タロットの使い方

タロットとビジネス、占いとそれ以外

私は中級以上の講座で、希望者にはタロットリーダーを養成(する講座を提供)していますが、タロットビジネス(タロットを使った営利的業務の構築と実施)を指導しているわけではありません。

ただ、タロットにおけるビジネスの状況については、私の知る範囲で解説しています。

タロットを使ったビジネス・営業となりますと、現状、タロット占い師になるというのが、もっともメジャーなものになるかと思います。

また、タロットヒーリングとか、タロットカウンセリング、タロットコーチングなど、とにかく、タロットを使って、人様の問題の解消や軽減に当たるという方法が考えられます。

それでも、いまだ、タロットは「占い」のツール、方法という一般的な認識が強いですので、営業としてやっていくのにも、「占い」でのアピールをするほうが、市場に向けてやりやすいのは確かでしょう。

そのため、占いではないタロットの活用を最初に志していた人でも、営業としてやっていくために、占いにシフトにしたり、占い向けに対象を変えて行ったりすることが少なくありません。

言ってみれば、「タロットリーダー」と名乗るか、占いを強調して「タロット占い師」として名乗るかみたいなことになります。

タロット占い師を名乗ることになるのなら、当然、お客様は占いを期待して来られますので、現状、及び過去や未来を含めて、当たるか当たらないかの点には、こだわりを持たれたり、問われたりすることになります。

占い師として初めから占い的にタロットを読む技術を教わっている、あるいは独学ながら、占い技術の研鑽をしてきたという人ならば、占いに期待するお客様に対しても、当たり前ですが、スムースに応えることができます。

少なくとも、自分のやっていることと、お客様が求められるものとの違いに悩まされることはあまりないでしょう。つまり、ビジネス・営業としても葛藤がないわけです。

しかしながら、占いではないタロットの使い方を目指してきた人、学習してきた人(特にマルセイユタロットでは、そういう方向性になりやすい)は、占い市場が多いタロットにおいてのお客様と、自分のやろうとする理想との間に、大きな違いがありますので、齟齬や葛藤が生じます。

ですから、占い市場で稼ぐとか、営業するとかの目的をもってタロットを使いたい場合は、最初からバリバリのタロット占い指導者(ビジネス的にも結果の出ている方)のもとで学び、訓練されるとよいと思います。

ちなみに私は、占いではないタロット(マルセイユタロット)になりますから、初めに述べたように、タロットリーダーになるための講座は開講していますが、あくまで、それはビジネスではなく、結局自己研鑽のためのものという目的になります。

私の考えでは、他人向けにタロットリーディングすることも、自己の認識を深め、(統合的に)成長するための方法のひとつであり、しかも、なかなか効果的な手段でもあるのです。

その過程で、タロットリーディングに代金をいただくこともありとしていますが、それはビジネスとして稼ぐ、それ一本で生業していくというようなものではなく、あくまで補助的なものです。

金銭を介することで、タロットリーダーとクライアントとの間で現代社会においては、ある種の契約や誓約ができるので、ともに真剣になるという利点があるのと、エネルギー的にも等価交換的なことになって、リーダー側の一方的消費に終わらないということがあるためです。

従って、ビジネスとして成功するためのタロットリーディングを教えているわけではありません。

もっとも、タロットと占いという結びつきは、今の一般的な意味でのタロット市場では強いですが、それも次第に時代遅れになりつつあると見ています。ただ、占いへの需要は、人々の大幅な霊的な向上がない限り、まだまだあると思います。

そもそも、タロット占い自体、かなり古い時代からあると考えられ、特にフランスでは、あの革命前後の時代に人心が乱れ、社会への不安が増したので、それまでキリスト教的には禁止され(ずっと禁止されているものですが)、特殊な階層の人でしか、していなかった占いが一般に広まり、巷で占いをする人、見てもらう人が激増したと言われます。

そこから見ましても、数百年、いまだ占いへの需要と供給が続いていると言えます。だから、まだまだ続きそうです。

ということは、規模はどうあれ、タロット占いとしてのビジネスの可能性もしばらく続くことが予想されます。その意味では、タロット占い師としてやっていくと、決意されるのもありでしょう。

一方、先述したように、従来型の占いも時代遅れとなりつつあり、変化が加速することでしょう。すると、タロットを占いではなく使っていく方法や、新たなタロットでのビジネスということも考えられます。

タロットというもの自体、男性はともかく、女性においては、おそらく結構名前と存在だけは知られているものと思います。

そのため、タロットそのものをウリにして、それをどう使うのかというよりも、「タロットを使って、あなたを幸せにする」というフレーズ(目的)で、使う方法はリーディングでも、ヒーリングでも、コーチングでも、そして占いでも何でもよいとするやり方も可能に思います。

要は使い方ではなく、いかに来られた人を楽にできるか、勇気や希望をもってもらえるか、価値をもってもらえるかということです。

これはタロットというツールが知られれば知られるほど、そういうこと(使い方・方法技術ではなく、タロットそのものをウリにすること)が、やりやすい環境になると思われます。

それから、少し高度なテクニックになりますが、あくまで占い市場に身を投じながら(お客様の層を、占い認識での方々をメインとしながら)、やっている中身はタロットリーディングやタロットカウンセリング、という方法もあります。

結局、よいタロット占い師さんは、当たりはずれのタロット占いの技術だけを提供されているのではなく、来て良かった、救われたとお客様が思う、人への親身な相談ができるからです。

それはお客様・クライアントにとって、実は当たる当たらないが本当の目的ではないとも言えます。

何のために占いに来られているのかを想像すれば、自ずと、タロット占い師・タロットリーダーが(タロットを使って)行うことの意味がわかるはずです。

ただ、市場自体が「タロットと占い」という、ステレオタイプ的な見方で凝り固まっているため、タロットに占いを求めていくという手段(スタイル)が確立され過ぎているのが問題と言えます。

ちなみに、私のところの講座では、タロット占いでの質問と、タロットリーディングでの質問の違いを明確にしており、それを理解すると、形式的にタロット占いをしながら、タロットリーディングに至ることができるという方法を指導しています。

つまるところ、ビジネスにおいても自分次第であり、タロット占いでないと営業は無理ということではなく、工夫次第なのでしょう。

私はビジネスのプロでもなく、むしろその才能はないですから、そうしたことは指導できませんが、専門の人や才能のある人にウリ方を依頼する(考えてもらう)のもいいと思います。

しかし、私も結構経験しましたが、当然ながらビジネスプロの方は、あくまでビジネスのプロであって、タロットを本当の意味で理解しているわけではありませんので、いくらウリ方を提案されても、その方法は相いれない(自分の思うタロットの道からはずれる)ということが多かったです。

そのあたりになると、根本的に資本主義経済の問題に行き着くこともあるので、本質的には難しいことです。

それでも、タロットは本来、自由になるためのものと言えますので、使い方は人それぞれであり、自分の思うやり方、自分が(タロットを使うことで)悩まない方法がよいかと思います。

タロットをやって、成長のために多少の葛藤や苦しみはあっても、タロットを扱うこと自体がつらいということであれば、それは本末転倒なので、あなたのタロットの使い方・目的を考え直すことです。


カードの人格化を行うと

タロットカードを人格化する技術は、その方法を詳しく知らなくても、カードに接する時は自然に行っているものです。

人格化とは、要するに、タロットカードを人間のように見るという方法なので、特にタロットと親密になりたいと願う初期の頃は、感覚的にそのようにカードを扱うことになります。

あまり適切なたとえではないかもしれませんが、しかし本質的には同じとも言える、幼ない子供がぬいぐるみに話しかけて、会話するようなことに似ています。

ただ、マルセイユタロットの場合、小アルカナの数カードが記号的な絵柄になっているので、人物(人間)として見るのは難しいでしょう。

従って、マルセイユタロットでは、カードを人格化する時、まずは大アルカナ22枚の扱いが重要(モデル)になってきます。

そうしてマルセイユタロットの大アルカナの絵柄を観察しますと、人間(のようなもの)が描かれているカードと、そうではないものとに分かれるのに気づきます。

カードにはだいたいは人物がいるのですが、まったく人が見当たらないカードもあります。具体的には、「運命の輪」と「月」です。

この二枚は、人間ではない生き物が中心の絵柄で、「運命の輪」に至ってはマシーンがメインと言えます。

また、人間的なものは描かれてはいるものの、人数が多数であったり、人間ではないもののほうが大きく描かれていたりして、一人の人格としてはとらえがたいカードもあります。「恋人」「悪魔」「神の家」「太陽」「審判」「世界」などは、それらに該当するでしょう。

しかしながら、そういった、一人の人間・人格に見えないカード、そう設定することが難しいカードにしても、何とか一人の人物として性格づけしていくことに、タロットカードの人格化の技術の向上があります。

そもそもカードを人格化することは、最初にも述べましたように、タロットカードとそれを扱う者との関係性を近づける、親密にする意味があります。

ほかには、タロットリーディングを(カードとの)コミュニケーション的に行うための前段階という位置づけもあります。

なぜカードを人間のように扱うと、上記のような目的がかなうのかと言えば、人はコミュニケーションするのに、やはり同じ人間的な方法がやりやすいからです。

そしてコミュニケーションがスムースに行けば行くほど、自ずと相手との理解も深まりますし、自分の意思を伝えることも可能になってきます。

もちろん、カードは人ではなくモノなので、「そういう気がする」という範囲でメルヘン・思い込みの世界とも言えますが、そういう世界観を作り出すこと自体に実は大きな意味があります。

モノを人間のように見るという行いは、霊的な通路を作ることでもありますし、私たち現代人が失ってしまった感覚を取り戻す意義もあります。

カードを人格化するうえで、人物がメインで描かれているカードを人間のように見立てることは、単純にやりやすいです。

しかし、先述したように、人間がメインではないカードたちは、イメージ的に一人に人格化することは困難ではあるものの、これもすでに指摘したように、それを可能にしていくことが、カードの扱いの意味でも大事になります。

想像力が試されますが、最初は難しくてもチャレンジしていくことで、人物が“創造”されていくのです。

大アルカナ全22枚を人格化できた時、面白いことが起きます。

まず、リーディングにおいては、カードからアドバイスを人間のようにもらえたり、いろいろと会話できたりする感覚が出てきます。

慣れて来ると、カードを引かずとも、その人物をイメージしただけで、脳内コミュニケーションのようなことが可能になります。

そして、心理的には、自分自身の分身のように見ることもできます。

人は代表的な性格、自分でもこう思っている自分というものがありますが、それとは違う、様々な性格の自分も隠れていると言われます。そういったものが、カード(の人格化)で表せられるのです。

このニュアンスで自己リーディングを実施する場合、言わば、別の自分との会話・相談をしているようなものになり、自分の分身たちが合議し、ある答えを出すかのようにリーディングが行われるのです。

ところで生成AIのチャットGPTが少し前より話題になっていますが、その使い方において、チャットGPTに、「あなたは、〇〇の専門家です」と指定すると、それらしい雰囲気とか内容で答えてきます。

それと似たような感じで、例えば「隠者」のカードを専門家の人格のように設定すると、そのようなアドバイスが「隠者」より、もたらされることがあります。

タロットカードも、設定とか扱いによって、使い勝手が大きく変わることが長年やっているとわかります。

カードを人格化して使う方法は、いろいろと便利なもので、自分自身にも、他人に対しても有用なものになります。

もしカードを人間のように見ることに違和感があり、ばかばかしいと思う人は、タロットを真に扱うことは無理でしょう。「運命の輪」で言えば、向かって左側の動物、アーリマンに毒された人と言えるからです。

また、かと言って、人間のように見過ぎてしまうのも問題で、これは「運命の輪」の右側の動物、ルシファーに毒された状態になります。

そういったバランスを取るのも、マルセイユタロットのいいところなのです。

とりあえず、もしマルセイユタロットを持っている方ならば(それ以外のタロットでも行けますが)、一枚引いてみて、そのカードを人物化(人格化)し、その者が語ることを想像して、何かメッセージとか示唆をもらってみるとよいでしょう。

その意味では、リビジョンタロット的な方法と言えます。


マルセイユタロットの簡単なシンボル活用

マルセイユタロットの使い道は様々にあります。

一般的には、タロットは占いの道具だと思われていて、実際に、たぶん今でも一番使われているのは、占いでの場面でしょう。

しかし、だいぶんそれ以外の活用法も広まりつつあり、私に限らず、たくさんの人が、タロットの、占いではない使い方の啓蒙をされている効果が出てきているように思います。

さて、そうした占いではない使い方の中で、とても簡単ですが、意外にも神秘的な側面もあるものをご紹介いたします。

それは、マルセイユタロットをシンボルとして活用するというものです。

タロットは象徴ツールですので、象徴=シンボルと解釈すれば、今さらながらの話で、タロットはいつでもシンボルとして活用されていると言えなくもないのですが、ここでいうシンボルとは、イコール象徴というのとは少しニュアンスが違います。

皆さんも何となく感じてはいるかもしれませんが、象徴という言葉とシンボルという言葉とでは、微妙に何か異なる気がすると思います。

それは翻訳とか言語学的な見地で言っているのではなく、まさに生で使う言葉の感覚としてのものです。

“シンボル”と私たちが言う時、それはサイン・記号のようなものも含まれているように感じますし、シンボルという言葉自体、何か呪文を唱えているような趣きもあります。メルヘン的に言えば、魔法的な効果とでも言いましょうか。

このようなシンボル的感覚をもとに、マルセイユタロットの、特に大アルカナカードを何かのシンボルとして使う(無意識のシンボル化)という方法があります。

やり方は簡単です。

●マルセイユタロットの大アルカナカード一枚を、常に目につくところに置いておく。

これだけです。

願望実現とか、何か特定の成し遂げたい希望を叶えたいという時に使うシンボル的な方法もあるのですが、今回のは、そうしたものではなく、ただ気になるカードをシンボルとして置いておくという単純な方法です。

気になるカードが特にない場合、あるいは迷う場合は、シャッフルして選ぶという方法でもよいです。

シンボルは、本当は「象徴」ですから、何かしらの意味をカードにシンボライズするわけですが、今紹介しているのは逆の方法で、カードによって、自分の中の何かがシンボライズされていくというものになります。

仮に目標達成ということがテーマだったとしても、目標をカードに託す(表す)という方向性とは逆で、自分の中からカードによって目標が生まれて来るというような感じになります。

カードを飾っておく期間は個人それぞれで違いますので、長い人もいれば短い人もいます。

最初は何も起こらないでしょうが、いずれ、何らかの気づきとか変化が現れます。

しかしそれでも、その内容がカードからもたらされたとは気づきにくいものかもしれません。

また、人によっては些細なことのケースもありますし、反対に大きな変化ということもあるでしょう。精神への影響もあれば、現実に目に見える形で変わってくるという場合もあります。

まあ、たいていは気づきにくいようなことが多いです。

それでも、ふとした時に、「そうか、このカード(置いていたカード)と関係していたのか」と悟る瞬間がやってきます。

一言で言えば、マルセイユタロットの「女帝」のようなもので、自らの中から創造されてくるわけです。

そのカードと関係した内なる創造が、カードでシンボライズされることによって起きるのです。

何が出るのかはお楽しみというところでしょうか。(笑)

興味のある人は簡単ですので、やってみてください。


マルセイユタロット、感情とフォース

マルセイユタロットの絵柄は、ほかのタロットと異なり、比較的シンプルと言えます。

ですからあまり芸術性もなく、絵の不思議さや美しさにひかれるという人は少ないでしょう。

ですが、これもあえてそうしていると考えられるところがあります。それは、シンプルなゆえに、普遍性が高まっていることがあげられます。

言い換えれば、マルセイユタロットを見る誰もが、カードそれぞれに同じようなもの感じたり、とらえたりする可能性が高いのです。

ユング的に言えば、人間の(思う)元型がマルセイユタロットにはあるということです。

そういう意味からも、心理的にマルセイユタロットは活用できます。特に、自他の感情や、自分でも気が付かない潜在的な意識について、タロットを使って浮上させることができます。

感情的なもの、潜在的な意識というのは、なかなか普段自分でもわからないものです。それは目に見えない領域だからで、言語化するのにもぴったりするものがなく、なかなか困難です。

マルセイユタロットの「月」が示すように、感情は人にとって意外に大きな影響を及ぼしています。

もちろん、気持ちですから、コロコロとその都度変わっているわけですが、おそらく強い感情や、長く同じ気持ちになっている時は、心の中にデータのように刻み込まれてしまうものと考えられます。

この点も、まさにマルセイユタロット「月」のカードの、水たまりとザリガニに象徴されているかもしれません。

これが「力」のカードで表現されている、その名の通りの「フォース」(フォルス)というものに影響を与え、フォースが現実を作り出す要因(材料のようなもの)となって、私たちの前に(自分の世界として)現実化します。(ただし、あくまで自分のフォースの範囲でということで、自分が創り出す自分の世界という感じとなります)

感情や心が、行動などに実際に影響することは心理(学)的に言われていることですが、マルセイユタロット的には、そこにフォースが介在していることが重要だと、個人的には考えています。

いずれにしろ、フォースに影響する感情のデータは、悪い(影響の)ものになっているのなら、何らかに変質させる必要が出できます。

まず大事なのは、潜在化したものを顕在化することです。要は、自分の隠された気持ちとか感情を発見する、自覚するということですね。

これには、言語というものを利用することができます。言葉は思考と結びついており、タロット的に言えば、感情としての「水」のとらえどころのない世界を、「風」による思考で浮上させるような働きになります。

例えば、もやもやした気持ちを言葉に表してみることで、「自分はこう(こういう気持ち)だったんだ」と囚われの感情の気づくことができるわけです。

それが先述しように、普通、なかなかぴったりな言葉にすることは難しいのです。

しかし、マルセイユタロットのカードの絵柄を使うことで、次第に感情が浮かび上がり、覚えたカードの象徴の意味とともに言葉も当てはまってくるようになります。(もしくはタロットリーダーが、クライアントにふさわしい気持ちの言葉を、その出たタロットから導き出してくれます)

これは、マルセイユタロットとの、特に大アルカナが人の意識のパターンを表していると考えられるからで、最初に述べたように、誰にも当てはまる感じ方のような型がそれぞれのカードにあるため、その元型を汲み取れば、その人の感じている、あるいは潜在している感情というものを指摘することが可能だからです。

そうして、自分の潜在的、またはフォースに強く影響を及ぼしている感情に気づけば、それだけで解放につながり、フォースの正常化の可能性も出ます。

西洋でも、悪魔の名前を指摘することができると、その悪魔は立ち去るという話があります。これは言わば、(自分を苦しめている)感情を言葉にして、こちらがコントロールできるようにするような例えとも言えます。

こうして、悪魔となっている感情を、天使や神に換える(聖なる浄化を行う)わけです。

この時、しかもマルセイユタロットでは、絵柄的に実際に天使や、神に関係するカードが存在しますから、絵の力とイメージによる変換も可能です。

ビジョン・イメージも、言ってみれば見える世界と見えない世界をつなげるものであり、気持ちや感情を変化させるのに有効なものです。

それから、フォースの意味で重要なのは「状態」です。これが言葉とリンクしていくとさらに効果的なものになります。

例えば、言葉と真反対の状態にある時、人は矛盾を感じて、その言葉の内容を実現することが難しくなるでしょう。

経済的にとても不安があるのに、「私は裕福だ」と宣言するようなものです。また、「ありがとう」と何回言っても、実際に「感謝する」という気持ちの状態になっていないと、その効力は薄いと言えましょう。(まあ、言霊として、言葉の力もあるにはありますが)

従って、フォースを正しく機能させるには、やはり(自分に正直な)感情・気持ちが大切と言えます。感情が望む状態になるよう、感情自体を浄化したり、整理したり、希望の方向の気持へ転じていく手段を講じたりする必要があるというわけです。

それに、マルセイユタロットのカードたちが使えるということです。

マルセイユタロットの「力」のカードが表す「フォース」を、どう感情と切り離したり、融合させたりするのかが、自分を生きやすくするための鍵と言えるかもしれません。

「フォース」の扱いについては、これもまた小アルカナ的な4つの視点があるのですが、それはまたいずれお話できればと思います。

ともかくも、お勧めは、まず大アルカナを使って、自分の気持ちを確認すること、それを言語化することを述べておきます。


タロット、一枚引きあれこれ

タロットを習いますと、一枚引きという技法が伝えられることは多いかと思います。

一枚引きとは、そのままの意味で、一枚カードを引いてリーディングしたり、メッセージを受け取ったりする方法です。

たった一枚なので、情報量としては最少ですから、意外と解釈は難しいです。

むしろ、カードがたくさん出るほうが、いろいろとシンクロも傾向も判断できるので、普通に他人にリーディングする場合は、カードは三枚以上は出したほうが読みやすいでしょう。

ということで、一枚引きというのは、実は自分用に使うほうがいいと言えます。

自分用に活用とした場合、それでも様々な目的に分けられるのですが、一枚引きの場合、大雑把に言えば、リーディングの訓練と、自分向けのメッセージ・示唆として行う目的とのふたつがあげられるでしょう。

まず、リーディングの訓練ですが、これは私の初級的な講義でも述べていることですが、初心者がタロットになじむために行うものと、リーディングを向上させるたの技術的トレーニングとして行うものとの区別が必要です。

一枚引きだから読むのは簡単なだろうと思われがちですが、先述したようにたった一枚なので情報が少なく、それだけに解釈に迷うこともよくあります。

タロットリーディングの学習にと、一枚引きから始めたり、指導されたりすることは普通ですが、初心者がいきなり一枚を読もうと頑張っても苦労します。

それよりも、初心者が一枚引きでまず行うことは、タロットそのものに慣れること(慣れるために引くこと)です。

タロットというものを味わい、カードの手ざわりを感じ、表返した時に感じる印象、雰囲気などもつかむようにします。

小アルカナで言えば、玉(コイン)→杖(ワンド)→杯(カップ)という流れです。そのうえで、最後に意味や内容を解釈する、いわば「剣」(ソード)」の段階に移行させます。

一般的にこの逆の順になることが多く、初めから知性・言葉・意味・論理で解釈しよう、当てはめようと一枚引きを行うと、余計、わけがわからなくなるおそれがあります。

現代人は「剣」の分野から始めることに慣れており、いわゆる頭(暗記や思考)から入る学びが中心になっています。

それも悪くはありませんし、学習の王道でもありますが、こと、タロットに関する場合は、小アルカナの4組で例えられる、ほかの「剣」以外の分野によってタロットを知ることも重要なのです。

それはタロットが精神や霊的な向上・探求のツールでもあるからで、言ってみれば、生物的な、いやもっと言えば人間的な扱いによる理解も必要だからです。理解というより、交流というのに近いでしょうか。

人を理解・信頼するのでも、理屈や損得ばかりでは相手に嫌われますし、本当の理解・信頼にはつながらないものです。

「同じ釜の飯を食う」という表現もあるように、体感であったり、手にして一緒に過ごす感覚だったりで、タロットと自分とが結びついて来て、それが読みのセンスにも活かされてくるのです。

ということで、タロット学習初心者は、一枚引きにおいても、その引いた一枚をむやみに意味的に解釈しようとず、手に触ったり、絵柄の雰囲気を感じたり、シャッフルして楽しんだりするなどてして、タロットと交流することを、まずはしてみたほうがよいでしょう。

そうしてだいぶん慣れてきた、タロットと親しくなってきたと感じた時、いよいよ意味的な解釈に移りましょう。

そうすると、覚えたカードの意味とはまた違ったものも出て来るはずです。でもそれが、タロットからのあなたへのメッセージということも多々あるのです。これは、タロットの絵の象徴の働きでもあります。

ところで、一枚引きのリーディングの訓練の方法にはいろいろとあります。

ポピュラーなものでは、何かテーマとか問いを決めて行う方法がありますが、問いを何も決めずに引くやり方もあります。

どちらにしても訓練としての良し悪しがあるので、どちらかだけに偏らず、両方行ってみるとよいでしょう。

また異色なものでは、天気予報を一枚引きでするという方法があります。

これが結構曲者で、頭で意味を解釈する傾向にある人は、なかなか天気を読むことは難しいでしょう。(笑)

この訓練は、まさにタロットというものは絵が中心であり、文字的な言葉てはないことをわからせてくれます。

それからよくあるのが、「今日一日のテーマ」として引くというものです。

漠然とした「一日のテーマ」とするのもよいのですが、もっと絞って、「今日仕事で気をつけることは何か?」とか、「今日の楽しみ(と思ったほうがよいこと)は何か?」「今日はどんなことを課題にして過ごせばよいか?」のような感じにして、タロットを引いてみるのもありでしょう。

学習の初級においては、タロットへの質問は具体的にしたほうが答えも探しやすく、そのまま回答も具体的になりやすい傾向があります。(中・上級になってくれば、むしろ質問・問い自体にあまり意味を持たなくなってきますが)

とは言え、一日の始まりは何かと忙しい人がほとんどでしょうから、逆に一日が終わる夜に、落ち着いた時を選んで引いてみるとよいでしょう。

その場合は、「今日はどんな一日だったと認識すべきか?」とか、「私にとって振り返るとよいものは何か?」とか、別に明日への問いでもよいので、明日に対する何かを問いにして、タロットで引いても面白いでしょう。

大事なのは、しばらく同じようなテーマとか問い、あるいは行為で継続することです。

続けて行くうちに、いろいろなことを発見し、タロットとあなたのつながりもますます深まり、最終的には、カードを引く前に、すでにカードからメッセージを受け取っているような感覚まで出てきます。(人によりますが)

ほかに、トレーニング的には、大アルカナ一枚を引いて、その後小アルカナの4組と併用させ、それぞれ剣・杯・杖・玉の分野からその一枚(大アルカナ)を解釈するという方法も、小アルカナの訓練にもなってよいです。

特にこれは数カードが記号的な絵柄になっているマルセイユタロットにおいては、有用な訓練になります。

占いとして、一枚引きを行う場合、結局、その一枚が当たるかどうかという観点になりがちなので、一枚引きは占い目的でやらないほうがいいかもしれません。

吉凶占いで一枚引きを行うには、カードそれぞれに吉凶を決めて行くほうがやりやすいので、やっていくうちに、カードに吉凶ランクをつけてしまう癖がどうしてもつき、せっかく象徴としてのタロットの使い方があるのに、それがおみしくじ的なものになって、もったいないことになります。

ですが、人間の感情として、吉凶というのは怖いですが面白くもあるので(苦笑)、エンターテイメント、あるいは占い師になりたい人が修行として行う場合はありでしょう。個人的にはお勧めしませんが。

この場合も一枚引きトレーニングを重ねることで、タロットと事象の吉凶が結びつき、当てやすくなる可能性が高まると思います。

ただ、その吉凶解釈は、万人に当てはまるというより、そのタロットと関係のある(結びつきが強まった)あなた自身の価値観による解釈が中心となります。この辺りは難しい問題なので、またいずれブログ記事で書くかもしれません。

以上、一枚引きについて、ほんの一部ですが、特にこれからタロット学習を始めたい方向けに書いてみました。


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