動的展開法から
カモワン版マルセイユ・タロット(以下、カモワンタロット)のリーディングは、カード同士の関係性を大切にして読みます。特に動的展開法と呼ばれる、カードに描かれている人物の視線を追ってカードを展開していく独特の展開方式は、まるで目の前に自分のドラマが現出したかのような錯覚を起こすことさえあります。
しかし、逆に言えば、カード一枚一枚やカードの置かれた位置の意味がやや弱まる傾向にあるため、確固とした断定的、予測的な読みが難しい場合も出ます。右か左か、白か黒かというようなはっきりとした答えがほしい場合には、どちらともとれるというような形になり、迷いをなくすために占ったのに、ますますわからなくなってしまう・・・ということも時には生じます。
これでは「占い」には使えないのではないか・・・と危惧される方もおられるでしょうが、それはある面、その通りともいえます。「占い」に期待されることが、「当たる」ということと「明確な方向性を言ってもらう」ということに大きなウェートを占めるのですから、一般的なイメージの「占い」には向かないというのは妥当かもしれません。
ではカモワンタロットはどのような形で使うのかといえば、例えば同じ「占い」の場面で何かの方向性を示してもらいたいというような場合だとしても、ただ単に「こちらがいいですよ」と占い師(タロットリーダー)側が言い当てるのではなく、出たカードの絵柄と展開から相談者自身が客観的に自分を確認し、占い師とともに「なるほど。こういうことが問題で、だからこうすれば解決の方向に持って行けるのか」と納得して帰ってもらうう、というものになります。
つまり、相談者の知りたい「方向性」を、占い師の占術による判断によって告げてもらう形をとるか、相談者自身で気づきとして得てもらうのかの違いだといえ、後者がカモワンタロットの占い方となるのです。
(これは理想的な形でのことを言っておりますので、必ずしも当てはまるわけではなく、カモワンタロットにおいても占い師の判断が強く出る場合もありますし、反対に他の占い方でも、占いの過程から相談者自身の確信によって方向性が決まることもあります。ここでは大まかな傾向の違いを述べているにすぎません)
と、ここまではカモワンタロットに興味のある方ならば、きっと一度は聞いていることだと思います。ここではさらに、一歩踏み込んで、カモワンタロットの動的展開法の別の良さを付け加えておきます。
それは「関係、リレーションシップというものを意識するようになる」ということです。考えてみればわかりますが、人間一人では生きていません。家族、地域社会、職場、グループ、国、世界・・・様々なところに人は所属し、様々な人やモノとの関連をもちながら生きています。この「関係性」「関連性」というものは、普段あまり人は意識しないものです。しかし特定の問題が起こった時に、否応なく人はその「関連」というものに向き合わされます。自分自身の内的な世界も含めて、何か自分と他の関連性においてのバランスが崩れた時、それが問題となって現実に現れます。そのことをイメージ的にとらえたのが、展開されて出た動的展開法によるカード群なのです。その時人は、自分を取り巻くいろいろな「関連」「関係」を、カードによってはっきりと認識することができます(タロットリーダーのサポートは必要ですが)。何がどう関わって、どのように問題となっているのか。これが確認できるということは、よいバランスの方向に戻すチャンスや理由も見つかりやすくなります。
それゆえ、カモワンタロットでいうところの「タロットマンダラ」の到達点には、内外の関連性の調和と完成を示す「世界」のカードが位置していると解釈できるのです。