タロットの活用
タロットは実に様々なものを類型化・パターン化してくれます。ですから、とても物事の理解に役立つツールです。例えば、
「この人はどんな人間か」というのをざっと把握するのに、「9の隠者のような人」と評せば、それだけでこのタロットをしている人には理解が可能です。もちろん、人間を単純に画一化していくことはできないのですが、それでもいくつかの型として見ていくことができれば、複雑な人間模様もシンプルにとらえることができ、必要以上に考え込まなくてすみますし、自分が他の人にその人の特徴を伝達する時にも便利です。
同じように、物事に対してもタロットを使うと、非常に収まりがつきやすいです。もし、あなたがちょっと難しそうな人生哲学などの本を読んでいても、タロットを習っていたのなら、わかりづらい文言でも、「ああ、これはタロットでいう2と3のことだな」「ふむふむ、つまり、これは世界の逆と皇帝の逆状態のことを意味しているわけですね」など、一読では理解困難な事柄も、タロットという“鋳型”として当てはめることのできる道具を心の中に持っていると、その難しい事物をタロットに型ハメしていくことで、とても短時間(一瞬のこともあります)で整理がついてしまい、すなわち理解も進むということになるのです。
ひとつ、例を出しましょう。さきほど私はたまたまある雑誌で、仏作家のカミュの言葉-「希望とは一般に信じられている事とは反対で、あきらめにも等しいものである。そして、生きることは、あきらめないことである。」-というものを知りました。これをタロットに瞬時に当てはめてみますと、浮かんだのが、「11の力」、「12の吊るし」、そして「名前のない13」の一連のカードの並びでした。希望=11 あきらめ=12 あきらめないこと=13 (それぞれタロットの正逆の意味も含む) などからの連想です。11から13のタロットナンバーが並ぶ配置から、さらにカミュの先述の言葉が、より自分なりに理解して入ってくるのです。当てはまるカード一枚一枚も重要ですが、それよりも一連に並ぶその配列も大切になってきます(カモワンタロットで使う、いわゆるタロットマンダラのことを指します)。
たまたま格言のような例を挙げましたが、何も難しい事柄だけにタロットの鋳型機能が働くわけではありません。新聞やテレビで報道されている日常の事件、天気、家族や友人のささいな出来事に至るまでそれは応用可能です。熟達してきますと、ほとんど時間差なくタロットカードの絵柄があらゆることに浮かんでくるようになるでしょう。そうしてみますと、大アルカナの「21の世界」が到達点といわれるがごとく、まさに「世界はタロットの中にある」と言っても過言ではありません。
タロットは極めて優秀な整理道具であるとともに、われわれの世界を把握するファインダーであり、書物であるのです。ただ惜しむらくは、自分の力不足ゆえに、タロットに当てはめるのとは逆に、タロットそのものから新しい発見や悟性的な法則が見つけにくいのが、私の今の課題ともいえるでしょう。本来タロットは、その目的(タロット自身から自分を高みに上昇させるものを得る)に叶うものであり、有益に活用できるツールであるはずなのですが。。。いまだ宝の持ち腐れ状態なのかもしれません。