「月」のカード、理解の段階

マルセイユタロットの大アルカナの中でも、最も読みづらいカードと言われている「」が本日のテーマです。

確かに、読みづらいと言われるだけあり、一筋縄ではいかないのが「月」のカードです。

それは、ほかのカード(大アルカナ)のほとんどが人物、あるいはモノが、メイン・中心となった構図となっているのに対し、「月」はどれかメインであるのか、よくわからない図像になっていることが一番大きいのかもしれません。

「月」一枚の図像をよく見ると、カードの名前の由来である上部の月の部分、真ん中あたりの二匹の犬のような動物の部分、しかもここには背景にふたつの建物のようなものも見え、さらに下部には水たまりがあり、そこにはザリガニのような水生動物とおぼしき存在もうっすらと描かれています。(版によっては、はっきりザリガニが描かれているものもあります)

そして、上部・中部・下部と、どれも描かれているものが結構大きな存在なので、メインがどれであるのか判断しかねます。

さらには、全体的にもトーンがブルーと言いますか、暗い色調であり、霧がかかったような感じ、ボゥーとした感じに見えなくもなく、それが不明慮な印象を増加させているとも言えます。

要するに、見た目からしてわかりづらいというのが「月」です。

しかし、マルセイユタロットには意図が隠されており、どのカードも無造作・無意味に描かれているわけではありません。

となると、わざと、わかりづらい、あやふやな感じの図像にしているのだと見ることができます。

さきほど、出た上・中・下の三部の均等性(メイン図像が何かわかりづらくなっている構図)も、意図的にそうしているのであり、わかりづらいもの三つが並び立っているそのことに自体に意味があるのだと考えられます。

下から見ても、水、植物、動物、土、人工物、水滴、天(宇宙)・・・と構成が変わってきているのが、実は明瞭にわかるようになっています。このことは「月」のカードを理解するうえでは、なかなか貴重な情報です。

私自身、マルセイユタロットと長いこと関わってきて、この「月」のカードとも向き合ってきたわけですが、だいたい、次のような状態で、「月」のカードの理解と言いますか、自分の中への浸透が進むように感じています。

●最初の段階

よくわからない、わけがわからない、神秘的、不安な感じ、複雑な感じに見える(意味不明のように感じる)印象的段階

 

●第一段階

「月」のカードに描かれている細かな象徴の意味を教えられて、「月」のカード全体の意味を考える知識的段階

そのほとんどは心理的・感情的なカードとして見たり、読んだりすることになる

感情の対立や葛藤の意味を見ることがメイン⇒個人的な内面に向かう

女性・母性・母の元型像としての理解

 

●第二段階

個人の内面、感情的なもの、特にその対立や葛藤を「月」によって浮上させる段階から、次第に集合的なもの、全体的なものへと「月」の対象が変換していく段階 内的段階のさらなる拡大

個人カルマから人類全体カルマのようなものへの象徴性・問題性に向かう

人類としての成長・発展と、そのブロックの鍵を見ようとする視点や方向性

「月」を霊的に考えようとする段階

 

●第三段階

さらに「月」への俯瞰性、全体性テーマが進み、人類全体はもとより、宇宙の流れ、生命の改変そのもののテーマとして「月」が見えてくる段階

この頃になると、「月」のカードが多様で各層に適用され、「愚者」にも似たカードとなって現れ(「愚者」とのセットであることもわかってくる)、あらゆる層に鏡のように「月」の問題性が、レベル別に入り込んで来ているのに気付き始める

第一段階、第二段階、第三段階の過程が必然であり、「月」は私たちを本当に成長させるための悪と正義の両方を持つ象徴体・殻(から)の大元であることも見えてくる

いわば、霊的に拡大した見方になる段階

 

こんな感じでしょうか。

もちろんまだこの先があると思いますし、あくまでこれは私の見てきた・感じてきた「月」理解の流れです。

実際的には、特にリーディングに使うタロットとしては、第二段階が重要で、この使い方とか考え方をしていると、「月」はわかりやすいかと思います。

ただ「月」のカードの特性としては、単体としてより、他のカードと組み合させることで、より力を発揮したり、意味が強調されたりする気がします。

天体の月が、太陽の光を受けて輝くものであるように、ほかのカードの図像・象徴性を映し出すような感じで、「月」のカードも活用されることがあるのです。

この時、「月」の月部分にある人間的な顔の視線を考察することて、こうした使い方が活きます。それはまた、「月」と一緒に出たカードの表ではなく、裏を読めということも言えるのです。

ところで、先述した最初の段階から第一段階に進む時に、一般的な注意と言いますか、心がけてほしいのが、「月」のカードをなるべくポジティブに読んだり、解釈したりするほうがよいということです。

「月」が最初には、よくわからないカードであるだけに、ネガティブな印象が出やすく、さらに言えば人間の視点の癖として、ある対象の真ん中部分が大事だと思うところがあり、「月」だと、二匹の犬のような動物が吠え合っている部分を意味の中心に取ってしまうことがあるからです。

すると、言い合いとか争いとか、感情的対立とか葛藤というネガティブなことを、すぐに当てはめてしまうわけです。

これは「月」のカードからの出る意味としては間違いではありませんが、どうしても言葉的にネガティブなものとなります。

よって、「月」全体としても、悪いカードと決めつけるほどではないにしても、ネガティブな言葉に引っ張られ、あまりよくないカード、もやもやしたカードというニュアンスが強くなってしまうのです。

これでは、「月」の真髄に近づくことが難しくなります。(何事も、どちらかに傾く理解は、真理から遠ざかるものです)

ですから、中立的な見方ができるように、逆に「月」からポジティブな意味や、よい意味で状況を変えていくための方法などを、「月」カードから見出す努力をしてみることです。

そうやっているうちに、最初の段階を自然に超えていくようになるでしょう。

「月」から何とか意味を出そうとしたり、何かに当てはめたりしようとするのではなく(「月」の意味をはっきりさせようとする態度ではなく)、「月」のカードそのものを受け入れるようなことが、本当の「月」の理解につながると私は思います。

それは実は、ほかのカードに対してもそうなのです。

タロットとあなたとのつながりを、もっとつけてみると、タロットは自ずと心を開き、今のあなたに必要なものを示してくれるでしょう。

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