カードの人格化を行うと
タロットカードを人格化する技術は、その方法を詳しく知らなくても、カードに接する時は自然に行っているものです。
人格化とは、要するに、タロットカードを人間のように見るという方法なので、特にタロットと親密になりたいと願う初期の頃は、感覚的にそのようにカードを扱うことになります。
あまり適切なたとえではないかもしれませんが、しかし本質的には同じとも言える、幼ない子供がぬいぐるみに話しかけて、会話するようなことに似ています。
ただ、マルセイユタロットの場合、小アルカナの数カードが記号的な絵柄になっているので、人物(人間)として見るのは難しいでしょう。
従って、マルセイユタロットでは、カードを人格化する時、まずは大アルカナ22枚の扱いが重要(モデル)になってきます。
そうしてマルセイユタロットの大アルカナの絵柄を観察しますと、人間(のようなもの)が描かれているカードと、そうではないものとに分かれるのに気づきます。
カードにはだいたいは人物がいるのですが、まったく人が見当たらないカードもあります。具体的には、「運命の輪」と「月」です。
この二枚は、人間ではない生き物が中心の絵柄で、「運命の輪」に至ってはマシーンがメインと言えます。
また、人間的なものは描かれてはいるものの、人数が多数であったり、人間ではないもののほうが大きく描かれていたりして、一人の人格としてはとらえがたいカードもあります。「恋人」「悪魔」「神の家」「太陽」「審判」「世界」などは、それらに該当するでしょう。
しかしながら、そういった、一人の人間・人格に見えないカード、そう設定することが難しいカードにしても、何とか一人の人物として性格づけしていくことに、タロットカードの人格化の技術の向上があります。
そもそもカードを人格化することは、最初にも述べましたように、タロットカードとそれを扱う者との関係性を近づける、親密にする意味があります。
ほかには、タロットリーディングを(カードとの)コミュニケーション的に行うための前段階という位置づけもあります。
なぜカードを人間のように扱うと、上記のような目的がかなうのかと言えば、人はコミュニケーションするのに、やはり同じ人間的な方法がやりやすいからです。
そしてコミュニケーションがスムースに行けば行くほど、自ずと相手との理解も深まりますし、自分の意思を伝えることも可能になってきます。
もちろん、カードは人ではなくモノなので、「そういう気がする」という範囲でメルヘン・思い込みの世界とも言えますが、そういう世界観を作り出すこと自体に実は大きな意味があります。
モノを人間のように見るという行いは、霊的な通路を作ることでもありますし、私たち現代人が失ってしまった感覚を取り戻す意義もあります。
カードを人格化するうえで、人物がメインで描かれているカードを人間のように見立てることは、単純にやりやすいです。
しかし、先述したように、人間がメインではないカードたちは、イメージ的に一人に人格化することは困難ではあるものの、これもすでに指摘したように、それを可能にしていくことが、カードの扱いの意味でも大事になります。
想像力が試されますが、最初は難しくてもチャレンジしていくことで、人物が“創造”されていくのです。
大アルカナ全22枚を人格化できた時、面白いことが起きます。
まず、リーディングにおいては、カードからアドバイスを人間のようにもらえたり、いろいろと会話できたりする感覚が出てきます。
慣れて来ると、カードを引かずとも、その人物をイメージしただけで、脳内コミュニケーションのようなことが可能になります。
そして、心理的には、自分自身の分身のように見ることもできます。
人は代表的な性格、自分でもこう思っている自分というものがありますが、それとは違う、様々な性格の自分も隠れていると言われます。そういったものが、カード(の人格化)で表せられるのです。
このニュアンスで自己リーディングを実施する場合、言わば、別の自分との会話・相談をしているようなものになり、自分の分身たちが合議し、ある答えを出すかのようにリーディングが行われるのです。
ところで生成AIのチャットGPTが少し前より話題になっていますが、その使い方において、チャットGPTに、「あなたは、〇〇の専門家です」と指定すると、それらしい雰囲気とか内容で答えてきます。
それと似たような感じで、例えば「隠者」のカードを専門家の人格のように設定すると、そのようなアドバイスが「隠者」より、もたらされることがあります。
タロットカードも、設定とか扱いによって、使い勝手が大きく変わることが長年やっているとわかります。
カードを人格化して使う方法は、いろいろと便利なもので、自分自身にも、他人に対しても有用なものになります。
もしカードを人間のように見ることに違和感があり、ばかばかしいと思う人は、タロットを真に扱うことは無理でしょう。「運命の輪」で言えば、向かって左側の動物、アーリマンに毒された人と言えるからです。
また、かと言って、人間のように見過ぎてしまうのも問題で、これは「運命の輪」の右側の動物、ルシファーに毒された状態になります。
そういったバランスを取るのも、マルセイユタロットのいいところなのです。
とりあえず、もしマルセイユタロットを持っている方ならば(それ以外のタロットでも行けますが)、一枚引いてみて、そのカードを人物化(人格化)し、その者が語ることを想像して、何かメッセージとか示唆をもらってみるとよいでしょう。
その意味では、リビジョンタロット的な方法と言えます。
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