「月」のカードの考察 読み方の一例。

タロット講座やリーディングの勉強会をしていますと(カモワン版マルセイユタロットの場合です)、読みにくさで筆頭にあげられるカードがあります。


それが「月」のカードです。


カモワン流では、カードが正立で現れた場合、どんなカードでもポジティブな解釈でリーディングすることが求められます。


そして解決カードというスプレッド(展開法)上の規則もあり、その解決カードで登場したカードも積極的な意味で読む必要があります。


ところが、「月」のカードはそのトーンの薄暗い色調や、二匹の犬が月に向かってほえあっているという、なにやら対立的な図柄からも、いい意味で読みにくいのです。


そこで皆さんは「月」のカードに困惑してしまうことになるのです。


「月」は実に深いカードなのですが(ほかのカードももちろん深いです)、ひとつ「心理」や「感情」をテーマにして読んでいくとわかりやすくなってきます。


ただ「感情」というものはとらえにくいものです。だからそうは言っても余計に難しく感じられるでしょう。


ここで図柄にある二匹の犬に注目します。二匹が向かい合っているのですから、自分と相手がいる(または自分の中でも二人いる、二つある)ということです。


ここに先ほどの「感情」というテーマを当てはめると、「自分と相手の感情に着目する」という意味が出てきます。


犬がほえあっているのですから、主張を言い合うという解釈もできるかもしれませんが、カギは「感情」や「気持ち」です。


「ほえあう」つまり言い合う、伝え合うにしても、自分や相手の気持ちを配慮することが求められるのです。


まずは自分の気持ちを相手に伝える、同時に相手からも気持ちを伝えてもらうことです。


そこには意見の食い違いや、思ってもみなかたことで自分の感情が揺さぶられる(対立や反感も含めて)ことが生じるかもしれません。


それでもお互いの気持ちを吐露しあうのです。相手の言葉から複雑な心境にはなっても、相手がなぜそのようなことを述べるのか、そんな気持ちでいたのかを「感じる」ことを「月」のカードは示唆しています。


つまり相手の中に、自分の気付いていなかったものををお互いが見ていくということになります。


感情や気持ちを押し殺して過ごしていても解決にはならないことが多いものです。


そのため「月」のカードが出ると、ずっと心の底に貯めていたこと、あるいは普段感じていて言えずにいたこととを相手に話す(話すことだけではありませんが)ということを示していると言ってもいいでしょう。


月は太陽の光を受けて輝くものであり、光を受けるという受容性があります。また何かを鏡のように映し出すという幻影的な作用もあります。


片方の犬が見ているものは、相手への幻想であるかもしれませんが、同時に相手の見えていなかった部分(自分の中の葛藤部分)を受け入れていくということでもあります。


結局は相手の中に自分を見るということにつながります。


もう一度読み方に戻りますが、このカードが出ると、感情をキーに、ふたつの対象があることを思うことです。自分だけなら自分の中のふたつの心、相手がいるなら、相手と自分の心や感情に注目します。


次に抑圧しているもの、葛藤があるのなら、それを対話(自分ならふたつの心、相手がいるなら相手と自分)させることです。


この時、論理的な主義主張ではなく、気持ちや感情の部分に注視することが重要です。


さらに、ふたつを統合する前の分離状態をよく観察して見ることで、その両者を受け入れる素地ができます。表裏一体に思いを馳せるのです。


つまり新しい次元への移行や発想ができる前の分析と、受け入れ時期と行動が示されていると解釈します。


このことは、カードのローマ数字を見てみるとよくわかります。


月のカードの数はⅩⅧ(18)であり、ローマ数字はⅩ(10)とⅤ(5)とⅢ(3)に分かれます。


Ⅹ(10)は「運命の輪」であり、運命の転回やある段階での統合を示します。それにはⅤ(5)としての「法皇」、伝えること(話すこと)が求められ、そのことでⅢ「女帝」(3)という新しいアイデアや発想につながっていくことを表しています。


こういった「月」における一連の過程を理解しておくことで、実際の場面で「月」が出てきた時にどうリーディングしていけばよいのかの判断がつきやすくなるでしょう。


そうすれば、「今、気持ちを話すことをすればいいのか」「話すより先に見つめる感情があるのか」、はたまた「気持ちを話すにしても、どう話せばよいのか」なども、ケースによってどれが適当かということを読み解くことができるはずです。


その結果、「吊るし」と同様に、じっくり観察すること、不透明なものがはっきりするまでそのままにしておくことがいいという場合もあれば、「恋人」のようにコミュニケーションしてよく話し合うことがいいと能動的に解釈されることもあります。


しかしながら、その根本には「感情」「気持ち」ということものがあることを、「月」の場合には見ていく必要があるでしょう。


「月」にはもうひとつ、ザリガニという甲殻類が登場しているのも特徴なのですが、これを含んでの考察はまた別の機会に譲りたいと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Top