「吊るし」と「悪魔」の隠されている手。

タロットカードの大アルカナと呼ばれる22枚のカードは、そのほとんどに人物が描かれています。


そして「人」ということは、当然手足もあるわけなのですが、不思議なことにあえて「手」を隠しているカードがあります。


それが「吊るし」(他のカードでは「吊され人」とか「吊された男」)と「悪魔」です。


吊るし」の人物は逆さまに吊られた状態で、手は後ろ手になっていますので手が見えません。おそらくほとんどの人がこのカードを見た時思うように、手も縛られているのではないかと想像できます。


しかし、カモワン流の解釈ではこの「吊るし」の人物は吊されているのではなく、自らが好んでこの姿勢をとっているとしますので、手もまた自分から後ろにして結んでいるのかもしれません。


一方の「悪魔」ですが、このカードには悪魔と思われる人物と、その悪魔を崇拝しているかのような二人の裸の者たちが描かれています。


手が見えなくなっているのは、悪魔ではなく、つながれている二人の人物のほうです。


この者たちはともに悪魔を見て、心酔しきっているかのように笑みを浮かべています。


二人がしている後ろ手状態は、やはり「吊るし」のように縛られているようにも見えますし、手を表に出さないことが楽しく、自然にさせられているようにも感じます。


手はいろいろなことを象徴します。


手先を使うということで、カードの「手品師」(ほかのカードでは「奇術師」「魔術師」)にもいえますが、「仕事」を表すこともありますし、そこから個性・パーソナル、その人そのものを示すこともあります。(仕事が人を社会的に表すことがあるからです) 


また手を使うことは文字通り、手段ともとれますし、印を結ぶということなどからも呪術的な意味合いもあります。手当という言葉からも、治療やヒーリング的な行為を表すでしょうし、手当はまさに手当として働いた報酬・お金を意味することもあるでしょう。


さらには手は五感の刺激を受け、全体を把握するための有効な装置となっていますので(手でさわって感じるように)、手の自由を奪われるということは、まさしく人としての自由を奪われるのに等しいともいえます。


罪人を拘束するのに手錠が使われていることが何よりの証拠でしょう。


こう考えてみますと、現実世界で生きる私たちにとって、手(の自由が利くこと)はいかに大切かということを物語っているといえましょう。


その手をあえて隠している、あるいは隠されている「吊るし」と「悪魔」のカードは、いったい何を私たちに示唆しようとしているのでしょうか。


ここで「吊るし」と「悪魔」の二枚の手の隠され方に注意してみる必要があります。


「吊るし」は自ら吊るし状態を選んだ人物だとお話しました。ということは、後ろ手にしているのも、自分の意志だと考えられます。


それに対し悪魔につながれている二人の人物は、自分からということもいえるかもしれませんが、どうも悪魔の影響によってそうせざるを得ない、そうさせられていると想像できます。


つまりは自らと他者からの違いです。


手をあえて使わないようにする、使われないようにするということは、結局先述したように個性や自由を奪うことにはなるでしょう。


しかしハンディとも思えるある縛りをかけることで、逆に見えてくるものもあります。また自分が個性だと思っていたものはわがままな我であって、それを抑えて物事を観察することも時には有効かもしれません。


それらが「吊るし」のほうのひとつの解釈です。


反対に「悪魔」は、手で反抗できないほどの影響力、自然に従ってしまうような(好きになるような)力を持つことをいわれているように感じます。その点では「力」のカードと共通している部分もあるのです。(カモワン版を学習した人は、「力」と「悪魔」にはもともとあるシンボルで連繋していることを知っているはずです)


またあれこれ手を出すのではなく、悪魔という大きな存在に導いてもらいつつ、自分で手鎖をはずす事を学んだり、気付いたりすることも示されているともいえましょう。


こちらは自分の個性に気が付いていなったり、自分が何をしていいのかわからないような人には参考になる方法でもあるといえます。結局は自分の自信や本当の自分の良さに気付くための仕掛けでもあるのです。(以前の悪魔の記事 も参考にしてください)


けれどもここで述べたのは私のひとつの解釈に過ぎません。もっと別の多くのことを思い起こすことも可能でしょう。


この二枚は、ほかのカードの中でもネガティブに考えてしまいがちのカードでもあります。


隠された手のこととロープの象徴に思いを馳せながら、できるだけポジティブなことも想像していくと、人生そのものへの効果的な訓練になるかもしれないのです。

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