マルセイユタロットのリーディングとは

二年前の今頃の記事に、タロットリーディングで具体的なことが言えるための工夫について、書いています。

しかし、根本的に言っておかねばならないことがあります。

一般的に、タロット占いとタロットリーディングを混同・誤解している人が多いということなのです。

占いの場合、抽象的なことでは満足しない人が大半でしょう。そもそも、悩んで占いに来ている理由には、具体的なことが聞きたい気持ちがあるわけてす。

例えば、「相手は私のことをどう思っているのか?」という質問には、私のことが好きなのかどうなのか、(恋愛対象として)何とも思っていないのか、少しでも可能性があるのか、そこのところをはっきりさせたい(つまり具体化させたい)という思いがクライアントに隠されています。

そこをぼかされると、答えになっていないと感じるでしょう。

ほかにも、「どんな仕事が向いているのか?」という質問に、「人と関わる仕事がいいみたいですね」というくらいでは、やはり、クライアントには満足できない部分が残るでしょう。

もっと具体的な職種とか業種、時にはどこのそこの会社(企業)に行けば採用されるとか、勤めるのが向いていないのなら、アクセサリー販売を起業させれるとよいですよ、そしてそのデザインは・・・みたいに、より詳しく言ってくれれば、とてもうれしく、助かる気持ちがすると思います。

そういうことを教えてくれるのが占い師の役割だと、信じている人が少なくないでしょう。

そして、その具体性が当たっているか、当たっていないかで、優秀な占い師かどうかが世間的に判定されるという習わしもあります。よい占い師と評判になれば、占い師としての営業も順調になり、経済的にも栄誉(プライド)的にも満たされます。

ですが、タロットリーディングとなると話は別です。

タロットリーディングは、当てるためにするものではなく、また、具体的なことをタロットリーダーが、タロットから読み取るために行うものでもないからです。

目的は、クライアント自らが気づいたり、納得したりしてもらうために、タロットによって導きを行うことです。

よく、「答えは質問者(クライアント)自身が知っている、質問者の中にある」と言われます。

これがタロットリーディングの基本的姿勢になります。ただし、(自分の中の何かが)知ってはいても、わかってはいない、気づいてはいない(自覚できない、自分一人では理解できない)という状態があるからこそ、悩んで、相談に向かうわけです。

いくら「答えは自分の何かにある」と言っても、一人では見つけられない、判断がつかないというのが本音ではあります。(その意味では、必ずしも「自分の何に答えがある」とは言えないのです)

人は完全性を持つがゆえに、悩みの答えも、当然完全性の中にあることになるのですが、一方で、人は完全性を自覚することができない世界(この現実のこと)にもいます。

そのために、完全性から分離された意識にあり、自分と他人という具合に、個別に分かれた意識状態にほとんどの人がいます。

それはつまり、自分だけでは解決しない状況に置かれている(という認識の世界にいる)わけです。

従って、他人からの援助やサポート、刺激、働きかけが必要となります。

マルセイユタロットの「節制」の原理みたいなものですが、ふたつの壺を混ぜ合わすことで、救い・救われる感覚や実態が出るのです。

話を戻しますが、タロットリーディングは、タロットの象徴性を読み解き、クライアントの実際の悩みや疑問と照らし合わせて、クライアント自らが答えを見つける(悩みについて納得する)ためのお手伝い、援助を行うものです。

象徴というのは、メタファー、隠喩・暗喩の形で、タロット(マルセイユタロット)から意味が出ます。それは抽象的なものだったり、誰にも当てはまるような普遍的で、集合意識の元型であったりします。

だから、具体的な答えとか形にはならないのです。

では、具体化しなくていいのかと言えば、そういうわけではありません。現実世界で生きている私たちは、時空の中で制限(の意識)があり、ある程度の具体・選別がないと、すっきりしない感覚を持ちます。ちょっと難しく言うと、肉体レベルの次元があって、その満足感・納得感が必要な場合があるということです。

そのレベル(肉体次元)までタロットの象徴性の意味を落とし込んでいくということは、言い換えれば、クライアント個人の世界に、象徴性を移動・降下させる(変換し、当てはめる)ということでもあるのです。(これは精神の錬金術と言えます)

例えば、「拡大すること」という抽象的象徴性が、あるクライアントにとっては、具体的(その人の個人的なレベルや次元においてということ)には何の意味を持つのか、それを見つけて行くという作業になります。

クラインアント個人の世界での意味になるわけですから、もし仕事で悩んでいたら、仕事における拡大とは何かを、その人の具体性(実際的なこと)に転換させることになります。

それが転職とか、支店を増やすとか、新しいこと(それもクライアントが考えている具体的なこと)をやりたいと思っていたものを実施するとか、とにかく、人それぞれの意味になります。

結局、具体的なこと(個人的な意味)は、その人個人しか知らないのです。タロットを読む側は、あくまで推測にしか過ぎないことになります。なぜなら、クライアントとタロットリーダーは他人(同じ人物てはない)だからです。

ですが、マルセイユタロットの象徴性の世界を通して、クライアントとリーダーは同じところ(世界)に存在することができます。

その世界とは、現実を超えたものでもあります。ですから、クライアントの現実の意識や認識を超えたアイデアとか、解放の手段を降ろすことも可能になるのです。

同時に、クライアントという個人の世界に、抽象的で象徴的な意味合いを、具体的な事柄・意味に変化させることが必要で、その橋渡し、架け橋をするのが、タロットリーダーの役割なのです。

このことがわかれば、タロットリーダーがむきになって当てなくてもよく、何か具体的なことを言ってあげないといけないと、あせる必要もないのです。

もちろん、タロットやタロットリーダーが万能ではありませんから(タロットリーダーも現実世界にいる分離意識を持つ人間です)、導きがうまくいかず、クライアント自身が納得する答えを探し出せないままになることもあるかもしれません。

しかし、タロットリーディングの場合は、重要なのは、答えをはっきり出すことよりも、リーディングで相互やり取りしながら、問い(質問や悩み)を改めて見つめ直す、そのプロセスにあるのです。

なぜなら、そのプロセス自体が、完全性のための交流であり、肉体(現実)レベルでは満足できないようでも、精神的・霊的レベルでは、大きな変容が起こっている可能性が高いからです。

ですから、不思議なことに、マルセイユタロットのリーディングでは、リーディング時にずばりな答えが出なかったとしても(探せなかったとしても)、その後、悩みの事態が変容し、実際的にも変化があった、悩みの質が変わってきた(気にならなくなった)、ほかの考えができるようなって、自分の成長を実感することになった、というようになることが多いのです。

占いで救われることももちろんありますし、それは自分(クライアント)の思い方、利用次第ですが、タロット占いとタロットリーディングの違いがわかっていることは、特にタロットを使う側の人にとっては大事だと思います。

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