タロットの構成、宮廷カード

タロット一組には、大アルカナと小アルカナと呼ばれるパートがあります。

タロットの種類やメソッドによっては、大アルカナだけ(使う・重視する)というものもありますが、やはり、伝統的に、78枚で一組というのがタロットであり、大アルカナと小アルカナが相まってこそタロットだと言えると思います。

さて、マルセイユタロットの場合、小アルカナは大アルカナよりもあまり活用されていない節がうかがえます。マルセイユタロットを使う人でも、実は小アルカナを学んだことがないという人もいるくらいです。

これにはいろいろな理由があるのですが、やはり、マルセイユタロットの小アルカナの数カード(数札)の図像が、記号的なものになっているので、イメージがつきにくく、わかりにくい、読みにくいという点があるでしょう。

大アルカナの場合、図像がまさしくなので、イメージしやすく、絵からダイレクトに意味を浮かべることができます。しかし、抽象的とも言える小アルカナの数カードの図像では、なかなかそれは難しいのです。

ゆえに、実は大アルカナを読む時とは別なリーディングシステムが必要なわけですが、ともかく、とっつきにくいと思われがちなのが、マルセイユタロットの小アルカナと言えます。従って、敬遠され、使われず、使われないから、当然読まない、読めないということにもなります。

しかし、小アルカナには、実はもうひとつ、「宮廷カード(コートカード)」というものがあります。

マルセイユタロットにおける宮廷カードは、実は、大アルカナと絵図の性質は同じと言ってもよいです。大アルカナと同じ、具体的な絵になっています。

違いは、宮廷カードが人物のみの絵で、大アルカナのような数がふられてないということくらいです。見た目はあまり変わらないと言ってもいいでしょう。

タロットを考える姿勢において、タロットの図像・数(構成数も含む)をよく観察するというものがあります。

すると、先述したように、宮廷カードは大アルカナの絵図と性質が似ており、明らかに、数カードは別種だと言えます。つまり、絵の性質から見れば、大アルカナと小アルカナの宮廷カード、小アルカナ数カードという二つの種類に分かれるということです。

「アルカナ」というくくりでは大と小なのですが、絵柄の性質では、上記のような分け方が可能です。

数カードは、図像・デザイン的に見て、ヨーロッパ単独のものではないと想像され、今でいう中東イスラム圏や、インド・中国的なものも入っているように思えます。(その証拠が、歴史的にも残っています)

とするならば、数カードの文化圏と、大アルカナ・宮廷カードは別で、後者はヨーロッパでもともと作られた可能性が高いと言えます。

アルカナ別では違うのに、絵柄や文化圏では大アルカナと同じの「宮廷カード」は、タロットのパートの中でも、特殊な位置にあることがわかります。

いわば、大アルカナと小アルカナをつなぐ役割、中間的ものとも言えるでしょう。

一般的には、ウェイト版なども含めて、宮廷カードは、具体的な人物像を表すとされます。

セオリー的にはその通りだと思いますが、大アルカナと小アルカナの中間的な役割があるとすれば、実はもっと秘密が隠されており、意味的にも別な読み方ができるのではないかと推測されます。

ここで注意したいのが、占いやリーディングであてはめるカードの意味と、システムや全体、構成から出てくるカードの意味合いとは、別なこともあるということです。

この、システム・全体から出てくる意味は、まさにタロット一組そのものが意味をなして主張している思想とか根源的な意味などであり、それは秘密になっていたり、隠されていたりすることがパータンとしては多い気がします。

まだ私自身は完全に明らかにはしていませんが、宮廷カードの特別な位置からして、大アルカナと数カードとの接合カードとして考察していくと、あまり知らされていない意味、使い方、暗号のようなものが浮かび上がるのではないかと思っています。

数(構成数)で言いますと、大アルカナが22枚で、小アルカナは56枚あります。

このうち、小アルカナは宮廷カードが16枚数カードが40枚です。小アルカナはという数、つまりは四大元素・4組がベースとなっているからで、どちらも当然、4で割り切れる構成数です。

一方、大アルカナは22枚なので、4で割り切ることができません。

自然に見ても、大と小は数のシステムが違うように判断できます。しかし、大アルカナ自体の構成を見た時、「愚者」という数をもたいなカードと、21の数を持つカードたちに分かれます。

とすると、大アルカナは21という数で「愚者」を特別視する構成も考えられます。それでも、21は4で割り切れません。しかし、3ならば割れます。

また、これは特にホドロフスキー氏が設定しているものですが、大アルカナを「愚者」と「世界」の二枚と、1から10、11から20の数を持つカードたちに分けて見るシステムがあり、要するに、これは10のひとまとりをベースにしたとらえ方です。

10をひとまとりにしたと言えば、数カードもそうですから、ここに、数カードと大アルカナとの数的なリンクをつけることが可能になります。

10自体は、4では割れませんが、10×2=20となれば、4で割り切れるようになります。(この場合、大アルカナの「愚者」と「世界」は割り切れない次元にあると想定します。もちろん「世界」のカードは21なので、ある数で割り切れますが、ここでは21を完全な数として考えていて、「愚者」と同様、数がないように見ているわけです)

すると、宮廷カードも4がベースですから、大アルカナとのリンク性を、数的に考えることが可能になってきます。

このように、まずは、大アルカナの構成(数)を宮廷カード・数カードの小アルカナたちにリンクするために変化させる方法(小アルカナの次元に大アルカナをスライドしたり、落としたりしていくようなもの)がありますが、逆に、小アルカナを大アルカナにあてはめていくことも考えられないわけではありません。

そうすると、小アルカナの数のシステムを変形していく必要があるので、これはこれで難しいと言えるでしょう。

ほかにも一枚に何枚かをつけるとか、枝分かれみたいに考えていくと、数のベースシステムが違っていても、分類やリンクをさせていくことは可能です。

そんなことより、宮廷カードを実践でどう読むのかについて知りたい読者は多いかもしれませんが(苦笑)、今回はその話ではなく、宮廷カードをタロット全体システムの目から見れば、特別な位置にあることがわかり、そのうえで、面白いことがタロットから浮上してくるというヒントを書いております。

宮廷カードの使い方は、一般に考えられているよりも、はるかに多いものがあると言え、実は、自分自身に使えるものなのです。

タロットと接していくと、人に占ったり、リーディングしたりするよりも(それも可能で、すばらしい活用法なのですが)、やはり自分のために使うものとして作られていることが、マルセイユタロットでは実感してきます。

宮廷カードや数カードもそうで、小アルカナも小アルカナなりに、自分に使うためのツールのひとつと言えます。

あと、マルセイユタロットの宮廷カードの特徴として、ランク(階級)は騎士が最上位と考える立場もあるということです。

一般的には、宮廷カードは、王が最上位とされていますが、騎士を最上位とするのにも一理あるのです。ホドロフスキー氏の「タロットの宇宙」では、その一端・理由が明かされていますが、ほかの理由もあります。

王を最上位として見るのか、騎士を最上位として見るのかでは、実はかなり違ってくるところがあります。騎士を最上位にしても、タロット全体として整合性が取れるようにマルセイユタロットは作られています。

トランプカードの絵札でも、ジャック、クイーン、キングと宮廷カードに当たるものがありますが、ここにナイト・騎士がなくなっているのは、騎士自体に特別な何かがあるのではという想像も働きます。

トランプではほかに、タロットと比べると、大アルカナもありません。(「愚者」のみジョーカーとして存在します)

ゲーム用に特化されていると言えるトランプに、大アルカナと宮廷カードの騎士がないこと、逆に言えば、タロットには大アルカナと宮廷カードの騎士がついていること、ここにも、重要な秘密があるのてはないかと思えます。

タロットも確かにゲーム道具として作られたものではありますが、78枚であること、その構成には、単にゲームを複雑化するためだけに付け加えられたとは思えないものがあると想定できるのです。

まあ、占いができればよいという人には、このようなことはあまり関心も意味もないのかもしれませんが、タロットの秘密を明らかにしていくことは、ホドロフスキー氏がその著作で「タロットの宇宙」と題したように、宇宙の秘密に近づくことになるかもしれず、そういう興味方向にある方には、マルセイユタロットは向いていると言えるでしょう。

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