違った光の当て方

タロットカードの中には、12の吊るしというカードがあります。これは一見、木に吊されているような人物が描かれているのですが、実のところ、逆さまになりながら世の中を観察している姿をとっているのです。このように、普段とは別の観点を持ちますと、見え方がずいぶんと異なってくるものです。別の視点といえば、また旅シリーズになりますが、


「街の照明」というものに思いが行きます。私がカモワンタロットの上級コース参加のためにヨーロッパを訪問したのも、これくらいの時期からだったので、ふと思ったわけなのですが、ヨーロッパの町並みの照明というものは、ずいぶん日本とは異なるものです。いや、街の照明だけではなく、家の中の照明も違っているように感じました。
日本では特に都会の街中が顕著ですが、街頭やら看板やらネオンサインやらがごちゃ混ぜになって、大変明るくも無秩序といえます。いや、はっきり言って無茶苦茶です。「ただ照らせばよい」という雰囲気さえ漂ってきます。家の中はどうでしょう。私の家もそうですが、ほとんどの家庭は蛍光灯が天井について、真下へ照らしているという感じでしょう。もちろん照明器具の大小とか、色や形の違いはあるでしょうけれども、器具の取り付け位置や照らし方はほぼ共通しているといえます。
一方ヨーロッパでは、まず街の照明が、建物に対して下から上へと低い位置から照らしています。これが、石造りの多い建造物とあいまって、非常に幻想的かつ優美な印象を与えます。また屋内でも、天井の高い造りのために、天井に照明をとりつける(おそらく設置が大変)というより、やはり下から上に向けて照らすという傾向があるように見受けられます。日本でもかがり火とかありますよね。例えば薪能という屋外での能で焚かれる薪の灯りは、舞台に幽玄な雰囲気を装わせます。このようにヨーロッパの照明は全体的にボゥとした感じで、明暗がはっきりしていません。また白色が少ないように思います。日本でも電気の照明になる前はろうそくの火が中心だったでしょうから、夜になると闇とともに不思議な光り方をしていたことだと想像できます。(でもほんと、昔は夜は真っ暗で怖かったでしょうね。きっと夜目も今の人より数段利いていたと思えます。。。)
日本は効率や効果をまず優先して闇雲に町作りをしてしまったために、とにかく町並みが乱雑です。統一感がないのです。また、もともと日本の多湿の気候性などから木と紙で家造りをしてきた伝統で、長く家が残せない、さらに太平洋戦争で不幸にも古い町並みはほとんど燃えて破壊しつくされてしまったこともあるでしょう。石造りではないから天井が低くてもよく、照明も天井に取り付けられていったのも納得がいきます。おかげで日本の家は夜でもとても明るいです。町も明るさという点では、安心して歩ける所が多いですよね。フランスでのタロットの授業では、元教会であったホテルで行われましたから、夜は照明が暗くて文字が見えにくい有様でしたし、街は少し路地に入れば、たちまち真っ暗に近くなり、よそ者にはちょっと危険です。しかしながら、やはり照明から来る雰囲気・美しさというところでは、平均の日本の町並みより美しいと言わざるを得ませんでした。おそらく日本でも京都や各地方の伝統的な町並みが残っているところで、照明の当て方を工夫すれば、ヨーロッパ以上の美しさも醸し出されることと思います。
ここが大事ですが、ヨーロッパの町と日本の町では洋の東西という地域的な決定的異相が存在しますが、ともに伝統的な町並みがあって統一感がとれていれば、本質的な美という観点からは、同じだと考えられるのです。ですから照明方法もヨーロッパから参考になることがあるのではと提案できます。同じ美の本質(あるいはそれ以上)を有しながら、無頓着なためにせっかくの素材を活かしていない場所が、日本には少なくないように思います。
照明の仕方ひとつとっても、普段とは違った見方と形を現象させます。逆さになっている12の吊るしのカードを見ながら、そんなことを考え、またヨーロッパに行きたいなあ・・・と思いを馳せるのでありました。ま、とりあえずたまには蛍光灯を消して、ろうそくの光で過ごして雰囲気だけでも味わいましょうか。一歩間違えれば、めっちゃ怪しくなってしまいますが。。。(笑)

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