レベルの上昇 「1」のカードから
マルセイユタロットの大アルカナで、数の「1」を持つカードは、「手品師」「力」「世界」です。
それぞれ、1,11,21という具合に10単位で数が上がっています。
ちなみに、10という単位は、小アルカナの数カードの単位(ひと組)になっており、それが4つあることで、合計40枚になっています。
大アルカナは22枚なので、10の数を基本とはしない(10で割り切れない)のですが、あえて10とのシンクロを見るとすれば、こうした「1」をベースにした分け方もひとつの方法となります。
さて、その1の「手品師」、11の「力」、21の「世界」について、今日は10よりも、1の象徴とも言える「始まり」というものをポイントとして、ひとつの見方、話をしたいと思います。
マルセイユタロットでは、上記、三つのカードは、数の共通性だけではなく、図においても共通のシンボルが描かれています。それは秘伝的なものになりますので、その意味も含めて、ここでは指摘しません。(ひとつだけではなく、複数あります)
ですが、このことから、三枚が数の1を元にしながら、共通したものを持っているという証拠になります。
マルセイユタロットには、数が上がる度に、上昇や発展、完成に向かっていく(大アルカナにおいてはで、小アルカナでは逆の発想もできます)という考えがあり、従って、この三枚では、「手品師」→「力」→「世界」と、レベルが上がって行くと見られます。
まず、絵柄的に見まして、「手品師」はその名の通り、テーブルの上に道具を並べ、手品を披露している姿になっています。おそらく、手品を見ている観客たちはいると想像されますが、それは描かれておらず、もっぱら手品師一人が強調された図像になっています。
次に、「力」ですが、「手品師」が男性的な人物であるのに対し、「力」では女性がメインとなり、しかも、ライオンという動物も描かれています。人間とモノだけだった「手品師」と違い、人間と動物という図像になっているわけです。
しかも、よく見ると、「力」の女性は、たてがみのある雄ライオンをいなしており、大人のライオンから想像すると、女性はかなり大きな人であると考えられます。
私たちマルセイユタロットを学ぶ者からすれば、この女性は人間ではないという説が話されており、そのことは実は深い意味を持ちます。今日はそれが本題ではないので、ふれませんが。
さらに、最後の「世界」になりますと、真ん中の人の周囲に動物たちが囲み、また人間と動物だけではなく、天使のような超越した存在も出てきています。
これも、秘伝的には、中央の人物は人間ではない(たとえ人間であっても、通常の人間レベルではない)と言われており、男性とも女性とも取れる両性具有的な人物になっていて、「世界」全体からすると、その特徴的な絵柄から、一種の天国のような、かなり現実離れした雰囲気を漂わせています。
つまり、簡単に言えば、ただの人間レベルから、次第にそれを超え、最後は神レベルまで到達していく流れが、この三枚からだけでもうかがえるのです。
もしこの世が地獄とまでいかなくても、なかなか悩み多き世界だとすれば、天国というものは、そういったものがなくなる、最高の世界だと言えるでしょう。
「手品師」の段階では、いわば、この世て生きる普通の人間としての困難さを表し、やがて成長した者が「力」の状態となって、まさに、ある種の“力”とコントロールの術を得て、雄ライオンさえ簡単に操れる能力を手にし、それはもう通常の人間を超えた者と言え、最後は「世界」として、さらなる究極の成長(完成)を得て、天国入り(悟り化)するという感じでしょうか。
この成長段階は、よく考えると、宗教的には、死を経て、さらに別の生を受けて繰り返される、言わば、輪廻転生システムにおける魂の成長過程とも取れます。
すると、もしかすると、タロットのストーリーは、生の期間だけはなく、死後も含めて、トータルな人の成長と完成を表しているのかもしれません。
たとえ生きている間のことのみを示唆するにしても、普通の人間が死後にようやく気付くものを、生きているうちに想像して思考体験していくような代物かもしれないのです。
三枚には、こうした壮大な物語も見えてくるのですが、一方、現実的レベルの話にしますと、また別の見方もできます。
「手品師」「力」「世界」、その進みによって、初心からベテランになり、また初心に戻るも、そのレベルは、当然、初心は超えていて、別の新たなレベルへの挑戦に進み、それを受け入れ、最終的にはその道の高度な完成に至るという、いろいろな学びや技術の習得というものに共通する「過程」を考えることができます。
「力」がちょうど中間で、この地点から、また新しい段階を迎え、再スタートとなりますが、その時点で「手品師」レベルは凌駕しているので、次の上の段階(レベル)にいる状態となっています。
そこでまた10の段階を経て、レベルがさらに上がり、「世界」としての完成を迎えるという流れです。
わかりやすく言うと、アマチュアレベルからセミプロレベル、そして本当のプロレベルへという成長過程です。
また、人間の交流過程と見ることもでき、ただの一人から、動物も含めて、周囲のものと交流し、最後は目に見える存在以外のものとさえ交流可能になるレベルになっていると考えることも可能です。
どの三枚も「1」という数があるのですから、いつも始まりですし、加えて「力」と「世界」においては、10の段階を経る(経た)ことにより、ひとつのシリーズは終わり(完成)にもなります。
言ってみれば、1から始まったものが10で終わって、11で新たなレベル・次元のスタートとなり、これがまた20になって終了し、21になって完成と、さらなる高次元のスタートということにもなるわけです。
このことは、実は「世界」であっても「手品師」であると言え、逆に「手品師」であっても「世界」でもあり、それらの鍵となるものは「力」にあるという話になってきます。
謎かけみたいな文章ですが、これが理解できた時、マルセイユタロットのすごさに改めて気づくことでしょう。
あなたの中には、神も天使も人間も悪魔もおり、それらがレベルや次元を変えて、縦(垂直)にも横(並列)にも存在し、関係・呼応し合っている世界と言えるのですが、それをわかりやすく伝えてくれるのが、マルセイユタロットなのです。
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