得意不得意
人にはそれぞれ得意分野というものが必ずあります。反対に「これはちょっと苦手だ」と思う部分もありますよね。いわゆる“得意不得意”というやつです。
タロットをしていますと、そのことがよくわかります。例えば、同じカモワンタロットを習い、プロとしてリーディングをされている方は多いですが、それぞれ読み方や得意な分野が異なるのです。ある人は対面においてまさにセッションというか、相談者とのやり取りの中からメッセージが浮かんでくるという方もありますし、またある人は、いきなり「霊感」のようなインスピレーションがもたらされるという方もいます。そうかと思えば、対面しての言葉での形よりも、カード展開をじっくり検討して、書面のような形で相手にアドバイスを伝える方が、カードを読み取る能力を最高に発揮できるという人もいます。
リーディングの形式だけではなく、そのジャンルにも得意不得意は存在します。ビジネス方面が得意であったり、恋愛関係が得意であったり、人間関係の中でも親子問題や家族関係に冴えを見せるという人がいたりします。それはもちろん、自分が経験してきたことがその分野に多く関わってきたきたからだともいえますが、逆に考えますと、人生における経験・テーマということにおいて、その人は特にその事柄について学んできた、あるいは学ぶべきことがあったともいえ、だからこそ相談者・クライアントも自分と同じような問題を持つ人が訪れたりするのだと推測できます。
要するに、得意分野というものは、タロットのリーディングということに限らず、人にとって普通に思われている以上に深い意味があるかもしれないということなのです。得意であるからこそ、馴染みやすく、学んだり、深化させることも容易であり、さらにその部分をアピールしたり、その事柄を伝えることができるのです。いわば、自分がどのような形で人や社会に貢献できるかの、役割の大きなヒントでもあると換言できるでしょう。誰しもすばらしい能力は有しており、その中でも一段と輝きを増す力が、得意なものということではないでしょうか。ですから、苦手なことを平均化していくという努力も当然有意義なことですが、むしろそれよりも、得意なことをもっと伸ばしていく、つきつめていく方がより自己の実現にかなうのではないかと考えられます。
得意なことがわからない・・・という人もいると思います。その場合、身近な人や友人に、自分の特徴を聞いてみることから始めてみましょう。自分がどんな時に生き生きしているのか、楽しそうなのか、そういったことから尋ねてみるのです。また、自分でも調べることができます。例えば、人にモノを伝える時、「話す」ことが好きなのか、「書く」または「描く」ことのほうがやりやすいのかという点でも判断できますし、同じ言葉を使うにしても、関西人には多い(笑)のですが、「ドバッー」などの擬音で表現したり、姿や形を示して伝えたり、論理的なとにかく理詰めで示していく方法をとったりなど、そこに違いがあり、そのことからも得意な方向性というものを見いだすことも可能です。ほかにも、人間のポジション的なタイプ別からチェックすることもできます。自分が人との仲立ちを得意とするのか、自分自身をアピールするのがうまいのか、単独の行動だけれども自分のことではなく、人のことを話すのが好きなのか、あるいは大勢の中での共同作業・調整において能力を発揮するタイプなのかなどです。
タロットに戻りますが、カモワンタロットリーダーの中でも、どんな場合においても完全な人を感動させるリーディングができればと理想的には思います。しかし、人には自分に合った伝え方、読み方というものがあり、それが占いという形式でのセッションの場合もあれば、ヒーリングの一環で最もタロットのメッセージを伝えられるという人もいるでしょう。もっと考え方を拡げれば、人様に直接リーディングして差し上げるよりも、タロットの話を面白く魅力的に語ることにより、結果的にその話をしてもらった人が、タロットに関心が行って、タロットについて学び、リーディングされた以上の事柄を後日得ることになったとしたら、それはそれでまた、得意分野によるタロットの効果ともいえるものだと思います。
カモワン版マルセイユタロットは古代から連綿と続く智慧の集積庫・書物であるとするのなら、結局のところ、その無尽蔵のデータベースからアウトプットする方法も実は様々にあり、通路は象徴体系としての無意識層の部分からであるにしても、その引き出され方は、その人個人の人間の積み重ねと発現方法の得意な分野からということがいえるのかもしれません。
皆さま、苦手な部分にフォーカスするのはほどぼとにして、得意部分に光を当て、伸ばしていく努力をいたしましょう。