょっと何を考えているのかわからない感じでもありますが、とても純粋に見えます。現実にはいそうもない空想的な子の印象です。実は、男の子は絵本作家を目指しているのですが、そのスケッチに描かれる天使の姿に、こちら側の女の子は似ていたのです。

結局、男の子は、紆余曲折の末、同居していた女の子のほうを選ぶのですが、選ばれなかった女の子は、今まで涙を出すことができなくなっていたという心理的なブロックの症状があったのですが、男の子にふられたことで、再び涙を取り戻すことができたという皮肉な描写がありました。

おそらく、この天使に似ていた女の子は、失恋ということを経験することで、現実に戻ったのだと思います。

その証拠に、それまで孤独だった学生生活(友人がいなかった生活)から、普通の女子高生のように、友達もできて楽しそうに話しているシーンがあったので、今までは、むしろ非現実の世界にいたわけです。

つまり、この子は、男の子にとっての天上のヴィーナスであり、イデア的な役割、存在であり、言い換えれば彼の夢・空想・純粋性を象徴していたと考えられます。

ちなみにこの女の子がまだ非現実的な世界にいた頃は、学校で飼育されていた鶏が友達みたいになっていて、やたらと鳥がシンボルとして出ていました。マルセイユタロットでも鷲は天上性への飛翔の象徴を持ちます。(鶏は飛べないことにも注目)

一方で、もう一人の子は、現実の女性で、実際の世界で恋人となる女の子(地上のヴィーナス)だったわけです。

「恋人」カードでは、三人の人物の上に天使、あるいはキューピッドが描かれています。私たちは、地上・現実で生活していますが、その縁を結ばせるものは、天上のキューピッドであり、またふたつの葛藤の中に、現実を超えたものの示唆を与えます。

「true tears」では、主人公の男の子は、自分の中にあるイデア、天上の天使(一人の女の子という形を取る)とふれることで、逆に地上の現実性の選択力を強めました。(しっかりとした選択、生き方、つまり自立心を獲得)

ただ、私、個人的には、もう一人の天使性を持つ女の子にかなり惹かれました。それは、やはり、地上的なものよりも天上的な愛のほうに強く思うところが、マルセイユタロットを見てきて復活してきたとも言えるからです。

「恋人」カードは、どちらを選べばいいか(正しいものを選択せよ)ということではないと思います。

その迷いや葛藤の状況こそが大事で、私たちは現実世界の中で、そういう状態に置かれることはありますが、そこから正しい選択を現実的にしたものが勝者という視点だけではなく、もともとあった地上を超えた天上的なものを取り戻し、霊的な観点の重要性を受け入れることを示しているように思えます。

アニメ「true tears」でいえば、どちらの子が好みかとか、こちらを選ぶのが正解(現実的によい選択である)という視点で見るのではなく、なぜそもそも悩むのかとか、三角関係は破滅ではなく創造であることを知るみたいな感じと言えましょうか。

失恋であっても失恋ではなく、いつも私たちは恋愛を通して結合を求め、たとえ実際には結び合えなくても、精神・霊的には結合していくのだと悟ることで、人間世界の中にある個人的・現実的な愛が、その裏側では、広大な宇宙的な愛によって支えられており、それが時によって地上では衝動化されていることに気づくのです。

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